1 / 1
地味な女
しおりを挟む
在宅勤務になって2年。
世の中はまだまだ在宅勤務が多い。
私も会社に出勤するよりも自宅での仕事が慣れてしまい、会社に行くの面倒とすら思ってしまってる。
真中朱里華、30歳。バツイチ、子供はなし。インテリアのデザインの仕事をしている。
この会社には3年前転職。それは前の夫がいたからだ。
前夫は、取引先の女の子から声をかけられて、断ることが出来ずズルズルと続けてたとか。私のように一生懸命頑張る子が好きと言ってくれたのに、結局は見た目で惑わされ私とは離婚となった。
たった1年で離婚したんで、双方の両親とも怒りぱなし。私が悪いわけじゃないのに攻められるし
そして、半年前に私を好きだと言ってくれる人が現れ友達からと付き合いはじめたら
「真中さーん、すいません。なんか彼私のほうがいいって言ってくれてー、ごめんなさいー」
「ごめん、そういうわけだから」
先週喫茶店に呼び出されたと思ったら、速水辰巳、まだ半年しか付き合ってない恋人に別れを切り出された。
そして同席してたのは、津田綾音、2人とも同じ会社。辰巳は私と同じ年だが会社では先輩になる。そして津田綾音は2年前に新入社員として入ってきたまだ22歳。
在宅勤務になってるから解らないけど、化粧、ネイルなどには入念がないと聞いてい。
そしてほぼ初で津田と出会ったのが呼ばれた喫茶店に辰巳の隣座ってる女だった。
「そう。お幸せに」
それだけ言って私は喫茶店から出た。
本当は悔しい!殴ってやりたい!でも…、そんなの見せたら負けな気がした。
こんなんでまた会社やめるのもな。とりあえず在宅勤務でよかった。
離婚して3年がたち、職場で仲良く話せる人ができ、それから付き合いに発展した。
「なんだかなー」
やっぱり私って男運ないんだろうな。
会議はもっぱら、リモート会議。
先月から辰巳が別の部になったので、リモート会議で一緒になるのはなくなった。
「では、進捗と共有部分等なにかありましたら」
と、話がはじまり各々が話はじめる。
「あっ、そうだ。真中さん、今週1度出勤お願いします。真中さんの使ってるパソコンのレンタル期限が切れるので交換時期になるので」
「あっ、そうなんですか。了解です」
会社行くなんて久しぶりだなー、半年くらい行ってないかも。
そして出勤すると
「えー、地味女からだから簡単だったよ」
「やだー!そんなこと言ったら失礼だよ」
「だってぇー、本当のことだもん!バツイチらしいし、それなら私のほうがいいでしょう」
休憩エリアの横を通ったときに声が聞こえた。
津田綾音!
ってことは、私のことを言ってるのか
こんなところで言わなくっても…
「しかも、美人でもないしさー、あーこれならすぐ取れるわ!って思った」
「やだぁー!ほんと失礼だよ」
失礼だよって言ってる割には楽しそうに話してるし
「あの人中途でしょ?前の会社は旦那がいて逃げたとか!?だったらウケるわ!」
…
な、なんなのよ!もう!!流石にもう言い返そうとして行こうとしたとき
「君たち、そういう話はここでするものじゃないでしょ?他の人にも聞こえてるけど、いい気分しないんじゃないかな?」
数人いたけど、少し白い目で見ていた。
そして周りを見渡してたらしく
「あっ」
私と目があった。
「まだ学生気分?それなら社会人としてもう少し考えたほうがいいと思うけど」
と言うと、そそくさと休憩エリアからいなくなった。
男性が言ってくれたことで、私は言わずにすんだが、なんでこんな子にとられたんだか…、怒りが収まらなかった。
注意してくれた男性に会釈だけして、自分の部署に向かった。
すでに次のノートパソコンは準備されていて、データの移動やら、インストールし直しなどで1日かかりそう。
「真中さん、お昼でもいかない?」
同じ部の課長が声をかけてくれてご一緒にランチをした。
「ほんと、在宅勤務の人は合わないからな。久しぶりだねー」
「はい。」
「仕事はしっかりやってくれてるし、真中さんは評価高いんだよ」
「え?」
それはないでしょう!と思ったが、そう言ってくれてるので
「そうなんですか。まだまだ全然ですがお役に立てるようがんばります」
と話してたところに
「あ、お疲れ様です」
課長に向かって言う男性。同じ会社の人なんだろう。
…あれ!?この人さっき津田を注意した男性だ
「あ、あの、すいません。今の方って?」
「あー、彼は小早川君って言って、最近本社にきたんだよ。ずっと海外勤務だったらしい。」
「そうなんですか」
海外支社はあるけど、それって親会社じゃなかったけ?
