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エンディング(ルート分岐、お好きなキャラをお選びください)
エンディング【桐生END】
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「貴様の考えることは当方にはまったく理解できません、文月栞」
少し機嫌が悪そうに、桐生京介先輩はじろりと私――文月栞を睨む。
ここは夏休みのデートにも利用したスイーツバイキング。クリスマスということもあって、サンタクロースの形をした砂糖菓子が乗った小さなホールケーキもある。
――そう。私は桐生先輩をクリスマスデートに誘ったのだ。
「でも、先輩はデート、断らずに来てくれましたよね」
「それは……」
桐生先輩は答えに窮したのか、言い淀む。
「ほら、先輩の大好きないちごパフェですよ」
「馬鹿にしないでください。当方がモグ、こんなものにモグ、屈するわけが美味しい……」
即落ちである。
「貴様は何も分かっていません。緋月様を敵に回すということがどんなに恐ろしいことか……」
「パフェを頬張りながら言われても説得力ないんだよなあ」
先輩の頬についたクリームを指ですくってペロリと舐めると、先輩はピタッと動きを止める。表情に変化はないが、耳がほんのり赤い。
「――ッ、とにかく、当方は貴様を緋月様に献上します」
「は? なんでそうなるんですか」
「当方は神楽坂家の執事の息子です。いずれは執事を継ぐことになる。そのときには緋月様は神楽坂家の当主です。執事は当主にすべてを捧げなければいけません」
桐生先輩の所有物はすべて神楽坂先輩の所有物、というわけか。
「桐生先輩は、神楽坂先輩にも絶対に譲りたくないものとか、ないんですか?」
「……ありません。当方のすべては緋月様のものです」
しかしその台詞を言う時、桐生先輩の目は泳いでいた。
「――私は、桐生先輩が好きです」
「なッ!?」
キッパリと言い切る私に、先輩はおそらく初めて驚愕、のような表情を見せた。
「神楽坂邸に監禁された私を助けてくれたあの日から、多分好きでした」
「……やめてください。それは錯覚です」
いつも無表情な桐生先輩が、オロオロしているのがなんだかおかしくて、思わず笑みがこぼれる。
「先輩は私のこと、嫌いですか?」
「……その訊き方は卑怯です、文月栞」
今度は耳だけでなく、顔もわずかに赤らんでいるのが見て取れた。
「――わかりました。文月栞、パスポートはお持ちですか?」
「へ? パスポート? 家に帰ればあると思いますけど……」
おばあちゃんが認知症になる前に、一度だけ母とおばあちゃんと私の三人でヨーロッパへ旅行に行ったことがある。
しかし、なぜ今パスポートの話を……?
「即刻ここを出て、貴様の家に直行。パスポートを持って、海外へ出国します」
「え? ええ!? なんで!? 学校は!?」
「神楽坂グループの捜査網に引っかかれば、貴様はまた地下室に監禁されかねません。なぜなら、緋月様ではなく、当方に愛を誓ってしまった」
だから海外へ高飛びしなければいけない、と。
桐生先輩はそう説明した。
しかも神楽坂グループは世界中にネットワークを展開している。捜査網に引っかかる前に移動し続けなければならない。
そんな恐ろしい話を聞かされたら、とんでもなさすぎて笑えてきてしまう。
「笑っている場合ではありません、文月栞」
「だって、あまりに面白すぎて! 先輩との逃避行、悪くないですね」
「……当方に告白したこと、後悔しても知りませんよ」
「もし捕まっちゃったら、また助けに来てくださいね」
「やれやれ……」
急いでスイーツバイキングの店を出た私達は、ひとまず私のパスポートを探しに夜の道を走るのであった。
【桐生ルート END】
少し機嫌が悪そうに、桐生京介先輩はじろりと私――文月栞を睨む。
ここは夏休みのデートにも利用したスイーツバイキング。クリスマスということもあって、サンタクロースの形をした砂糖菓子が乗った小さなホールケーキもある。
――そう。私は桐生先輩をクリスマスデートに誘ったのだ。
「でも、先輩はデート、断らずに来てくれましたよね」
「それは……」
桐生先輩は答えに窮したのか、言い淀む。
「ほら、先輩の大好きないちごパフェですよ」
「馬鹿にしないでください。当方がモグ、こんなものにモグ、屈するわけが美味しい……」
即落ちである。
「貴様は何も分かっていません。緋月様を敵に回すということがどんなに恐ろしいことか……」
「パフェを頬張りながら言われても説得力ないんだよなあ」
先輩の頬についたクリームを指ですくってペロリと舐めると、先輩はピタッと動きを止める。表情に変化はないが、耳がほんのり赤い。
「――ッ、とにかく、当方は貴様を緋月様に献上します」
「は? なんでそうなるんですか」
「当方は神楽坂家の執事の息子です。いずれは執事を継ぐことになる。そのときには緋月様は神楽坂家の当主です。執事は当主にすべてを捧げなければいけません」
桐生先輩の所有物はすべて神楽坂先輩の所有物、というわけか。
「桐生先輩は、神楽坂先輩にも絶対に譲りたくないものとか、ないんですか?」
「……ありません。当方のすべては緋月様のものです」
しかしその台詞を言う時、桐生先輩の目は泳いでいた。
「――私は、桐生先輩が好きです」
「なッ!?」
キッパリと言い切る私に、先輩はおそらく初めて驚愕、のような表情を見せた。
「神楽坂邸に監禁された私を助けてくれたあの日から、多分好きでした」
「……やめてください。それは錯覚です」
いつも無表情な桐生先輩が、オロオロしているのがなんだかおかしくて、思わず笑みがこぼれる。
「先輩は私のこと、嫌いですか?」
「……その訊き方は卑怯です、文月栞」
今度は耳だけでなく、顔もわずかに赤らんでいるのが見て取れた。
「――わかりました。文月栞、パスポートはお持ちですか?」
「へ? パスポート? 家に帰ればあると思いますけど……」
おばあちゃんが認知症になる前に、一度だけ母とおばあちゃんと私の三人でヨーロッパへ旅行に行ったことがある。
しかし、なぜ今パスポートの話を……?
「即刻ここを出て、貴様の家に直行。パスポートを持って、海外へ出国します」
「え? ええ!? なんで!? 学校は!?」
「神楽坂グループの捜査網に引っかかれば、貴様はまた地下室に監禁されかねません。なぜなら、緋月様ではなく、当方に愛を誓ってしまった」
だから海外へ高飛びしなければいけない、と。
桐生先輩はそう説明した。
しかも神楽坂グループは世界中にネットワークを展開している。捜査網に引っかかる前に移動し続けなければならない。
そんな恐ろしい話を聞かされたら、とんでもなさすぎて笑えてきてしまう。
「笑っている場合ではありません、文月栞」
「だって、あまりに面白すぎて! 先輩との逃避行、悪くないですね」
「……当方に告白したこと、後悔しても知りませんよ」
「もし捕まっちゃったら、また助けに来てくださいね」
「やれやれ……」
急いでスイーツバイキングの店を出た私達は、ひとまず私のパスポートを探しに夜の道を走るのであった。
【桐生ルート END】
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