トラガール

詩織

文字の大きさ
上 下
15 / 35

急に一人に…

しおりを挟む
だからといって仕事は休めないので、気持ちを切り替えて仕事をする。

いつもは大音量で聞かない音楽を聞き、少しでも気持ちを切り替えた。

でも、思うのは翔悟さんのことばかりで…

それから3週間して、全く異常が見られないってことで退院したと聞いた。

でも、やっぱり私のことは覚えてない。

気にしてくれて相変わらず瑠依子さんは連絡くれる。

本当優しくっていい人だな。

それから1ヶ月たっても、2ヶ月たっても翔悟さんは思い出さないみたいで、私は翔悟さんのマンションにもう行くことが出来なかった。

瑠依子さんも、もうかける言葉が見つからない?みたいになってしまって…

認めたくない!認めたくないないけど…

「私達は、もう…」

この先がないことが、もう…



久々に翔悟さんの建設現場に行くことになった。

見るともう完成に近い状態で、ここ来なくなったら仕事でも接点がなくなるんだろうな。

そんな気持ちで搬入した。

「おい、お嬢ちゃん!」

振り向くと現場監督さんだった。

この年でお嬢ちゃんは、あれだけど…

「植原さんと何かあっとんかい?」

「え?」

「植原さん、怪我して退院したときいて、お嬢ちゃんに看病いっぱいしてもらったか?と言ったら、誰のことだって言われたから」

「あっ…」

「別れたのか?」

「いえ…、いや、はい!なのかな?解らないです」

「は?別れもしっかり出来ないのか?植原さんは」

「そうじゃないです!記憶が…」

「え?」

「その、私だけの記憶がないんです」

監督さんはしばらく呆然としていた。



翔悟さん、仕事復帰出来たのか。

よかった…

私はもう、翔悟さんの前から現れない方がいいんだろうな。

大手の会社で一級建築士で、お父さんは政治家で大臣までしてた人で、そんな人が私と釣り合うわけないか。

1年前は一人の生活だったんだし、戻っただけだよ!

翔悟さんとのことは、なかったことに…なんて、やっぱり出来ない!



そして、更なる追い打ちがかかる。

「篠山志奈乃さん?」

自宅のアパート前に着くと、車から降りてきて一人の女性が出て来た。

「あっ」

翔悟さんのお義母さんだ。

私は一礼をする。

「貴方には可哀想だとは思いますけど、翔悟のことはなかったことにしてください。」

「え?」

「翔悟は縁談をして、今お付き合いをしてます。」

な、な…

「今後翔悟の前に現れないで頂きたく、これを」

と、手渡された。

手に持ってるのは…

小切手だった。

「これでおねがいします」

と言って、後部座席に乗って車は出発した。

あまりの衝撃に、声を出すことも小切手を返すこともできなかった。

アパートに入って、もう心が砕けそうになる。

辛くって

「瑠依子さん」

無意識に瑠依子さんに電話してしまった。

「どうしたの!?」

と、ビックリしてる様子だった。

「瑠依子さん…うっ、うっ…」

泣いてるのを察して

「今から行く!」

と言って急いで来てくれた。


「おばさんが、そんなことを!?」

瑠依子さんがイライラしだした。

「なんで、このタイミングで見合いなんか…」

ガックリしてる私をみて

「確かに私も翔悟も見合い話はあるのよ!でも私達はいつも断ってた。よりにもよってこんな記憶がないときに漬け込んで、なんなのよ!もう!!」

翔悟さんは、もうどどかない人になってしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...