眼鏡をかけ、スマートで背も高い。真面目そうな顔をしてるけど、かなりととのってるから、眼鏡好き女子には人気がある感じもするが。
そんなことを少し考えてたときにご飯を食べ終わり、会社に戻った。
そんなときに
「ちょっと、落ち着いたら話したいことあるんだが」
今度は部長に声がかかった。
「はい」
なんだろ!?
「実は新規の部署を立ち上げることになってね。その部署に真中さんが行ってもらいたいんだが」
「…私ですか?」
「ああ、新規部署で部長をする人が真中さんをほしいと言ってね」
「えっ!?」
なんでまた…
「どうかね?」
ってか、この流れで断ることが出来るんだろうか?
とりあえずその新規部署とはどんな部署かを聞くことにした。
現在の部署は店頭販売が多いインテリアのデザインだが、新しい部署は企業用ということのようだ。
例えばモデルルームとか、展示場とかそういう企業からの依頼ということらしい。
「私でいいんですか?」
「是非って言ってる」
「そうですか、それなら是非お願いします」
その日は自宅に帰り、翌日新規部署の課長の顔合わせをリモートですると
「あっ」
あのときの人じゃん!!
えっと、小早川さんだっけ?
「よろしくお願い致します」
と言って頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。昨日もちょっと拝見してますよね?」
「あっ、はい。課長とランチをしたときと
…、あとは…」
言いづらそうにしてると
「まぁ、それはいいとして、この部署は立ち上がったばかりですので、私と真中さんとあと別で3名います。現在はお試し期間といったところでしょうか。今回の仕事で起動にのったら人員は増えるということです。」
「はい」
「がんばりましょう」
「はい、よろしくお願い致します」
少人数で始まった部署。だけどやりがいはあった。
みんな自分の意見や考えをガンガン言い、いいものを作ろうとしている。私達の結果でその部署が存続になるかどうかだもんな。気合いは入るよな。
「真中」
「はい!」
「今やってるのついまでできる?サンプルとして出したい」
「はい。今日中には仕上がるかと」
「じゃたのむ。それと、さっきのメールの件だが、真中がやるんじゃなく、佐伯に任せてみろ!アイツもそれなりに実績がある。1人で抱え込むな」
「…はい」
毎日的確な指示と作業に気合いが入る。
他のメンバーとも仕事の連携をしつつ、お願いしたい仕事をふり質問等に対応。
客先のリモート打ち合わせには私も出席することになり
「なるほど…、なかなか色合いがいいですね。こちらでも検討してみます。」
「まだサンプルですので、ご意見があれば申していただければ」
いい感じで話は進み、打ち合わせ終了。
「真中」
「はい」
「明後日、ちょっと一緒に同行してくれないか?」
「えっ?」
「気になった展示会があるんだ」
「わかりました」
在宅ばかりなので、展示会に行くなんて初めてだ。
「凄いですね」
一代イベントのような凄さ。こんな大きな展示会だったとは。
凄い勉強になるな。考え付かなかったものもあったりと、色んな意味で刺激的だった。
!?
うそ!
…まぁ、前の会社も展示してあるとはかいてたからな。
それにしてもまさか元夫がいるなんて。
向こうも気づいたのか、チラチラみてる。
部長はそんなこと知らないから前の会社の展示ブースに入り
「なんだか、真中に似てるな」
と言った。
「!?」
よく見ると本当だ。私がデザインしてるのと雰囲気が似てる。
「気になるものでもありましたでしょうか?この辺のデザインをしてるのは、あちらの佐野というものが担当してまして」
と、部長をみて説明をし 私をチラッとみると
「えっ!?真中さん?」
直属の上司ではなかったが、顔くらいはお互い知っている。
「山下部長、お久しぶりです」
「驚いた!こんなことろで会うなんて」
小早川部長がわたしをみて
「以前勤めてた会社なんです」
「あーなるほど」
と、あまり興味ない感じで返事された。
「…これは、佐野君がデザインしたんだが…」
山下部長は遠慮しつつ言った。
佐野というのは元夫の名前。
「…」
「…そうですか、失礼します」
私は一言言ってその場を離れた。
しばらく歩き、展示場の入り口まで戻っていた。
「…」
言葉が出ない!でもなんで…
「上司をほっぽといて、移動するとはたいしたもんだな」
あっ!!
「すいません!」
振り向いたら、部長が来ていた。
「…あれは、お前がデザインしてんじゃないのか?」
「!?」
「図星か」
「あのデザインした男とは仲よかったとか?」
「…元…夫です」
「なるほど」
何度もデザインを書いて、最終的に提出しなかったもの。見覚えのあるデザインだった。
私のを盗んだってこと!?
