上 下
46 / 47
第二章 新天地での活躍編

第45話 再び合流した仲間たち

しおりを挟む
 アグレイが死んだ以上ここに留まっていても仕方ない。死体をどうしようかとも思ったが下手に手を出さずこのまま残しておこう。
 
 これから出口を探して皆と合流後に経緯を話して来てもらえばいい。

 そもそも出口があるのだろうか? という疑問も湧くがアグレイが一緒に落ちてきた以上どこかに脱出できる道を確保していたと考えるべきだ。
 
 問題はその本人が物言わぬ死体となってしまったことだが――言ってももう仕方ないことだ。

 ただ出口を探さないといけないのは確か。出口を探す――

「そうだ。標識召喚・案内標識(出口)」

 召喚魔法を行使すると矢印の刻まれた長方形の標識が出現した。この標識は空中を浮遊したまま目的に設定した場所に矢印を向けてくれる。

 この矢印に沿って移動すれば出口にたどり着くはずだ。

 途中幾つか分岐があったが矢印に従って移動すると途中で壁にぶち当たった。だが矢印はその壁を示している。

 どうやらこの先に道があるようだ。おそらく何らかの仕掛けが施されているのだろうが僕にはその仕掛けを解くすべがない。

「標識召喚・非常口」

 だけど問題なかった。アグレイに閉じ込められた時にも使った標識だ。壁の先に通路が隠されているならこれで抜ける事が出来るはず。

 案の定扉を抜けた先に通路があり奥に登り坂が見えた。

「よし。少し急ごう。標識召喚・最低速度20km!」

 標識を召喚し掴んだ。定められた速度で標識と一緒に移動する。

「マークにゃ!」

 暫く進むと比較的平坦な道に出て更に進んだところでフェレスと再会出来た。
 
 フェレスは僕を見つけると嬉しそうに声を上げて駆け寄ってきてくれた。

 心配してくれてたんだ、そう思った直後フェレスが飛び込んできて柔らかい感触に包まれる。

「ふぇ~ん良かったにゃぁ」
「え、えっとフェレスその……」

 どうやら僕はフェレスに抱きしめられてるらしい。全身の温度が急上昇してきた。

 女の子から受ける抱擁は始めてだ。頭の中がぐるぐるして考えがまとまらない。

「あ、あの、その」
「え? ふにゃッ! つ、つい、にゃ!」

 フェレスが恥ずかしそうに飛び退いた。顔を紅くしてなんだか可愛いなって思えてしまった。
 
「ふむふむ。これはもしかしてお邪魔だったかい?」
 
 そこにブレブの声が届く。見ると今回ゴブリン討伐隊に参加した冒険者たちのリーダーであるブレブの姿があった。

 そういえばアグレイを僕と組ませたのはリーダーだったね。

 そしてブレブと一緒になって獣使いの少女アニン。筋骨隆々の拳闘士ナックル。女弓士のユニーに女魔法士のマジュ、戦槍士のキリン、女僧侶のエペと全員が勢ぞろいしていた。

 よかったアグレイ以外は誰一人欠けていないようだね。

 だけど僕とフェレスのやり取りを見てユニーとマジュはニヤニヤしてるんだよね。なんか恥ずかしいなぁ……。

 でも皆無事で本当に良かったよ。

 さて、それではここから脱出するとしようかな。いつまでもここにいるわけにもいかないからね。

 まずはこの洞窟で何が起きたのか皆に説明しないといけないだろう。話はそこからだね。




 僕たちは来た道を戻りながらこれまでの経緯を説明することにした。

 最初は半信半疑だった皆だったけど僕の話が進むにつれて徐々に信じていった。

「まさかゴブリンを操っていたのがアグレイだったとはな」

 ナックルがそう言って眉を顰めた。

「……魔物使いなんて存在が本当にいたなんて驚きです」
「ガウ……」

 獣使いのアニンもアグレイの正体には驚いていたよ。彼女の獣使いも似たような能力に思えるけど、話を聞いてみると魔物を使役するのは獣を使役するのとはわけが違うらしい。

「……しかし本当にこれだけのだいそれたことをアグレイが一人でやったのだろうか」

 キリンが神妙な面持ちで言った。比較的眺めの首を摩りながらなにやら思案している様子だった。

 まぁそれは僕も思ったことだけどね。アグレイは最後にあの妙な黒い狼に襲われて死んだわけだし。それに単独でこの規模の仕掛けを施すことは出来るだろうか。

「ねぇ、そのアグレイを殺したのってやっぱり何者かが関与してるんじゃない?  もしかしたらその何者かこそが今回の首謀者かもしれないわよ?」

 マジュの言葉で僕は考える。確かに言われてみればそんな気もする。僕たちを襲った謎の影――あれはどう考えても普通じゃなかった。狼の形はしていたけれど、最後に地面に溶け込むようにして消えてしまったし。

