31 / 47
第二章 新天地での活躍編
第30話 統率されたゴブリン
しおりを挟む
最初のゴブリン三体は倒した。だけどこれで解決ではない。寧ろ本番はこれからだ。
「――不味いにゃ」
「グルルルルゥ」
三体のゴブリンを片付けた後、フェレスがその場で伏せて地面に耳を当てて呟いた。
ウルも唸り声を上げ周囲を警戒するように頭を巡らせている。
「……どうかしたのか?」
フェレスにキリンが聞いた。ウルの様子といい不穏な空気を感じ取ったのだろう。
「ゴブリンが一斉に動き出したにゃ。さっきの三体が倒されたことに気がついたと思うにゃ」
「何だって? おいおい近くにゴブリンの仲間がいたってことか?」
ナックルが眉を顰めフェレスに問い返した。フェレスとウルの腕に疑問でも抱いたのだろうか。
だが、話を聞くにゴブリン側に特殊な事情があったと見るべきだと思う。
「少なくともあたしの察せられる範囲にはいなかったにゃ」
「ガルゥ」
「ウルもそうだと言ってます」
フェレスが疑問に答えウルも追随するように唸った。アニンはウルの気持ちを言葉にして伝えてくれている。
「ゴブリンの方が気配を察する力に長けていたって事か」
「ゴブリンにそこまで高い索敵能力があるなんて信じられないけど……」
ユニーとマジュが怪訝そうに呟いた。ただ二人の考えと僕の考えは違う。
「こちらの気配を察したというよりも仲間の死が伝わるようになっていたんじゃないかな」
「あたしもそう思うにゃ。それにそもそもそこまで高い察知能力があったならあたし達の接近にはとっくに気づいていた筈にゃ」
僕が考えを示すとフェレスも同意してくれて理由も説明してくれた。僕は漠然とそう思っただけだが流石フェレスはしっかりしている。
「そうか。それが無いということはこちらの動きに気づいたのではなく仲間のゴブリンが死んだ事が引き金となって動き出したと見るのが自然だな」
ブレブも後者の考えに納得してくれたようだ。
「もう一つ可能性があるぜ。どこかの誰かが何らかの例えば召喚魔法を使って敢えて呼び寄せたとかな」
あからさまに僕を指した発言だ。だけどもう誰も聞く耳を持ってないようでまたかといった表情を見せている。
「とにかく急いで対処しなければいけません」
エベが真剣な目つきで言った。さっきより多くのゴブリンが近づいてきているならグズグズしている余裕はない。
「そうだな。それで数はどれぐらいなんだ?」
ブレブがフェレスに確認した。相手の数次第で配置や作戦も変化するはずだ。
「――十や二十じゃきかないにゃ。四十、いえ、五十以上は覚悟した方がいいにゃん」
「それは、流石に多いね……」
弓の点検をしながらユニーが呟いた。口調と表情には緊張感が漂っている。
「それだけの数に囲まれると厄介だ。ゴブリンがどう来るかわかるか?」
ブレブがフェレスに問いかけた。気配からゴブリンの動きが予測出来れば有利に働く。
「ゴブリンを倒した場所に集まってるのは確かだと思うにゃ。ただ気配から察するに一塊で動いているわけじゃないにゃ。幾つかのグループに分かれて網を放るみたいにやってきてるにゃ」
「ゴブリンにしては知識があるようだな」
フェレスの答えにキリンが頷いた。
「ある程度統率されてる印象もあるわね。やっぱりゴブリンロードが現れたと見るべきかしら」
「だとしたらここでやられてる場合でもないな」
マジュがロードについて言及しブレブも真剣な顔を見せる。確かに後の戦いを考えたらここでの被害は食い止めたい。
そこで僕は改めて今自分が使える標識を確認した。
「あ、これなら――」
「何かあったにゃん?」
リストを確認し一つの手を思いついて僕にフェレスが声を掛けてきた。
僕の表情とつぶやきから察してくれたのかもしれない。
「僕の魔法なら今やってきてるゴブリンに対処出来るかもしれない」
「――ほう。それなら是非どんな手か聞かせてもらいたいな」
キリンが興味深そうに聞いてきた。ただ説明は難しいか――
「信じてもらえるなら今から実践して見せますが任せてもらえますか?」
なのでその場のみんなから確認を取るように聞いてみた。気になるとしたらアグレイだけどどういう態度に出てくるか――
「――不味いにゃ」
「グルルルルゥ」