「ただ長くはない。いつかは盗んだデザインも底が尽きる。その時が潮時だ」
「…はい」
なんでそんなことしたんだろ?あの人だって同業者。自分のデザインもあるのに。
彼の独特なデザインが好きだったのに…
「怒りたいなら付いていくが」
「い、いえ。怒りよりも悲しい気持ちです。同じデザインをする人間としてこんなことしても解るはずなのに」
「…」
気持ちを切り替え、別の部にブースに移動し、色々と見ることができた。
ハプニングはあったものの来て勉強になったのでよかったのかもしれない。
展示場を出ると暗くなってた。
「飯でも食いにいくか」
そういって連れてこられたのは居酒屋だった。
「…愚痴くらいなら聞くぞ」
お互いビールを飲んで課長は一言言ってくれた。
「あ、い、いえ。盗まれる方もよくなかったと思ってますので」
「…」
しばらくはお互い無口だったが、3杯目くらいになったらつい
「私って地味じゃないですか。だから結婚とかそういうのしないと思ってたんです。まぁバツイチですけど」
「…地味…か」
「仕事は好きなんですけどね。そっち方面はなんか運がなくって」
「ふーん」
まぁ興味ないよな。こんな話。
「…そこまで地味か?」
「え!?」
「もう少し自信もて!」
励ましてくれてるのかな?
「部長はカッコいいから私みたいなブサイクなのとは違うから」
ビックリしたような顔で私をみる。
えっ?何か言った?
「あのな、俺は真中より10も離れてるおっさんだぞ!それに俺もバツイチ!カッコいいって言ってくれるのはありがたいが、もてないよ!」
「えっ?そうなんですか?」
バツイチも驚いたけど、10も離れてたんだ。しかもモテないって…
「モテる人は気づかないだけですよ」
と言いながら4杯目を飲み始めた。
「はぁ、結婚しても、やっと恋人が出来てもみんな取られて別れるし、一生独身のがいいのかなー」
「なんだ真中、結婚したいのか?」
「結婚はまだ解りませんが、でも一生1人は寂しいかもです」
「…なら、俺とはどうだ?」
「…?」
ん?なに?
頭がついていけず、部長をみる。
「…えっと」
「俺とはどうだ?と聞いてる」
「えっと、なにが…でしょう?」
「…寂しいんだろ?なら俺がいようか?と言ってる」
「あっ、えっと」
どうとらえたらいいんだ?
「部長、あの飲み仲間的な?ですか?」
「…飲み仲間に対してそんなこと言わんだろ?パートナーとしてだ」
「パートナー…」
「天然そうだから付け足すが、仕事のパートナーとかじゃないぞ」
…
…
「えええーーー!!」
な、なんで!?
なんでそうなるの?
「か、か、部長!正気ですか?」
「嘘言っても仕方ないだろ」
なんでそんな淡々と言えるのよ!
酔いがさめたよ!
「で、でも私元夫も最近できた恋人もみんな浮気されて…、そんな私と」
「俺がそうなるとでも?」
「いや、あの…そういうわけじゃ」
「なら、真中がいいなら問題ないんじゃないか」
「部長みたいに素敵な方となんて信じられないというか」
「じゃ、満更でもないってことか?」
「いや、あの…、解りません。考えたことないんで」
「じゃ、これから考えろ!」
そ、そんな…、急にいわれても
ってか、そもそも部長は私のこと…
…聞けない。
酒の勢い?ボランティア?どうみても私に好意が…とは見えないんだけど
それからもなんか曖昧になってお開きになった。
お酒の席だから気にしなくてもいいのかな?
などと思ってたら
「例のはしっかり考えてるか?」
リモートの打ち合わせで2人のときに言われ
「えっ?例のって」
「…あのな。どうせ酒の席だからとか思ってるだろ?」
…思ってました。
「とりあえず、考えろ!」
「は、はい」
考えると言っても、恋人になるってことだよね?(多分)
それから信じられないことに、部長からLINEがくる。
プライベートの連絡はこっちにすると書いてあった。
あまり部長と接点なかったし…、たしかにイケメンではあるけど…、どうせまたって思ってしまう。
それからしばらくして部署全員が1日だけ出社となった。
リモートでは顔はみてるけど、実際初めて会う人ばかりで改まって挨拶したりしていた。
「朱理華」
?
…辰巳?
お昼休みから帰ってくるときにバッタリ会ってしまった。
「久しぶり」
「…ええ」
な、なによ!?会っても声かけなくってもいいのに
「出社って今日だけ?」
「ええ、まぁ」
「なら、今日仕事終わったら飯でもいかね?」
はぁ!?なんでよ!!
