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3話 芽生え

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 血をポタポタと垂らし、手の痛みに耐えているとレオンが私の手を隠すようにジャケットをかけ私を抱き上げた。

 彼は今にも泣きそうな顔で私を見る。

「絶対に死なせないからな!」

 いや、手を怪我したくらいじゃ死にませんよ? そんな私の心の声など届くはずもなくレオンは医務室に向かって全力疾走で走り出した。
 
 レオンの顔は焦りに満ちていた。未だかつて彼がここまで焦った顔をしたことがあっただろうか。いや無い。
 俺様殿下のレオンはゲームの一枚絵スチルにデレ顔はあっても焦り顔の一枚絵スチルは一枚も無いほど焦りとは無縁の存在である。

 私のためにここまで焦る彼に私の心はトクンと音を立てた。

 レオンは私が落ちないようにしっかりとそれでいて優しく抱きかかえる。
 私は彼に今までにない優しさを感じレオンの顔を見ていられなり顔を背けた。

 脱いだばかりのジャケットから彼の温もりと薔薇の香りがほのかに漂い私の心を掻き乱す。

 好きになってはダメだ。好きになってはダメだ。好きになってはダメだ。

 心の中で何度も唱えるが胸の高鳴りが止まらない。これは恋? いいえ違うわ。私は彼がクラリスにする仕打ちを知っているもの、私が彼に恋をすることなど、愛することなど絶対にない。

 私は自分の想いを消すように気持ちをリセットさせた。冷えた頭で周囲を見るとレオンのすぐ後ろにラインハルトが私を心配そうに見ながらついてきていた。

 彼と目が合うと申し訳なさそうな顔で私を見て作り笑いをした。まるですぐさま抱きあげず運ぶ役を取られたことを後悔してるような表情だった。

 その表情に私はなにも言えず顔をレオンの腕で隠してしまった
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