三体のゴブリンを片付けた後、フェレスがその場で伏せて地面に耳を当てて呟いた。
ウルも唸り声を上げ周囲を警戒するように頭を巡らせている。
「……どうかしたのか?」
フェレスにキリンが聞いた。ウルの様子といい不穏な空気を感じ取ったのだろう。
「ゴブリンが一斉に動き出したにゃ。さっきの三体が倒されたことに気がついたと思うにゃ」
「何だって? おいおい近くにゴブリンの仲間がいたってことか?」
ナックルが眉を顰めフェレスに問い返した。フェレスとウルの腕に疑問でも抱いたのだろうか。
だが、話を聞くにゴブリン側に特殊な事情があったと見るべきだと思う。
「少なくともあたしの察せられる範囲にはいなかったにゃ」
「ガルゥ」
「ウルもそうだと言ってます」
フェレスが疑問に答えウルも追随するように唸った。アニンはウルの気持ちを言葉にして伝えてくれている。
「ゴブリンの方が気配を察する力に長けていたって事か」
「ゴブリンにそこまで高い索敵能力があるなんて信じられないけど……」
ユニーとマジュが怪訝そうに呟いた。ただ二人の考えと僕の考えは違う。
「こちらの気配を察したというよりも仲間の死が伝わるようになっていたんじゃないかな」
「あたしもそう思うにゃ。それにそもそもそこまで高い察知能力があったならあたし達の接近にはとっくに気づいていた筈にゃ」
僕が考えを示すとフェレスも同意してくれて理由も説明してくれた。僕は漠然とそう思っただけだが流石フェレスはしっかりしている。
「そうか。それが無いということはこちらの動きに気づいたのではなく仲間のゴブリンが死んだ事が引き金となって動き出したと見るのが自然だな」
ブレブも後者の考えに納得してくれたようだ。
「もう一つ可能性があるぜ。どこかの誰かが何らかの例えば召喚魔法を使って敢えて呼び寄せたとかな」
あからさまに僕を指した発言だ。だけどもう誰も聞く耳を持ってないようでまたかといった表情を見せている。
「とにかく急いで対処しなければいけません」
エベが真剣な目つきで言った。さっきより多くのゴブリンが近づいてきているならグズグズしている余裕はない。
「そうだな。それで数はどれぐらいなんだ?」
ブレブがフェレスに確認した。相手の数次第で配置や作戦も変化するはずだ。
「――十や二十じゃきかないにゃ。四十、いえ、五十以上は覚悟した方がいいにゃん」
「それは、流石に多いね……」
弓の点検をしながらユニーが呟いた。口調と表情には緊張感が漂っている。
「それだけの数に囲まれると厄介だ。ゴブリンがどう来るかわかるか?」
ブレブがフェレスに問いかけた。気配からゴブリンの動きが予測出来れば有利に働く。
「ゴブリンを倒した場所に集まってるのは確かだと思うにゃ。ただ気配から察するに一塊で動いているわけじゃないにゃ。幾つかのグループに分かれて網を放るみたいにやってきてるにゃ」
「ゴブリンにしては知識があるようだな」
フェレスの答えにキリンが頷いた。
「ある程度統率されてる印象もあるわね。やっぱりゴブリンロードが現れたと見るべきかしら」
「だとしたらここでやられてる場合でもないな」
マジュがロードについて言及しブレブも真剣な顔を見せる。確かに後の戦いを考えたらここでの被害は食い止めたい。
そこで僕は改めて今自分が使える標識を確認した。
「あ、これなら――」
「何かあったにゃん?」
リストを確認し一つの手を思いついて僕にフェレスが声を掛けてきた。
僕の表情とつぶやきから察してくれたのかもしれない。
「僕の魔法なら今やってきてるゴブリンに対処出来るかもしれない」
「――ほう。それなら是非どんな手か聞かせてもらいたいな」
キリンが興味深そうに聞いてきた。ただ説明は難しいか――
「信じてもらえるなら今から実践して見せますが任せてもらえますか?」
なのでその場のみんなから確認を取るように聞いてみた。気になるとしたらアグレイだけどどういう態度に出てくるか――
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する
Saida
ファンタジー
(こちらの不手際で、コメント欄にネタバレ防止のロックがされていない感想がございます。