「…意味解らないんだけど。彼女いるのになんなん?」
「あー、もう別れたよ」
「…そうなんだ」
「だからさ、飯いこーぜ」
「いえ、結構です!話すこともないし」
「俺さ、部長からデザインとかそういうの朱理華が凄いって聞いてさ、ちょっと色々聞きたいなーって。お前ってスゲーんだな」
「…」
なんなんだ?コイツ
「先輩なんだし、ご自分でお考えになられたらいかがですか?」
「そんなこと言わないでさー、付き合ってた仲じゃん!どうせ、彼氏いないんだろ?」
むかぁーーー!!
「すいません、戻るんで失礼します」
「じゃさ、何時に終わる?」
約束してないのに!!
「会うつもりないんで」
「なんだよー、いいじゃん!」
と、近くにくるんでうざがってると
「悪いが、先に約束してるんですよ!」
「えっ!?」
驚く辰巳。
振り返ると部長がいた。
「あ、あの」
部長とも約束はしてないが
「あー、仕事のことか」
と、言う辰巳に
「いえ、プライベートでです」
「!?」
「そういうわけだから、真中戻るぞ」
「はい、では」
と言って辰巳を残し、2人で歩き出した。
とりあえず、助かったーー!!
「恋人がいるとでも言っとけ!」
「…えっ?」
小声でそう聞こえたが、席まで戻ったので話しはそこで終わった。
仕事が終わると、滅多に集まらないので部署みんなで親睦会ということで居酒屋に行った。
2時間ほど色々はなし盛り上がったところで解散。
そして
「真中」
部長が私を呼び止め
「時間あるか?」
「…はい」
そのまま2人でバーに行った。
「この部署が出来てそろそろ半年になる。取引先とは少しずつ信頼関係を築き、この部署は大きくなることになった。ただその発表は来週なんで皆にはまだ言ってないがな」
「そうなんですか!よかったでたす」
「それでだ」
?
「俺は、元いたところに帰る」
「…えっ?」
「俺は元々親会社の社員だからな」
やっぱりそうだったんだ。海外からっておかしいと思ったんだよな。…てことは
「日本を離れるんですか?」
「そういうことになる」
部長との仕事はやりやすかった。できばもっと一緒にやりたかった。
「本当にいっちゃうんですか?」
「いってほしくないか?」
「…はい」
そういうと、少し嬉しそうな顔をして
「じゃ、一緒に来るか?」
「えっ!?」
一緒に!?
「お前が親会社に出向という手もある。俺が戻る部署は人手が足りん。どうだ?」
海外で自分の力を…?
あまりにも突然の話しにビックリはしたけど
「や、やりたいです!やってみたいです!!」
「…だが、もし来たら逃がさないがそこは覚悟してるのか?」
「に、逃がさない?」
「俺のものになる覚悟だ」
かぁーーと赤くなる。
「いい加減考えた答えを知りたいんだが。でも俺が居てほしいんだよな?」
意地悪そうに言う部長に
「…居て、ほしいです」
毎日LINEがくるのに意識しない方がおかしい。
「で、でも私何度もいいますが、捨てられてばかりなんで」
「そこは安心しろ!」
頭をポンと叩き
「明日は休みだし、うち来れるか?」
私は無言で頷いた。
それをみるとホッとした顔をされ
「じゃ、行くか」
その後、元夫から連絡があった。自分の考えたデザインだと上には通らない。だから助けてほしいと。
勿論断った。今後連絡がきたら弁護士を通すことを伝えた。
そして結局は、仕事が続けられず辞めたと聞いている。浮気した彼女ともどうなったか興味はない。
辰巳の方は1度だけ連絡がきたが、海外に出向すること、課長と恋愛関係になってることを話し今後はもう連絡はしないことを言った。もしまた来たら部長が間に入るといってくれた。
そして、その女、津田綾音は他の若い男と付き合ってると聞く。だがそれも辰巳と別れてから3人目。そのうち痛い目を見るだろう。
実家の親に部長が海外出向、今後のことも見据えてることを伝えてくれた。
バツイチだったんで、この先どうなるかと心配してた両親は大喜びしてる。
そしてようやく出発!
すでに部長は先に行ってるので、1人で日本をたつことになった。
誰も見送りはないけど、向こうには…
「やっときたな!」
「部長すいません、来てもらって」
空港の到着ロビーに迎えに来てくれたか課長。
「おい!そのいい加減部長はやめろ!」
「あっ、えっと…康也さん」
「朱理華、待ってたよ!」
地味と言われてた女は今すごく幸せです!