「どちらにしても一度ここを出てギルドに報告した方がいいだろうね」

 リーダーのブレブが言った。それもそうだ。ここに長居してもしょうがない。 

「そうと決まれば早くもどるにゃ」

 見るにフェレスも大分疲れてそうだね。そして僕たちは元来た道を引き返し始めた。今度は来た時よりもペースを上げてだ。なにせ一刻も早く帰りたいという気持ちが強かったからね。

 こうして無事に洞窟を出ることが出来た僕らは急ぎ足で街へと戻ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida
ファンタジー
(こちらの不手際で、コメント欄にネタバレ防止のロックがされていない感想がございます。 まだ本編を読まれておられない方でネタバレが気になる方は、コメント欄を先に読まれないようお願い致します。) 少年が育った村では、一人前の大人になるための通過儀礼があった。 それは、神から「スキル」を与えられること。 「神からのお告げ」を夢で受けた少年は、とうとう自分にもその番が回って来たと喜び、教会で成人の儀を、そしてスキル判定を行ってもらう。 少年が授かっていたスキルの名は「レアドロッパー」。 しかしあまりにも珍しいスキルだったらしく、辞典にもそのスキルの詳細が書かれていない。 レアスキルだったことに喜ぶ少年だったが、彼の親代わりである兄、タスラの表情は暗い。 その夜、タスラはとんでもない話を少年にし始めた。 「お前のそのスキルは、冒険者に向いていない」 「本国からの迎えが来る前に、逃げろ」 村で新たに成人になったものが出ると、教会から本国に手紙が送られ、数日中に迎えが来る。 スキル覚醒した者に冒険者としての資格を与え、ダンジョンを開拓したり、魔物から国を守ったりする仕事を与えるためだ。 少年も子供の頃から、国の一員として務めを果たし、冒険者として名を上げることを夢に見てきた。 しかし信頼する兄は、それを拒み、逃亡する国の反逆者になれという。 当然、少年は納得がいかない。 兄と言い争っていると、家の扉をノックする音が聞こえてくる。 「嘘だろ……成人の儀を行ったのは今日の朝のことだぞ……」 見たことのない剣幕で「隠れろ」とタスラに命令された少年は、しぶしぶ戸棚に身を隠す。 家の扉を蹴破るようにして入ってきたのは、本国から少年を迎えに来た役人。 少年の居場所を尋ねられたタスラは、「ここにはいない」「どこかへ行ってしまった」と繰り返す。 このままでは夢にまで見た冒険者になる資格を失い、逃亡者として国に指名手配を受けることになるのではと少年は恐れ、戸棚から姿を現す。 それを見て役人は、躊躇なく剣を抜き、タスラのことを斬る。 「少年よ、安心しなさい。彼は私たちの仕事を邪魔したから、ちょっと大人しくしておいてもらうだけだ。もちろん後で治療魔法をかけておくし、命まで奪いはしないよ」と役人は、少年に微笑んで言う。 「分かりました」と追従笑いを浮かべた少年の胸には、急速に、悪い予感が膨らむ。 そして彼の予感は当たった。 少年の人生は、地獄の日々に姿を変える。 全ては授かった希少スキル、「レアドロッパー」のせいで。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

両親が勇者と魔王だなんて知らない〜平民だからと理不尽に追放されましたが当然ざまぁします〜

コレゼン
ファンタジー
「ランス、おまえみたいな適なしの無能はこのパーティーから追放だ!」  仲間だと思っていたパーティーメンバー。  彼らはランスを仲間となどと思っていなかった。  ランスは二つの強力なスキルで、パーティーをサポートしてきた。  だがそんなランスのスキルに嫉妬したメンバーたちは洞窟で亡き者にしようとする。  追放されたランス。  奴隷だったハイエルフ少女のミミとパーティーを組み。  そして冒険者として、どんどん成りあがっていく。  その一方でランスを追放した元パーティー。  彼らはどんどん没落していった。  気づけはランス達は、元パーティーをはるかに凌駕していた。  そんな中、ある人物からランスは自身の強力なスキルが、勇者と魔王の固有のスキルであることを知らされる。 「え!? 俺の両親って勇者と魔王?」  ランスは様々な争いに次々と巻き込まれていくが――  その勇者と魔王の力とランス自身の才によって、周囲の度肝を抜く結果を引き起こしてゆくのであった。 ※新たに連載を開始しました。よければこちらもどうぞ!  魔王様は転生して追放される。今更戻ってきて欲しいといわれても、もう俺の昔の隷属たちは離してくれない。  https://www.alphapolis.co.jp/novel/980968044/481690134  (ページ下部にもリンクがあります)

処理中です...