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第二章 新天地での活躍編

第35話 発見したゴブリンロード

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「いたにゃ――」

 声を潜めフェレスがその先にいる何かがいることを伝えてくれた。

「多くのゴブリンやホブゴブリンがいるにゃ。そして中央に一際大きなゴブリンがいて椅子のように変形した岩に座っていたにゃ」
「――それはきっと間違いないな。ゴブリンロードの特徴に一致している」

 この時点でロードがいることはほぼ確定した。後はどう戦うかが大事となる。

「通常のゴブリンが数えるのも馬鹿らしくなるぐらいいるにゃ。後はホブゴブリンが十数体、ゴブリンシャーマンも同じぐらいいると見ていいと思うにゃ」

 フェレスが相手戦力を口にした。どことなくピリッとした空気が肌に伝わってくる。

「かなり多いな……これは何も考えず相手するわけにはいかないだろう」
「だからってここまで来て引き下がるなんてごめんだぜ。俺はもうゴブリン共を殴り倒したくてウズウズしてるんだ」

 ナックルが拳を打ち強気な発言を見せた。ただ、よく見ると額に汗が滲んでいた。

「……正直戦力差がありすぎる。十倍近くある数の差は個々の能力だけで覆すのは容易ではないだろう」

 キリンがそう言って難しい顔を見せた。ゴブリンロードが統率するゴブリンの数は圧倒的だ。

「……やはり一度戻ってギルドに応援要請したほうが良さそうな気も」
「確かに戦略的撤退も考慮して良い差ではありますね」

 アニンとエペも撤退がベストと考えているようだ。
 
「私はリーダーの判断に任せるよ」
「そうね。ブレブがリーダーなわけだし」

 ユニーとマジュは最終判断はリーダーのブレブに任せる意向なようだ。無難なところだとは思う。

「でも、ここまできたら戦ってやっつけたいにゃ!」

 フェレスは結構好戦的だ。ナックルと同じ考えにも思えるけどフェレスからはおそれや戸惑いを感じない。

 どちらにしてもここからどうするかはブレブの判断次第になると思う。

「全くこれは責任重大だな」

 ブレブが苦笑まじりに答えた。皆がブレブの判断を待っていてそのプレッシャーは相当な物だろう。

 こうして少し話している間にも頭の中では様々な作戦が駆け巡っているのかもしれない。

「それこそマーク。お前がどうにか出来るんじゃないのか? その標識ってのでよ。まぁこのゴブリン騒動を引き起こしているのがお前だったとしたら決して出来るとは言わないだろうがな」

 またか、と僕は思った。勿論この発言はアグレイのものである。

「またかにゃ……」

 フェレスも辟易といった顔を見せていた。ゴブリンロードを目の前にして疑われるとは僕も思わなかった。

 とは言え――この戦力差を覆す標識――僕は頭の中で標識の目録を思い浮かべ捲っていく。

「――フェレス。ゴブリンロードのいる部屋は他になにかあるかな? 地形とかわかると嬉しいけど」
「何か考えがあるにゃ! ならすぐに把握して教えるにゃ!」
「いや、見てからじゃないとなんともいえないんだけどね」

 フェレスが張り切って持ち前の感知力を活かして調べてくれた。

 まだ上手くいくとは言えないのだがとにかくフェレスの報告を待つ。

「こんな感じにゃ。部屋には他に穴が見えるけどにゃ、何となく先は行き止まりになってる気がするにゃ」
「ガウ」
「ウルもそう言ってますね」

 フェレスが地面に図を描いて教えてくれた。ゴブリンロードが鎮座する空間は円状になっていて広い。そしてそこを中心に幾つか細い横穴が伸びていた。

 ただそれはどれも行き止まりになってる、それがフェレスの考えだった。

「この細長い横穴に意味があるのか?」
 
 ナックルも不思議そうにしていた。そんな中、キリンがふむと顎を押さえフェレスが描いた図を指差す。

「恐らく侵入者がやってきたときに逃げようとしても出口がわからないようにしてるのだろう。ここから中心につながる穴と他の穴の大きさを統一していれば出口がどこか簡単には判別がつかない」
「そうか――特にゴブリンの数が多く乱戦になりかねない状況だ。その状況で撤退を決めたとしてもパッと見同じ穴なら判別がつかない」

 その上で先が突き当たっていたりしたら相手を容易に追い詰めることが出来るということか。

「罠も仕掛けられているかもしれないね」

 ユニーも一緒になって考えを述べた。ここにくるまでも途中に罠はあったのだから可能性はある。

「仕掛けるとしてもこの通路なら落とし穴程度かもな。追い詰めれば勝ちなんだからわざわざ複雑な罠を仕掛ける必要もねぇ」

 アグレイも私見を述べた。僕に対しては散々な言い方ではあるけどこういった話には納得できるものがある。

 とは言え、これは僕にとって悪く無い条件だ。

「――この地形なら僕に一つ考えがあります」

 そして僕は皆にそう切り出し、作戦内容を伝えることにした――
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