世の中はまだまだ在宅勤務が多い。
私も会社に出勤するよりも自宅での仕事が慣れてしまい、会社に行くの面倒とすら思ってしまってる。
真中朱里華、30歳。バツイチ、子供はなし。インテリアのデザインの仕事をしている。
この会社には3年前転職。それは前の夫がいたからだ。
前夫は、取引先の女の子から声をかけられて、断ることが出来ずズルズルと続けてたとか。私のように一生懸命頑張る子が好きと言ってくれたのに、結局は見た目で惑わされ私とは離婚となった。
たった1年で離婚したんで、双方の両親とも怒りぱなし。私が悪いわけじゃないのに攻められるし
そして、半年前に私を好きだと言ってくれる人が現れ友達からと付き合いはじめたら
「真中さーん、すいません。なんか彼私のほうがいいって言ってくれてー、ごめんなさいー」
「ごめん、そういうわけだから」
先週喫茶店に呼び出されたと思ったら、速水辰巳、まだ半年しか付き合ってない恋人に別れを切り出された。
そして同席してたのは、津田綾音、2人とも同じ会社。辰巳は私と同じ年だが会社では先輩になる。そして津田綾音は2年前に新入社員として入ってきたまだ22歳。
在宅勤務になってるから解らないけど、化粧、ネイルなどには入念がないと聞いてい。
そしてほぼ初で津田と出会ったのが呼ばれた喫茶店に辰巳の隣座ってる女だった。
「そう。お幸せに」
それだけ言って私は喫茶店から出た。
本当は悔しい!殴ってやりたい!でも…、そんなの見せたら負けな気がした。
こんなんでまた会社やめるのもな。とりあえず在宅勤務でよかった。
離婚して3年がたち、職場で仲良く話せる人ができ、それから付き合いに発展した。
「なんだかなー」
やっぱり私って男運ないんだろうな。
会議はもっぱら、リモート会議。
先月から辰巳が別の部になったので、リモート会議で一緒になるのはなくなった。
「では、進捗と共有部分等なにかありましたら」
と、話がはじまり各々が話はじめる。
「あっ、そうだ。真中さん、今週1度出勤お願いします。真中さんの使ってるパソコンのレンタル期限が切れるので交換時期になるので」
「あっ、そうなんですか。了解です」
会社行くなんて久しぶりだなー、半年くらい行ってないかも。
そして出勤すると
「えー、地味女からだから簡単だったよ」
「やだー!そんなこと言ったら失礼だよ」
「だってぇー、本当のことだもん!バツイチらしいし、それなら私のほうがいいでしょう」
休憩エリアの横を通ったときに声が聞こえた。
津田綾音!
ってことは、私のことを言ってるのか
こんなところで言わなくっても…
「しかも、美人でもないしさー、あーこれならすぐ取れるわ!って思った」
「やだぁー!ほんと失礼だよ」
失礼だよって言ってる割には楽しそうに話してるし
「あの人中途でしょ?前の会社は旦那がいて逃げたとか!?だったらウケるわ!」
…
な、なんなのよ!もう!!流石にもう言い返そうとして行こうとしたとき
「君たち、そういう話はここでするものじゃないでしょ?他の人にも聞こえてるけど、いい気分しないんじゃないかな?」
数人いたけど、少し白い目で見ていた。
そして周りを見渡してたらしく
「あっ」
私と目があった。
「まだ学生気分?それなら社会人としてもう少し考えたほうがいいと思うけど」
と言うと、そそくさと休憩エリアからいなくなった。
男性が言ってくれたことで、私は言わずにすんだが、なんでこんな子にとられたんだか…、怒りが収まらなかった。
注意してくれた男性に会釈だけして、自分の部署に向かった。
すでに次のノートパソコンは準備されていて、データの移動やら、インストールし直しなどで1日かかりそう。
「真中さん、お昼でもいかない?」
同じ部の課長が声をかけてくれてご一緒にランチをした。
「ほんと、在宅勤務の人は合わないからな。久しぶりだねー」
「はい。」
「仕事はしっかりやってくれてるし、真中さんは評価高いんだよ」
「え?」
それはないでしょう!と思ったが、そう言ってくれてるので
「そうなんですか。まだまだ全然ですがお役に立てるようがんばります」
と話してたところに
「あ、お疲れ様です」
課長に向かって言う男性。同じ会社の人なんだろう。
…あれ!?この人さっき津田を注意した男性だ
「あ、あの、すいません。今の方って?」
「あー、彼は小早川君って言って、最近本社にきたんだよ。ずっと海外勤務だったらしい。」
「そうなんですか」
海外支社はあるけど、それって親会社じゃなかったけ?
眼鏡をかけ、スマートで背も高い。真面目そうな顔をしてるけど、かなりととのってるから、眼鏡好き女子には人気がある感じもするが。
そんなことを少し考えてたときにご飯を食べ終わり、会社に戻った。
そんなときに
「ちょっと、落ち着いたら話したいことあるんだが」
今度は部長に声がかかった。
「はい」
なんだろ!?
「実は新規の部署を立ち上げることになってね。その部署に真中さんが行ってもらいたいんだが」
「…私ですか?」
「ああ、新規部署で部長をする人が真中さんをほしいと言ってね」
「えっ!?」
なんでまた…
「どうかね?」
ってか、この流れで断ることが出来るんだろうか?
とりあえずその新規部署とはどんな部署かを聞くことにした。
現在の部署は店頭販売が多いインテリアのデザインだが、新しい部署は企業用ということのようだ。
例えばモデルルームとか、展示場とかそういう企業からの依頼ということらしい。
「私でいいんですか?」
「是非って言ってる」
「そうですか、それなら是非お願いします」
その日は自宅に帰り、翌日新規部署の課長の顔合わせをリモートですると
「あっ」
あのときの人じゃん!!
えっと、小早川さんだっけ?
「よろしくお願い致します」
と言って頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。昨日もちょっと拝見してますよね?」
「あっ、はい。課長とランチをしたときと
…、あとは…」
言いづらそうにしてると
「まぁ、それはいいとして、この部署は立ち上がったばかりですので、私と真中さんとあと別で3名います。現在はお試し期間といったところでしょうか。今回の仕事で起動にのったら人員は増えるということです。」
「はい」
「がんばりましょう」
「はい、よろしくお願い致します」
少人数で始まった部署。だけどやりがいはあった。
みんな自分の意見や考えをガンガン言い、いいものを作ろうとしている。私達の結果でその部署が存続になるかどうかだもんな。気合いは入るよな。
「真中」
「はい!」
「今やってるのついまでできる?サンプルとして出したい」
「はい。今日中には仕上がるかと」
「じゃたのむ。それと、さっきのメールの件だが、真中がやるんじゃなく、佐伯に任せてみろ!アイツもそれなりに実績がある。1人で抱え込むな」
「…はい」
毎日的確な指示と作業に気合いが入る。
他のメンバーとも仕事の連携をしつつ、お願いしたい仕事をふり質問等に対応。
客先のリモート打ち合わせには私も出席することになり
「なるほど…、なかなか色合いがいいですね。こちらでも検討してみます。」
「まだサンプルですので、ご意見があれば申していただければ」
いい感じで話は進み、打ち合わせ終了。
「真中」
「はい」
「明後日、ちょっと一緒に同行してくれないか?」
「えっ?」
「気になった展示会があるんだ」
「わかりました」
在宅ばかりなので、展示会に行くなんて初めてだ。
「凄いですね」
一代イベントのような凄さ。こんな大きな展示会だったとは。
凄い勉強になるな。考え付かなかったものもあったりと、色んな意味で刺激的だった。
!?
うそ!
…まぁ、前の会社も展示してあるとはかいてたからな。
それにしてもまさか元夫がいるなんて。
向こうも気づいたのか、チラチラみてる。
部長はそんなこと知らないから前の会社の展示ブースに入り
「なんだか、真中に似てるな」
と言った。
「!?」
よく見ると本当だ。私がデザインしてるのと雰囲気が似てる。
「気になるものでもありましたでしょうか?この辺のデザインをしてるのは、あちらの佐野というものが担当してまして」
と、部長をみて説明をし 私をチラッとみると
「えっ!?真中さん?」
直属の上司ではなかったが、顔くらいはお互い知っている。
「山下部長、お久しぶりです」
「驚いた!こんなことろで会うなんて」
小早川部長がわたしをみて
「以前勤めてた会社なんです」
「あーなるほど」
と、あまり興味ない感じで返事された。
「…これは、佐野君がデザインしたんだが…」
山下部長は遠慮しつつ言った。
佐野というのは元夫の名前。
「…」
「…そうですか、失礼します」
私は一言言ってその場を離れた。
しばらく歩き、展示場の入り口まで戻っていた。
「…」
言葉が出ない!でもなんで…
「上司をほっぽといて、移動するとはたいしたもんだな」
あっ!!
「すいません!」
振り向いたら、部長が来ていた。
「…あれは、お前がデザインしてんじゃないのか?」
「!?」
「図星か」
「あのデザインした男とは仲よかったとか?」
「…元…夫です」
「なるほど」
何度もデザインを書いて、最終的に提出しなかったもの。見覚えのあるデザインだった。
私のを盗んだってこと!?
「ただ長くはない。いつかは盗んだデザインも底が尽きる。その時が潮時だ」
「…はい」
なんでそんなことしたんだろ?あの人だって同業者。自分のデザインもあるのに。
彼の独特なデザインが好きだったのに…
「怒りたいなら付いていくが」
「い、いえ。怒りよりも悲しい気持ちです。同じデザインをする人間としてこんなことしても解るはずなのに」
「…」
気持ちを切り替え、別の部にブースに移動し、色々と見ることができた。
ハプニングはあったものの来て勉強になったのでよかったのかもしれない。
展示場を出ると暗くなってた。
「飯でも食いにいくか」
そういって連れてこられたのは居酒屋だった。
「…愚痴くらいなら聞くぞ」
お互いビールを飲んで課長は一言言ってくれた。
「あ、い、いえ。盗まれる方もよくなかったと思ってますので」
「…」
しばらくはお互い無口だったが、3杯目くらいになったらつい
「私って地味じゃないですか。だから結婚とかそういうのしないと思ってたんです。まぁバツイチですけど」
「…地味…か」
「仕事は好きなんですけどね。そっち方面はなんか運がなくって」
「ふーん」
まぁ興味ないよな。こんな話。
「…そこまで地味か?」
「え!?」
「もう少し自信もて!」
励ましてくれてるのかな?
「部長はカッコいいから私みたいなブサイクなのとは違うから」
ビックリしたような顔で私をみる。
えっ?何か言った?
「あのな、俺は真中より10も離れてるおっさんだぞ!それに俺もバツイチ!カッコいいって言ってくれるのはありがたいが、もてないよ!」
「えっ?そうなんですか?」
バツイチも驚いたけど、10も離れてたんだ。しかもモテないって…
「モテる人は気づかないだけですよ」
と言いながら4杯目を飲み始めた。
「はぁ、結婚しても、やっと恋人が出来てもみんな取られて別れるし、一生独身のがいいのかなー」
「なんだ真中、結婚したいのか?」
「結婚はまだ解りませんが、でも一生1人は寂しいかもです」
「…なら、俺とはどうだ?」
「…?」
ん?なに?
頭がついていけず、部長をみる。
「…えっと」
「俺とはどうだ?と聞いてる」
「えっと、なにが…でしょう?」
「…寂しいんだろ?なら俺がいようか?と言ってる」
「あっ、えっと」
どうとらえたらいいんだ?
「部長、あの飲み仲間的な?ですか?」
「…飲み仲間に対してそんなこと言わんだろ?パートナーとしてだ」
「パートナー…」
「天然そうだから付け足すが、仕事のパートナーとかじゃないぞ」
…
…
「えええーーー!!」
な、なんで!?
なんでそうなるの?
「か、か、部長!正気ですか?」
「嘘言っても仕方ないだろ」
なんでそんな淡々と言えるのよ!
酔いがさめたよ!
「で、でも私元夫も最近できた恋人もみんな浮気されて…、そんな私と」
「俺がそうなるとでも?」
「いや、あの…そういうわけじゃ」
「なら、真中がいいなら問題ないんじゃないか」
「部長みたいに素敵な方となんて信じられないというか」
「じゃ、満更でもないってことか?」
「いや、あの…、解りません。考えたことないんで」
「じゃ、これから考えろ!」
そ、そんな…、急にいわれても
ってか、そもそも部長は私のこと…
…聞けない。
酒の勢い?ボランティア?どうみても私に好意が…とは見えないんだけど
それからもなんか曖昧になってお開きになった。
お酒の席だから気にしなくてもいいのかな?
などと思ってたら
「例のはしっかり考えてるか?」
リモートの打ち合わせで2人のときに言われ
「えっ?例のって」
「…あのな。どうせ酒の席だからとか思ってるだろ?」
…思ってました。
「とりあえず、考えろ!」
「は、はい」
考えると言っても、恋人になるってことだよね?(多分)
それから信じられないことに、部長からLINEがくる。
プライベートの連絡はこっちにすると書いてあった。
あまり部長と接点なかったし…、たしかにイケメンではあるけど…、どうせまたって思ってしまう。
それからしばらくして部署全員が1日だけ出社となった。
リモートでは顔はみてるけど、実際初めて会う人ばかりで改まって挨拶したりしていた。
「朱理華」
?
…辰巳?
お昼休みから帰ってくるときにバッタリ会ってしまった。
「久しぶり」
「…ええ」
な、なによ!?会っても声かけなくってもいいのに
「出社って今日だけ?」
「ええ、まぁ」
「なら、今日仕事終わったら飯でもいかね?」
はぁ!?なんでよ!!
