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修練と改良
第22話 陶器
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十日がすぎ、だんだん汗ばんだ陽気が続く。レッド少年に降下したときは春だったようだ。こちらの気候も穏やかながらも春夏秋冬があるとのことだ。魔力枯渇、魔力制御もコツコツと実施し、火、土の属性魔法の訓練は続いていた。
まずは火魔法だ、とパラケル爺さんの話がある。
「何もない場所からの発火ができるかどうか分岐点だ。火は種火からの延焼の継続から入る。次は火打石からの燃焼の継続だ。何もない場所からの発火と徐々に制御を強くしていくのだ」
圧縮した微小な空気を摩擦させるイメージでも発火自体はできる。風魔法の支援があるなら、物を燃やすことはさほど難しいことではなかった。火魔法は熱を生み出すことと制御する魔法らしい。圧縮させて発火することは風魔法の分類だ。こちらのイメージはざっくりしたもので理解に苦しむ。突き詰めると火魔法は、原子間の振動を制御し熱の上げ下げをするものだ。そう考えると、風魔法の支援が無くてもできるようになった。段階的に制御の範囲を見極め、数をこなす。
土の属性魔法は、初めがきつい。土といっても構成要素が多すぎるためだ。自分のやり方だと、土の構成成分を把握する必要がある。ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムが酸素と組み合わさっていた化合物の集合体と見做す。そこに植物の栄養成分の窒素、リン酸が加わる。もちろん、有機物も有るし、水分、炭素、酸素も含む。構成成分が多すぎるのだ。魔力を浸透させたのち、一つの"集団"として認識しなければ頭と魔力がもたない。それぞれの構成要素の"集団"として割り切り、ざっくりと区別する。この"集団"が集まったさらなる集合体が、ホーミィー土として名づけ、割り切る。"集団"の違いをどこまで細かく区分していくか。これが土魔法の制御と奥義となるらしい。風、火、水は微小な、ミクロな単位の制御に対し、巨大かつざっくりとした大雑把な物体の制御。これが土魔法の本質だろう。集団を細かく分ければ魔力の流れは良くなる。逆に制御は膨大となる。制御の見極めが大切のようだ。初めは一掴みの土から初めても頭が痛む。制御する魔力もゴリゴリと無くなる。慣れるまで続き、徐々に土の量を増やしていった。
自宅の庭に立ち、土の属性魔法を始める。これからは土魔法と呼ぼう。他の魔法も風・水・火魔法だ。今日は魔導具店の休みの日なので特に予定はない。週に一回、商店も農家も一斉に休む休息日が設けられている。今日は好きなことができるので、練習に充て、自宅で反復練習を始めた。
周辺の土に魔力を浸透させる。まずは皿の作成でいらない”集まり”を弾く。水と風魔法を使用し水分を与えてから、いろんな方向に圧力をかけ、捏ねていく。形を整えたあと、風魔法で水を抜きながら乾燥させる。いくつか作った皿の水分を抜き、焼成時に割れないように水分量をさらに下げる。火魔法で焼成させる。火魔法と風魔法で熱の移動と冷却を行い終了だ。この練習方法は材料が無料だ。すべての属性魔法を使用できるので練習にちょうど良い。いくつか素焼きの陶器皿や壺を作成していると観客がいることに気がついた。
「あら、レッド。いいものができてるじゃない。」
庭で練習しているので、干してあった洗濯物を母と妹が取り込みにきた。
「ジーナ母さん」
「そのまま食事に使用できるくらい綺麗だね。」
声をかけてきたのは、母親のジーナと妹のマリン。ジーナ母さんは30歳の年齢で城郭都市出身の商人の娘。母親は商人ギルドでの受付に就職していた。父親のサルタンとギルドつながりで出会い、結婚した。結婚を機にギルドを退職して、今は二人の母親をしつつ、ホーミー村のベルナル商店にて采配を振るっている。
そんな母親と妹は、商人の目になって自分が作った品物を見定め始める。妹も商人見習いとして初等教育に行きながら、店の手伝いをしていた。妹も物の良し悪しを判別する方法を、両親の指導により鍛えられている。村で食事をする容器は、木工品か金属製品を使用することが多い。素焼きとはいえ陶器は、手間がかかる分高価な分類となっていた。絵付けまで行ったものはかなりの値段になるらしい。王都からたまに流通するときもある。大商店か貴族用が確保し、早やかに売り切れてしまう。
または、セット品の一部が流れることがたまにある。欠けたセット品でも、価値は計り知れないくらいだ。それらの話は妹も自分も両親から聞いている。
「ねえ、レッド。どのくらい作れそう?釉薬と本焼きをすれば、商品として充分に成立するわ」
母の目は商人モードだ。少し圧を感じる。
「魔力次第ですが、専従でやったとして日に100枚くらいでしょうか?きめ細やかな粘土質の石とか粘土があると、もっと手間かからず品質が高くなりそうですが」
「粘土質の石?陶石ね。たしかあそこで閲覧できたわよね・・・自由に試作品ができるように手配するわ。釉薬も探します。このまま練習をお願いね。いずれお願いすることになるわ」
こうしてはいられないと、洗濯物をパパッと片付けて家の中に入っていった。これから父親と話すと思われた。
そんなあっという間に居なくなった母の様子を二人で眺めていた。しばらくすると取り残された妹は、土魔法で庭が荒れた土を使用して遊び始める。たまには付き合うのも良いか、と久しぶりに違った土いじりもよいと考え、のんびりと遊びに付き合うことにした。
妹は家からコップを持ってきて土を入れる。少し圧縮させて逆さにして柔らかくなった地面にコップの形を作る。
「これはうちね。これだと形が違うから・・・こう、こうして削っちゃおう」
木の棒にて少しずつ削って家の形としていく。なるほど、容器に入れてから、硬くしてから操作するのもよいな。
「で、こっちが、ローズちゃん家。あっちがフローラちゃん家」
近所の家も作り始める。なるほど、ホーミィー村の配置のようだ。それなら少し手伝いしてみよう。
「じゃあ、自分はパラケル爺さんの家を作ろう」
土魔法で周囲の土を集め、水分をちょい足し。店と住居部分、納屋を簡単に作ってトン、と置く。
「あ~! 魔法はずるいよ。私の出番がなくなっちゃう」
「じゃあ、家のところに土を盛るか、印をつけてよ。川とか、森とか畑とか」
「それいいかも。じゃあ、ここが村長の家で、ここが教会で・・・」
コップでドン、と妹が固まりの土を置く。素焼きと同様に少し土構成を弄ったうえで整形していく。自分が思ったとおりに作れるのは面白い。徐々に村のパーツが出来上がっていった。
「よし、これで完成だね。でも雨が降ったら流れちゃうよ? 兄ぃ、どうする?」
「それなら、さっきの陶器と同じく焼いてしまおう」
土魔法の制御の要領で、土の建物の中をくりぬき、適度な空洞を作る。地面も固め薄い土地とした。圧力を強めて土を圧縮。水分を魔法でしっかりと抜き、火魔法で焼成する。最後に風魔法で徐々に粗熱をとって完成だ。
「ふう、これで完成だね。ホーミィー村の立体地図」
「兄ぃ、すごいね・・・本当に魔力操作できてる・・・」
失敬な。これでもパラケル爺さんに教授してもらってしっかりと習っているのだよ。
次の日。庭で洗濯物を干そうと外に出てきた母親が気づき、父親を呼ぶ声が響いていた。
まずは火魔法だ、とパラケル爺さんの話がある。
「何もない場所からの発火ができるかどうか分岐点だ。火は種火からの延焼の継続から入る。次は火打石からの燃焼の継続だ。何もない場所からの発火と徐々に制御を強くしていくのだ」
圧縮した微小な空気を摩擦させるイメージでも発火自体はできる。風魔法の支援があるなら、物を燃やすことはさほど難しいことではなかった。火魔法は熱を生み出すことと制御する魔法らしい。圧縮させて発火することは風魔法の分類だ。こちらのイメージはざっくりしたもので理解に苦しむ。突き詰めると火魔法は、原子間の振動を制御し熱の上げ下げをするものだ。そう考えると、風魔法の支援が無くてもできるようになった。段階的に制御の範囲を見極め、数をこなす。
土の属性魔法は、初めがきつい。土といっても構成要素が多すぎるためだ。自分のやり方だと、土の構成成分を把握する必要がある。ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムが酸素と組み合わさっていた化合物の集合体と見做す。そこに植物の栄養成分の窒素、リン酸が加わる。もちろん、有機物も有るし、水分、炭素、酸素も含む。構成成分が多すぎるのだ。魔力を浸透させたのち、一つの"集団"として認識しなければ頭と魔力がもたない。それぞれの構成要素の"集団"として割り切り、ざっくりと区別する。この"集団"が集まったさらなる集合体が、ホーミィー土として名づけ、割り切る。"集団"の違いをどこまで細かく区分していくか。これが土魔法の制御と奥義となるらしい。風、火、水は微小な、ミクロな単位の制御に対し、巨大かつざっくりとした大雑把な物体の制御。これが土魔法の本質だろう。集団を細かく分ければ魔力の流れは良くなる。逆に制御は膨大となる。制御の見極めが大切のようだ。初めは一掴みの土から初めても頭が痛む。制御する魔力もゴリゴリと無くなる。慣れるまで続き、徐々に土の量を増やしていった。
自宅の庭に立ち、土の属性魔法を始める。これからは土魔法と呼ぼう。他の魔法も風・水・火魔法だ。今日は魔導具店の休みの日なので特に予定はない。週に一回、商店も農家も一斉に休む休息日が設けられている。今日は好きなことができるので、練習に充て、自宅で反復練習を始めた。
周辺の土に魔力を浸透させる。まずは皿の作成でいらない”集まり”を弾く。水と風魔法を使用し水分を与えてから、いろんな方向に圧力をかけ、捏ねていく。形を整えたあと、風魔法で水を抜きながら乾燥させる。いくつか作った皿の水分を抜き、焼成時に割れないように水分量をさらに下げる。火魔法で焼成させる。火魔法と風魔法で熱の移動と冷却を行い終了だ。この練習方法は材料が無料だ。すべての属性魔法を使用できるので練習にちょうど良い。いくつか素焼きの陶器皿や壺を作成していると観客がいることに気がついた。
「あら、レッド。いいものができてるじゃない。」
庭で練習しているので、干してあった洗濯物を母と妹が取り込みにきた。
「ジーナ母さん」
「そのまま食事に使用できるくらい綺麗だね。」
声をかけてきたのは、母親のジーナと妹のマリン。ジーナ母さんは30歳の年齢で城郭都市出身の商人の娘。母親は商人ギルドでの受付に就職していた。父親のサルタンとギルドつながりで出会い、結婚した。結婚を機にギルドを退職して、今は二人の母親をしつつ、ホーミー村のベルナル商店にて采配を振るっている。
そんな母親と妹は、商人の目になって自分が作った品物を見定め始める。妹も商人見習いとして初等教育に行きながら、店の手伝いをしていた。妹も物の良し悪しを判別する方法を、両親の指導により鍛えられている。村で食事をする容器は、木工品か金属製品を使用することが多い。素焼きとはいえ陶器は、手間がかかる分高価な分類となっていた。絵付けまで行ったものはかなりの値段になるらしい。王都からたまに流通するときもある。大商店か貴族用が確保し、早やかに売り切れてしまう。
または、セット品の一部が流れることがたまにある。欠けたセット品でも、価値は計り知れないくらいだ。それらの話は妹も自分も両親から聞いている。
「ねえ、レッド。どのくらい作れそう?釉薬と本焼きをすれば、商品として充分に成立するわ」
母の目は商人モードだ。少し圧を感じる。
「魔力次第ですが、専従でやったとして日に100枚くらいでしょうか?きめ細やかな粘土質の石とか粘土があると、もっと手間かからず品質が高くなりそうですが」
「粘土質の石?陶石ね。たしかあそこで閲覧できたわよね・・・自由に試作品ができるように手配するわ。釉薬も探します。このまま練習をお願いね。いずれお願いすることになるわ」
こうしてはいられないと、洗濯物をパパッと片付けて家の中に入っていった。これから父親と話すと思われた。
そんなあっという間に居なくなった母の様子を二人で眺めていた。しばらくすると取り残された妹は、土魔法で庭が荒れた土を使用して遊び始める。たまには付き合うのも良いか、と久しぶりに違った土いじりもよいと考え、のんびりと遊びに付き合うことにした。
妹は家からコップを持ってきて土を入れる。少し圧縮させて逆さにして柔らかくなった地面にコップの形を作る。
「これはうちね。これだと形が違うから・・・こう、こうして削っちゃおう」
木の棒にて少しずつ削って家の形としていく。なるほど、容器に入れてから、硬くしてから操作するのもよいな。
「で、こっちが、ローズちゃん家。あっちがフローラちゃん家」
近所の家も作り始める。なるほど、ホーミィー村の配置のようだ。それなら少し手伝いしてみよう。
「じゃあ、自分はパラケル爺さんの家を作ろう」
土魔法で周囲の土を集め、水分をちょい足し。店と住居部分、納屋を簡単に作ってトン、と置く。
「あ~! 魔法はずるいよ。私の出番がなくなっちゃう」
「じゃあ、家のところに土を盛るか、印をつけてよ。川とか、森とか畑とか」
「それいいかも。じゃあ、ここが村長の家で、ここが教会で・・・」
コップでドン、と妹が固まりの土を置く。素焼きと同様に少し土構成を弄ったうえで整形していく。自分が思ったとおりに作れるのは面白い。徐々に村のパーツが出来上がっていった。
「よし、これで完成だね。でも雨が降ったら流れちゃうよ? 兄ぃ、どうする?」
「それなら、さっきの陶器と同じく焼いてしまおう」
土魔法の制御の要領で、土の建物の中をくりぬき、適度な空洞を作る。地面も固め薄い土地とした。圧力を強めて土を圧縮。水分を魔法でしっかりと抜き、火魔法で焼成する。最後に風魔法で徐々に粗熱をとって完成だ。
「ふう、これで完成だね。ホーミィー村の立体地図」
「兄ぃ、すごいね・・・本当に魔力操作できてる・・・」
失敬な。これでもパラケル爺さんに教授してもらってしっかりと習っているのだよ。
次の日。庭で洗濯物を干そうと外に出てきた母親が気づき、父親を呼ぶ声が響いていた。
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