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会いたい

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「はい」

電話口に聞こえる声。

「あ、あのー、水沢です。水沢結乃」

「えっ!?」

凄いビックリしてるようだった。

「今大丈夫?」

圭哉君と2人出会ってから既に3ヶ月がたっていた?

「うん、大丈夫」

「あ、あの後、色々考えた」

「…うん」

「私達、あんなことがなければもっとお互い違う人生になったと思う。」

「…そうだね」

「…圭哉君、やっぱり許せない」

「…」

「…許せないよ、やっぱり」

「…ごめん」

「で、でも、でも許せないけど、会いたい」

「え?」

私は、それ以上言えなかった。

気持ちが複雑すぎて、言葉に出来なくって…

「会ってくれるの?」

「…うん」

私達は、再び会う約束をした。



週末の昼下り、カフェで待ちあわせした。

圭哉君が既に待ちあわせ場所にいて、右手を軽く上げていた。

その姿もやっぱり絵になる。

席に座って、注文して

「会ってくれてありがとう」

「いえ、遅くなってごめん」

「いや、全然だよ」

「…付き合うとかそういうのは、まだ解らない。でも会いたいと思った」

顔を見るとやっぱり好きとは言えなかったけど、会いたい気持ちは素直に言おうと思った。

「うん」

少し間があって

「俺にとってはあり得ないと思ってた。2度と話すことも、会うこともないと思ってた。でも見るとダメだな…」

苦笑して

「欲が出ちゃって」

「欲?」

「一緒に居たいっていう欲。」

「もしかして、圭哉君の一生結ばれることのない人が好きって聞いたけど、まさか…」

「…ああ、そう。まさかのそういうこと」

私の顔をみた。

「で、でもだって、あれから私達会ってない」

「それでも…忘れられなかった。記憶は中学生のままだけど、高校のときはたまに見ることあったし、香苗からもスマホで写真みたことあるし」

「その程度でしょ?」

「それでも、俺の恋愛はあそこで止まってた」



「忘れようとして、他の人とも付き合ってみたよ。色々してみたけど、やっぱりダメで、ずっとこのままなんだろうな。罰なんだろうなって」

「名前さえ呼ぶことも怖いとか、笑うだろ?」

「私の名前言うの怖いの?」

「…こないだ必死に言ったけど、やっぱり怖くって」

「そんなんじゃ、付き合うことなんて…」

「だよな…、でも見ると欲でる」

圭哉君が犯罪を起こしたことは間違いないけど、でも私より重症なのが解って、好きな人が苦しんでるのをみて、そのままに出来なかった。

「私が近くにいて、大丈夫なの?」

「いて欲しい」

「…解った。付き合うとかは解らない。でもこれからも会おう」

と、言ったら圭哉君は少し嬉しそうな顔をした。


それからは、毎週末会っていた。

ほとんどカフェでお茶とか、食事する程度で、2人でどこか行くとかはなかった。

3ヶ月もすると、少しだけお互いに気持ちが楽になったのか、緊張みたいなのがなくなってきた。

「仕事で今度出張でね、3泊だけど北海道に行くんだよね」

「へー、北海道かぁー、いいな。コンサルタントって仕事もアチコチ行くんだね」

「海外とかもたまにあるよ」

「へぇー」

「お土産買ってくるね」

笑顔も以前より緊張感がとれた気がする。

私もバクバクしたのも、冷や汗もなくなった。

お互い触れることも、あれからまだ名前も呼ばれてないけど、それでも少しは進んでると思う

「圭哉君」

「ん?」

「気をつけてね!出張」

「ありがとう」

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