「…意味解らないんだけど。彼女いるのになんなん?」
「あー、もう別れたよ」
「…そうなんだ」
「だからさ、飯いこーぜ」
「いえ、結構です!話すこともないし」
「俺さ、部長からデザインとかそういうの朱理華が凄いって聞いてさ、ちょっと色々聞きたいなーって。お前ってスゲーんだな」
「…」
なんなんだ?コイツ
「先輩なんだし、ご自分でお考えになられたらいかがですか?」
「そんなこと言わないでさー、付き合ってた仲じゃん!どうせ、彼氏いないんだろ?」
むかぁーーー!!
「すいません、戻るんで失礼します」
「じゃさ、何時に終わる?」
約束してないのに!!
「会うつもりないんで」
「なんだよー、いいじゃん!」
と、近くにくるんでうざがってると
「悪いが、先に約束してるんですよ!」
「えっ!?」
驚く辰巳。
振り返ると部長がいた。
「あ、あの」
部長とも約束はしてないが
「あー、仕事のことか」
と、言う辰巳に
「いえ、プライベートでです」
「!?」
「そういうわけだから、真中戻るぞ」
「はい、では」
と言って辰巳を残し、2人で歩き出した。
とりあえず、助かったーー!!
「恋人がいるとでも言っとけ!」
「…えっ?」
小声でそう聞こえたが、席まで戻ったので話しはそこで終わった。
仕事が終わると、滅多に集まらないので部署みんなで親睦会ということで居酒屋に行った。
2時間ほど色々はなし盛り上がったところで解散。
そして
「真中」
部長が私を呼び止め
「時間あるか?」
「…はい」
そのまま2人でバーに行った。
「この部署が出来てそろそろ半年になる。取引先とは少しずつ信頼関係を築き、この部署は大きくなることになった。ただその発表は来週なんで皆にはまだ言ってないがな」
「そうなんですか!よかったでたす」
「それでだ」
?
「俺は、元いたところに帰る」
「…えっ?」
「俺は元々親会社の社員だからな」
やっぱりそうだったんだ。海外からっておかしいと思ったんだよな。…てことは
「日本を離れるんですか?」
「そういうことになる」
部長との仕事はやりやすかった。できばもっと一緒にやりたかった。
「本当にいっちゃうんですか?」
「いってほしくないか?」
「…はい」
そういうと、少し嬉しそうな顔をして
「じゃ、一緒に来るか?」
「えっ!?」
一緒に!?
「お前が親会社に出向という手もある。俺が戻る部署は人手が足りん。どうだ?」
海外で自分の力を…?
あまりにも突然の話しにビックリはしたけど
「や、やりたいです!やってみたいです!!」
「…だが、もし来たら逃がさないがそこは覚悟してるのか?」
「に、逃がさない?」
「俺のものになる覚悟だ」
かぁーーと赤くなる。
「いい加減考えた答えを知りたいんだが。でも俺が居てほしいんだよな?」
意地悪そうに言う部長に
「…居て、ほしいです」
毎日LINEがくるのに意識しない方がおかしい。
「で、でも私何度もいいますが、捨てられてばかりなんで」
「そこは安心しろ!」
頭をポンと叩き
「明日は休みだし、うち来れるか?」
私は無言で頷いた。
それをみるとホッとした顔をされ
「じゃ、行くか」
その後、元夫から連絡があった。自分の考えたデザインだと上には通らない。だから助けてほしいと。
勿論断った。今後連絡がきたら弁護士を通すことを伝えた。
そして結局は、仕事が続けられず辞めたと聞いている。浮気した彼女ともどうなったか興味はない。
辰巳の方は1度だけ連絡がきたが、海外に出向すること、課長と恋愛関係になってることを話し今後はもう連絡はしないことを言った。もしまた来たら部長が間に入るといってくれた。
そして、その女、津田綾音は他の若い男と付き合ってると聞く。だがそれも辰巳と別れてから3人目。そのうち痛い目を見るだろう。
実家の親に部長が海外出向、今後のことも見据えてることを伝えてくれた。
バツイチだったんで、この先どうなるかと心配してた両親は大喜びしてる。
そしてようやく出発!
すでに部長は先に行ってるので、1人で日本をたつことになった。
誰も見送りはないけど、向こうには…
「やっときたな!」
「部長すいません、来てもらって」
空港の到着ロビーに迎えに来てくれたか課長。
「おい!そのいい加減部長はやめろ!」
「あっ、えっと…康也さん」
「朱理華、待ってたよ!」
地味と言われてた女は今すごく幸せです!
12
お気に入りに追加
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる