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【番外編】
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「今日もつかれたなー」
ソファにドサッと横になる。
田口雅也、29歳。アメリカに在住。14年前に母と、母の再婚相手とその連れ子と一緒にアメリカに渡ってきた。
その前にもアメリカにいた。父と母と5歳~14歳までは在住していた。日本に帰国したと思ったら両親は離婚。まぁ、元々政略結婚なのは知ってたし、父さんも母さんも仲は悪くはなかったが、きっと政略結婚のしがらみでずっと苦しんでたんだろうと思っていた。アメリカに長く住んでた俺にとっては離婚てのはそこまで重く受け止めてなかった。親といえども好きな人生を歩んで欲しいとさえ思ってたので。こんな考えになったのは、14歳まで通ってた学校の先生のお陰。日本人とアメリカ人のハーフの人で、日本に戻るかもということでたまに日本語を教えてくれたりしていた。
大学に出て商社に勤務。それから一人暮らしをはじめ現在に至る。
2年前は結婚まで考えた恋人もいたが、思いっきり振られた。
翌日は休みなので部屋の掃除をしているとインターフォンが鳴った。
画面をみると
「え?唯!?」
妹、母さんの再婚相手の娘の唯がいた。
「どうしたんだ?突然」
「お兄ちゃんのことだから、家でゴロゴロしてるかなーって」
…間違ってないがな。
「お兄ちゃん、私…」
「ん?なに?」
「先月二十歳になったの。」
「ああ、そりゃ知ってるが」
先月家族皆で二十歳のお祝いしたじゃないか。
「だからね、私ずっとこの日を待ってて」
「は?何を?」
「お兄ちゃんの恋人になるって」
…
「はぁーーー!?」
な、何を言ってるんだ?
「待て、唯!冗談で」
「何で冗談なのよ!!」
「唯?」
「私は小さい頃から、お兄ちゃんだけだった。ずっと前から言いたかった。でもお母さんが、二十歳になってそれでも好きならって言われた。多分一時の感情でと思ってたようで…、でもずっとお兄ちゃんのこと好きだったから」
「ま、待て!唯!!」
俺は妹にしか思えんぞ!
「私じゃ子供だし、相手にされないことくらい解ってる。だから、ここでしばらくお兄ちゃんに振り向かせるように頑張る!だから今日からよろしくね!」
「今日からって…」
そう言って大きなスーツケースがゴロゴロと入ってきて
「まさか、ここに住む…とか?」
「うん!」
…まじか
「母さん達は知ってるのか?」
「うん、頑張ってこい!って応援された」
なんで応援なんだよ!!
「お義父さんにも言ったのか?」
「うん!」
なんで許可するんだよ!!
それから唯との生活が始まった。
生活用品は自分用しかないから唯の分も購入。
唯は大学生で、ここからでも通える距離のようで本人曰くこっちのが近いと言ってる。バイトは週3日はしている。
「おかえりなさい!」
唯がご飯を用意して待ってるのが当たり前になってきてる。料理は和食も多く俺にとっては有難い。
夜は勿論一緒には寝ない。
俺は別部屋でマットレスの上で寝ていて一緒に寝たいと言われるも、いつも適当に言って別々で寝ることにしている。
俺にとっては妹なんだよな…っと、思っていた。
「お兄ちゃーん」
へ?
玄関が開いて帰ってきたと思ったら
「すいません、唯途中でピッチ早くなっちゃって」
友達におぶられて帰ってきた
お酒臭!!
「すいません、わざわざ」
友達にお礼をいって、帰って行った。
大学の友達と飲みに行くって言ってたけどよー、それにしても飲み過ぎだろ!
「おい!唯!!」
玄関で寝そべってる唯を抱き上げようとすると
「なっ…」
唯の細さに驚いた。子供の時は抱き上げたり、肩車だってした。
しっかり女の身体の形…
そりゃ二十歳だし身体はまぁ…、でも思ってた以上に…だったんで驚いた。
ベッドに横にさせ、
「おい!もう、なんでこんなになるまで飲むんだよ!」
「…あ、お兄ちゃん…」
「あ、起きたか?」
いや、起きたってかトローンとしてる。まだ酔っぱらってる状態か
「…雅也…」
ドキッとする。
「雅也、嫌だ!他の人のところに行かないで」
「…お前何言ってるんだ?」
俺の首に腕を絡めて抱き締める。
「…雅也、嫌だ!私はずっと雅也だけなの」
「おい!もう寝ろ!!」
「じゃあいいよ!もう好きになって貰わなくっても。一度だけでいいから…抱いてほしい」
「何言ってるんだよ!」
「だって、実らないんでしょ?無理なんでしょ?なら、一回だけでいいから」
「唯!いい加減にしろ!」
「だって、だって!!だって!」
絡める腕をとり
「唯!!」
俺は唯顔をみた。
すると、今まで見たことない誘発的な、魅了するような女の顔をしてる。こんな顔、唯でもするのか!!
「私…雅也に愛されたいの」
「…」
俺は腕を引っ張り抱き締めた。
俺、何してるんだ?
すると
「…おい」
…寝てやがる
ったく、
俺は唯をベッドに寝かせた。
目にはいっぱい涙が溜まってる。
唯、お前、俺にそんなこと言って困らせるなよ!俺にとっては妹なんだよ
「お、おはよう」
いつもの通り朝御飯を用意してる唯。
「…」
俺は何も言わないでいると
「すいませんでしたぁーー!!」
と、頭を下げる。
「ご、ごめん。ほんと…」
「…てことは、覚えてるんだな?」
「ぜ、全部じゃないけど…、はい」
赤面して下を向いている。
「なぁ、唯。お前はまだ二十歳だ。俺は三十路のおっさん。大学にだって出逢いはあるだろうし、これから社会に出たらもっと出逢いがある。何も俺じゃなくても」
「出逢いはいっぱいあるよ!でもね、それとこれは別。私に…」
そう言って俺の顔をみる。
昨日から唯が女の顔にみえてゾクッとする。
「ほら、もうお前も大学いかないと」
お互い出る時間なのでドタバタと用意して出掛けた。
「は?俺と?」
「どお?」
会社の帰りに2期下の子から告白された。名前はジュリア。以前一緒に仕事をして気になってたらしい。
確かに美人だなー、それにスタイルもいい。
「そうだなー」
一瞬唯の顔が浮かんだ
な、なんで唯が…
少し考えたいと言って保留にしてもらった。
あんな美人なら付き合ってもいいと思うんだが、なにを躊躇してるんだ!?
自分で自分が解らずイライラしていた。
ん?
仕事から帰ってきてマンションに着くと
「…唯?」
一緒にいるのは白人男性。
「だから、本当に1人で住んでないの!」
「じゃ、誰と住んでるの?」
「そ、それは…」
そんな話が聞こえる。
「唯、どうした?」
「あっ、お兄ちゃん」
日本語だったので、彼には解らなかったようだ。
「まさか、本当に唯男と住んでるの?」
という男に
「うん」
と答える。
チラッと俺を見て
「唯の男?」
と言われ、違うという雰囲気を感じなかったので
「…ああ」
「ふーん」
と見られ
「だから、部屋にはあげないって何度も言ってるじゃん!」
「…じゃ、また明日」
そう言ってその男はいなくなった。
「ごめん、まさか着けてきてるとは思ってなくって」
謝る唯に
「腹減ったから飯にしようぜ」
部屋に入ってご飯を作る唯。俺も手伝いを一緒に準備した。
夕飯も終わった頃
「あ、おのね、私帰ることにした」
「え?帰る?」
「うん、実家に帰るよ」
「そうなのか?急だな」
「もう…、無理だしね。1ミリも可能性ないみたいだし」
そう言って苦笑いする。
「少しでもこうやって2人でいれたのは私の夢だった。ありがとう」
「…唯」
「明日、帰るね」
約3ヶ月唯はうちにいた。はじめはビックリしたが、一緒に買い物したり、出掛けたり、色んな話しもした。
「…そうか」
どっか寂しい気もする。でも唯にとってはこの方がいい。
その後ほとんど話さず、お互い寝床につき、朝起きた時には唯はいなかった。
こんなに広かったけ?この部屋
1人だと広く感じるな…
数日後
母さんから電話がきた。
「2人でのことに首突っ込む気はないけど、唯ショックで3日間全く動けず寝込んでたわよ」
「…」
「雅紀は知らないと思うけど、ずっとね病気で苦しんでたるのよ」
「…えっ?」
「癌でね、これから入院して抗がん剤治療に入るの。苦しい病院生活になる前に雅也と居たかったんでしょう」
唯が!?
「な、なんで俺に」
「絶対に雅也には言うなって言われててね。この先髪の毛も抜けるし、今よりもきっと醜くなるからそんなの見せたくないって」
「…」
「あの子にとっては、雅也には少しでも可愛く見せたかったのよ!女の子だもん。そのくらいのことは母さんだって気持ち解るからね」
「いつから入院?」
「明後日からよ!私達に少しの間だけど雅也と一緒に居させてくれてありがとうって言ってたわよ」
俺は鳥肌がたった。そこまでしてまで俺との時間を…
「抗がん剤治療しても範囲が広いので全部完治できるか…、でも私達はそれにかけてるの!唯を死なせやしない!」
強く言う母さんに言葉を失う。
ずっと、母さんにたちは唯の病気と戦ってきたのか。
「もう雅也とは会いたくないって言ってる。振られたってのもあるけど、これからの自分を見せたくないって…だから…」
「…冗談じゃない!!」
「…雅也?」
「俺は、何も知らなかったんだぞ!!何も知らないで唯と…」
唯の必死な顔、可愛い顔、優しい顔、色っぽい顔、女の顔。
全てが…
…
…
愛しい
それから、1ヶ月がたち
「唯、どうしても貴方に会いたいって人がいてね」
そして俺は唯の前に立った。
「お、お母さん!嘘つき!!絶対に言わないって約束したじゃん!!」
唯は離れて反対を向いてる。
ワンワン泣いている。
髪の毛が抜けて帽子をかぶり、前あったときみたいに化粧もおしゃれも出来ない。顔色も悪いし、痩せこけてる。
「帰って!!」
俺にそう言う。
「いやだ!見ないで!!」
「…唯」
母さんには外してもらい、2人の空間になった。
「俺もここに来るまで格闘があった。唯が望まれてないのに来ていいのか、そして俺自身がすごい恥ずかしかった。あんなに一生懸命唯は気持ちを伝えてるのに俺は妹としてと今までがそうだったからそれ以外考えられなかった」
「…」
「けど、真剣に向き合うと唯の全てが愛しい」
「!?」
「…唯好きだ」
鳴き声が止まり、固まってるようにみえる。
「お願いだから俺に顔みせて?」
「…いやだ」
「見せて!」
「だって…」
「どんな唯でも俺にとっては最高だよ」
そう言うとゆっくりとこっちに振り向いた。
「唯…」
俺は笑みし、
しばらく唯は面会謝絶状態だった。数日前から少しは面会できるようになり、この日を待ちわびていた。
「俺と一緒に歩んでくれませんか?俺の恋人になってください」
「…お兄ちゃん…」
「…こんなときにお兄ちゃん?」
「あっ、えっと…」
俺は笑顔で
「俺が近くにいるから!どんな唯でもこれからは近くにいたい」
涙でぐしゃぐしゃな唯を俺は抱き締めた。
それからの唯は想像を遥かに越えた苦しさで、1日10回吐くことだってある。目眩がしまともに立てないこともある。そして口の中にいくつもの口内炎。苦しさと辛さで唸ってる唯しか見てない。俺は背中をさすり、撫でてあげることしか出来なかった。
自分が無力すぎて泣ける。
少し落ち着き、唯が寝たとき
「唯を頼む」
短いけどお義父さんから一言言われた。
「ああ」
そして一年後。
まだ再発もあるかもしれないので通院は必須だが、それでも唯は退院することが出来た。
実家に帰り、久々に4人で食卓に座る。
「唯、頑張ったな」
不安であった癌は今のところ見つかってない。あの広さでなくなったのは唯の頑張りだと言われてる。
学校も休学してるし、これからやることいっぱい。
疲れたので休みたいと言い、寝室まで俺が連れていった。
ベッドに休んだとき
「唯、卒業したら俺と一緒になるか?」
「えっ?」
「結婚しようって言ってるの!」
「いいの?」
「いいに決まってるだろ!」
「…ありがとう」
嬉しそうな顔をして涙を浮かべる。
それから3年後、癌は完治し俺たちは結婚した。
ソファにドサッと横になる。
田口雅也、29歳。アメリカに在住。14年前に母と、母の再婚相手とその連れ子と一緒にアメリカに渡ってきた。
その前にもアメリカにいた。父と母と5歳~14歳までは在住していた。日本に帰国したと思ったら両親は離婚。まぁ、元々政略結婚なのは知ってたし、父さんも母さんも仲は悪くはなかったが、きっと政略結婚のしがらみでずっと苦しんでたんだろうと思っていた。アメリカに長く住んでた俺にとっては離婚てのはそこまで重く受け止めてなかった。親といえども好きな人生を歩んで欲しいとさえ思ってたので。こんな考えになったのは、14歳まで通ってた学校の先生のお陰。日本人とアメリカ人のハーフの人で、日本に戻るかもということでたまに日本語を教えてくれたりしていた。
大学に出て商社に勤務。それから一人暮らしをはじめ現在に至る。
2年前は結婚まで考えた恋人もいたが、思いっきり振られた。
翌日は休みなので部屋の掃除をしているとインターフォンが鳴った。
画面をみると
「え?唯!?」
妹、母さんの再婚相手の娘の唯がいた。
「どうしたんだ?突然」
「お兄ちゃんのことだから、家でゴロゴロしてるかなーって」
…間違ってないがな。
「お兄ちゃん、私…」
「ん?なに?」
「先月二十歳になったの。」
「ああ、そりゃ知ってるが」
先月家族皆で二十歳のお祝いしたじゃないか。
「だからね、私ずっとこの日を待ってて」
「は?何を?」
「お兄ちゃんの恋人になるって」
…
「はぁーーー!?」
な、何を言ってるんだ?
「待て、唯!冗談で」
「何で冗談なのよ!!」
「唯?」
「私は小さい頃から、お兄ちゃんだけだった。ずっと前から言いたかった。でもお母さんが、二十歳になってそれでも好きならって言われた。多分一時の感情でと思ってたようで…、でもずっとお兄ちゃんのこと好きだったから」
「ま、待て!唯!!」
俺は妹にしか思えんぞ!
「私じゃ子供だし、相手にされないことくらい解ってる。だから、ここでしばらくお兄ちゃんに振り向かせるように頑張る!だから今日からよろしくね!」
「今日からって…」
そう言って大きなスーツケースがゴロゴロと入ってきて
「まさか、ここに住む…とか?」
「うん!」
…まじか
「母さん達は知ってるのか?」
「うん、頑張ってこい!って応援された」
なんで応援なんだよ!!
「お義父さんにも言ったのか?」
「うん!」
なんで許可するんだよ!!
それから唯との生活が始まった。
生活用品は自分用しかないから唯の分も購入。
唯は大学生で、ここからでも通える距離のようで本人曰くこっちのが近いと言ってる。バイトは週3日はしている。
「おかえりなさい!」
唯がご飯を用意して待ってるのが当たり前になってきてる。料理は和食も多く俺にとっては有難い。
夜は勿論一緒には寝ない。
俺は別部屋でマットレスの上で寝ていて一緒に寝たいと言われるも、いつも適当に言って別々で寝ることにしている。
俺にとっては妹なんだよな…っと、思っていた。
「お兄ちゃーん」
へ?
玄関が開いて帰ってきたと思ったら
「すいません、唯途中でピッチ早くなっちゃって」
友達におぶられて帰ってきた
お酒臭!!
「すいません、わざわざ」
友達にお礼をいって、帰って行った。
大学の友達と飲みに行くって言ってたけどよー、それにしても飲み過ぎだろ!
「おい!唯!!」
玄関で寝そべってる唯を抱き上げようとすると
「なっ…」
唯の細さに驚いた。子供の時は抱き上げたり、肩車だってした。
しっかり女の身体の形…
そりゃ二十歳だし身体はまぁ…、でも思ってた以上に…だったんで驚いた。
ベッドに横にさせ、
「おい!もう、なんでこんなになるまで飲むんだよ!」
「…あ、お兄ちゃん…」
「あ、起きたか?」
いや、起きたってかトローンとしてる。まだ酔っぱらってる状態か
「…雅也…」
ドキッとする。
「雅也、嫌だ!他の人のところに行かないで」
「…お前何言ってるんだ?」
俺の首に腕を絡めて抱き締める。
「…雅也、嫌だ!私はずっと雅也だけなの」
「おい!もう寝ろ!!」
「じゃあいいよ!もう好きになって貰わなくっても。一度だけでいいから…抱いてほしい」
「何言ってるんだよ!」
「だって、実らないんでしょ?無理なんでしょ?なら、一回だけでいいから」
「唯!いい加減にしろ!」
「だって、だって!!だって!」
絡める腕をとり
「唯!!」
俺は唯顔をみた。
すると、今まで見たことない誘発的な、魅了するような女の顔をしてる。こんな顔、唯でもするのか!!
「私…雅也に愛されたいの」
「…」
俺は腕を引っ張り抱き締めた。
俺、何してるんだ?
すると
「…おい」
…寝てやがる
ったく、
俺は唯をベッドに寝かせた。
目にはいっぱい涙が溜まってる。
唯、お前、俺にそんなこと言って困らせるなよ!俺にとっては妹なんだよ
「お、おはよう」
いつもの通り朝御飯を用意してる唯。
「…」
俺は何も言わないでいると
「すいませんでしたぁーー!!」
と、頭を下げる。
「ご、ごめん。ほんと…」
「…てことは、覚えてるんだな?」
「ぜ、全部じゃないけど…、はい」
赤面して下を向いている。
「なぁ、唯。お前はまだ二十歳だ。俺は三十路のおっさん。大学にだって出逢いはあるだろうし、これから社会に出たらもっと出逢いがある。何も俺じゃなくても」
「出逢いはいっぱいあるよ!でもね、それとこれは別。私に…」
そう言って俺の顔をみる。
昨日から唯が女の顔にみえてゾクッとする。
「ほら、もうお前も大学いかないと」
お互い出る時間なのでドタバタと用意して出掛けた。
「は?俺と?」
「どお?」
会社の帰りに2期下の子から告白された。名前はジュリア。以前一緒に仕事をして気になってたらしい。
確かに美人だなー、それにスタイルもいい。
「そうだなー」
一瞬唯の顔が浮かんだ
な、なんで唯が…
少し考えたいと言って保留にしてもらった。
あんな美人なら付き合ってもいいと思うんだが、なにを躊躇してるんだ!?
自分で自分が解らずイライラしていた。
ん?
仕事から帰ってきてマンションに着くと
「…唯?」
一緒にいるのは白人男性。
「だから、本当に1人で住んでないの!」
「じゃ、誰と住んでるの?」
「そ、それは…」
そんな話が聞こえる。
「唯、どうした?」
「あっ、お兄ちゃん」
日本語だったので、彼には解らなかったようだ。
「まさか、本当に唯男と住んでるの?」
という男に
「うん」
と答える。
チラッと俺を見て
「唯の男?」
と言われ、違うという雰囲気を感じなかったので
「…ああ」
「ふーん」
と見られ
「だから、部屋にはあげないって何度も言ってるじゃん!」
「…じゃ、また明日」
そう言ってその男はいなくなった。
「ごめん、まさか着けてきてるとは思ってなくって」
謝る唯に
「腹減ったから飯にしようぜ」
部屋に入ってご飯を作る唯。俺も手伝いを一緒に準備した。
夕飯も終わった頃
「あ、おのね、私帰ることにした」
「え?帰る?」
「うん、実家に帰るよ」
「そうなのか?急だな」
「もう…、無理だしね。1ミリも可能性ないみたいだし」
そう言って苦笑いする。
「少しでもこうやって2人でいれたのは私の夢だった。ありがとう」
「…唯」
「明日、帰るね」
約3ヶ月唯はうちにいた。はじめはビックリしたが、一緒に買い物したり、出掛けたり、色んな話しもした。
「…そうか」
どっか寂しい気もする。でも唯にとってはこの方がいい。
その後ほとんど話さず、お互い寝床につき、朝起きた時には唯はいなかった。
こんなに広かったけ?この部屋
1人だと広く感じるな…
数日後
母さんから電話がきた。
「2人でのことに首突っ込む気はないけど、唯ショックで3日間全く動けず寝込んでたわよ」
「…」
「雅紀は知らないと思うけど、ずっとね病気で苦しんでたるのよ」
「…えっ?」
「癌でね、これから入院して抗がん剤治療に入るの。苦しい病院生活になる前に雅也と居たかったんでしょう」
唯が!?
「な、なんで俺に」
「絶対に雅也には言うなって言われててね。この先髪の毛も抜けるし、今よりもきっと醜くなるからそんなの見せたくないって」
「…」
「あの子にとっては、雅也には少しでも可愛く見せたかったのよ!女の子だもん。そのくらいのことは母さんだって気持ち解るからね」
「いつから入院?」
「明後日からよ!私達に少しの間だけど雅也と一緒に居させてくれてありがとうって言ってたわよ」
俺は鳥肌がたった。そこまでしてまで俺との時間を…
「抗がん剤治療しても範囲が広いので全部完治できるか…、でも私達はそれにかけてるの!唯を死なせやしない!」
強く言う母さんに言葉を失う。
ずっと、母さんにたちは唯の病気と戦ってきたのか。
「もう雅也とは会いたくないって言ってる。振られたってのもあるけど、これからの自分を見せたくないって…だから…」
「…冗談じゃない!!」
「…雅也?」
「俺は、何も知らなかったんだぞ!!何も知らないで唯と…」
唯の必死な顔、可愛い顔、優しい顔、色っぽい顔、女の顔。
全てが…
…
…
愛しい
それから、1ヶ月がたち
「唯、どうしても貴方に会いたいって人がいてね」
そして俺は唯の前に立った。
「お、お母さん!嘘つき!!絶対に言わないって約束したじゃん!!」
唯は離れて反対を向いてる。
ワンワン泣いている。
髪の毛が抜けて帽子をかぶり、前あったときみたいに化粧もおしゃれも出来ない。顔色も悪いし、痩せこけてる。
「帰って!!」
俺にそう言う。
「いやだ!見ないで!!」
「…唯」
母さんには外してもらい、2人の空間になった。
「俺もここに来るまで格闘があった。唯が望まれてないのに来ていいのか、そして俺自身がすごい恥ずかしかった。あんなに一生懸命唯は気持ちを伝えてるのに俺は妹としてと今までがそうだったからそれ以外考えられなかった」
「…」
「けど、真剣に向き合うと唯の全てが愛しい」
「!?」
「…唯好きだ」
鳴き声が止まり、固まってるようにみえる。
「お願いだから俺に顔みせて?」
「…いやだ」
「見せて!」
「だって…」
「どんな唯でも俺にとっては最高だよ」
そう言うとゆっくりとこっちに振り向いた。
「唯…」
俺は笑みし、
しばらく唯は面会謝絶状態だった。数日前から少しは面会できるようになり、この日を待ちわびていた。
「俺と一緒に歩んでくれませんか?俺の恋人になってください」
「…お兄ちゃん…」
「…こんなときにお兄ちゃん?」
「あっ、えっと…」
俺は笑顔で
「俺が近くにいるから!どんな唯でもこれからは近くにいたい」
涙でぐしゃぐしゃな唯を俺は抱き締めた。
それからの唯は想像を遥かに越えた苦しさで、1日10回吐くことだってある。目眩がしまともに立てないこともある。そして口の中にいくつもの口内炎。苦しさと辛さで唸ってる唯しか見てない。俺は背中をさすり、撫でてあげることしか出来なかった。
自分が無力すぎて泣ける。
少し落ち着き、唯が寝たとき
「唯を頼む」
短いけどお義父さんから一言言われた。
「ああ」
そして一年後。
まだ再発もあるかもしれないので通院は必須だが、それでも唯は退院することが出来た。
実家に帰り、久々に4人で食卓に座る。
「唯、頑張ったな」
不安であった癌は今のところ見つかってない。あの広さでなくなったのは唯の頑張りだと言われてる。
学校も休学してるし、これからやることいっぱい。
疲れたので休みたいと言い、寝室まで俺が連れていった。
ベッドに休んだとき
「唯、卒業したら俺と一緒になるか?」
「えっ?」
「結婚しようって言ってるの!」
「いいの?」
「いいに決まってるだろ!」
「…ありがとう」
嬉しそうな顔をして涙を浮かべる。
それから3年後、癌は完治し俺たちは結婚した。
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