まだ本編を読まれておられない方でネタバレが気になる方は、コメント欄を先に読まれないようお願い致します。)
少年が育った村では、一人前の大人になるための通過儀礼があった。
それは、神から「スキル」を与えられること。
「神からのお告げ」を夢で受けた少年は、とうとう自分にもその番が回って来たと喜び、教会で成人の儀を、そしてスキル判定を行ってもらう。
少年が授かっていたスキルの名は「レアドロッパー」。
しかしあまりにも珍しいスキルだったらしく、辞典にもそのスキルの詳細が書かれていない。
レアスキルだったことに喜ぶ少年だったが、彼の親代わりである兄、タスラの表情は暗い。
その夜、タスラはとんでもない話を少年にし始めた。
「お前のそのスキルは、冒険者に向いていない」
「本国からの迎えが来る前に、逃げろ」
村で新たに成人になったものが出ると、教会から本国に手紙が送られ、数日中に迎えが来る。
スキル覚醒した者に冒険者としての資格を与え、ダンジョンを開拓したり、魔物から国を守ったりする仕事を与えるためだ。
少年も子供の頃から、国の一員として務めを果たし、冒険者として名を上げることを夢に見てきた。
しかし信頼する兄は、それを拒み、逃亡する国の反逆者になれという。
当然、少年は納得がいかない。
兄と言い争っていると、家の扉をノックする音が聞こえてくる。
「嘘だろ……成人の儀を行ったのは今日の朝のことだぞ……」
見たことのない剣幕で「隠れろ」とタスラに命令された少年は、しぶしぶ戸棚に身を隠す。
家の扉を蹴破るようにして入ってきたのは、本国から少年を迎えに来た役人。
少年の居場所を尋ねられたタスラは、「ここにはいない」「どこかへ行ってしまった」と繰り返す。
このままでは夢にまで見た冒険者になる資格を失い、逃亡者として国に指名手配を受けることになるのではと少年は恐れ、戸棚から姿を現す。
それを見て役人は、躊躇なく剣を抜き、タスラのことを斬る。
「少年よ、安心しなさい。彼は私たちの仕事を邪魔したから、ちょっと大人しくしておいてもらうだけだ。もちろん後で治療魔法をかけておくし、命まで奪いはしないよ」と役人は、少年に微笑んで言う。
「分かりました」と追従笑いを浮かべた少年の胸には、急速に、悪い予感が膨らむ。
そして彼の予感は当たった。
少年の人生は、地獄の日々に姿を変える。
全ては授かった希少スキル、「レアドロッパー」のせいで。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
両親が勇者と魔王だなんて知らない〜平民だからと理不尽に追放されましたが当然ざまぁします〜
コレゼン
ファンタジー
「ランス、おまえみたいな適なしの無能はこのパーティーから追放だ!」
仲間だと思っていたパーティーメンバー。
彼らはランスを仲間となどと思っていなかった。
ランスは二つの強力なスキルで、パーティーをサポートしてきた。
だがそんなランスのスキルに嫉妬したメンバーたちは洞窟で亡き者にしようとする。
追放されたランス。
奴隷だったハイエルフ少女のミミとパーティーを組み。
そして冒険者として、どんどん成りあがっていく。
その一方でランスを追放した元パーティー。
彼らはどんどん没落していった。
気づけはランス達は、元パーティーをはるかに凌駕していた。
そんな中、ある人物からランスは自身の強力なスキルが、勇者と魔王の固有のスキルであることを知らされる。
「え!? 俺の両親って勇者と魔王?」
ランスは様々な争いに次々と巻き込まれていくが――
その勇者と魔王の力とランス自身の才によって、周囲の度肝を抜く結果を引き起こしてゆくのであった。
※新たに連載を開始しました。よければこちらもどうぞ!
魔王様は転生して追放される。今更戻ってきて欲しいといわれても、もう俺の昔の隷属たちは離してくれない。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/980968044/481690134
(ページ下部にもリンクがあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる