上 下
21 / 47
第二章 新天地での活躍編

第20話 標識の組み合わせ

しおりを挟む
「ギャギャッ!」
「ギェッ!」
「ギャーギャー!」

 飛び出した僕に気がついたゴブリンが騒ぎ出した。武器を構えやる気に満ちているのもいる。

「標識召喚・一時停止!」
 
 そのゴブリンの正面に標識を立てる。止まれと記された標識を見た途端ゴブリンの動きがピタリと止まった。

 一時的に相手の動きを止めるのがこの標識の特徴だ。そしてこの時点で既に勝負は決まっていた。

「ソーサースロー!」

 フェレスの投げたブーメランが猛烈な勢いで回転し丸鋸のようになりゴブリン三体に襲いかかった。

 動きが止まってるゴブリンはこれを避ける事が出来ず胴体が切り株状態になり倒れた。当然もう生きてはいない。

「やったにゃ。マークのおかげで楽勝だったにゃ」
「はは。さてこっちは――」
 
 僕が標識を立てるとほぼ同時に音を確認しにいっていたゴブリンが戻ってきた。

「「「ギェギェギェェエエェエエッ!」」」
 
 かと思えば落とし穴に引っかかったり飛んできた丸太にあたったりして倒された。僕が【危険】の標識を立てたからだ。

 この標識の領域に踏み入れると何かしら危険なことが発生する。

「マークは流石にゃ」
「いやいやフェレスの技も凄かったよ」

 僕は様々な技術のあるフェレスに感心するばかりである。

「捕まってる母娘を助けるにゃ!」
「うん。そうだね」

 僕たちは木に縛り付けられていた二人を解放して上げた。

「うわーんママーママー!」
「あぁ――本当にありがとうございます。何とお礼を申し上げてよいか――」

 母娘からは涙ながらに感謝を述べられた。聞くところによるとやはり商人の家族だったようだ。荷を運んでいるところでゴブリンに見つかり護衛の冒険者が追い払ったかと思えば、深追いしてしまい罠に嵌ってしまったようだ。

「きっと倒せると思って油断したにゃ。ゴブリンのような魔物は倒すと報酬がもらえるから欲を出したんだと思うにゃ」

 フェレスがそう推測した。しかし報酬に目が眩んで死んでしまっては意味がない。その上護衛の任務まで失敗しているわけだし。

「あぁ、貴方……」
 
 残念ながら主人の方は手遅れだった。死体を目にして母親と娘が涙を流している。

 それを見届けた後、落ち着いた二人に少し待ってもらい僕たちはゴブリンの死体に冒険者証を翳して退治したことを登録した。その後、改めてフェレスが二人に話しかける。

「今とても悲しいのはわかるけどにゃ。ゴブリンは一匹みたらその十倍はいると思えと呼ばれるような魔物にゃ。急いでここを離れた方がいいにゃ」
「確かにそうですね。ですがどうやって……」

 母親がチラリと馬車と既に息絶えた馬を見た。当然だが馬車は馬がなければ本来役に立たない。

「――僕の魔法なら馬車があれば皆で移動できるかもしれない」
「え? それは一体――」
 
 不思議そうな顔をする母娘に先ず馬車に乗ってもらうよう伝えた。そのうえで外に散らばっていた物品を馬車に戻した。母娘の希望もあったので遺体も運ぶことにする。ただこれはそのまま荷代に乗せてもいい気分はしないだろうから荷物預かり所に預けさせてもらった。

「えっと今のは一体?」
「僕は召喚魔法師なのです。その力だと思ってください」

 この国では自分の力を隠すつもりはなかった。召喚師の里の連中も国を渡ってまでこれないからだ。

「乗りましたが一体どうやって?」
「お兄ちゃんが引くの?」
「う~ん近いかな。こうやってね標識召喚・最低時速10kmアンド標識召喚・最高時速80km!」

 二つの標識を同時召喚出来るようになりこれが可能となった。これにより最低時速と最高時速の間で速度を調整して移動できる。

 更にこれを馬車と関連付けることで馬車に乗ったままの高速移動が可能だ。御者台の上に乗り左右に標識をくっつけるようにして移動を開始する。

「す、凄い……」
「うわぁ~はっや~い」
「う~ん。こんなことも可能だなんてマークの魔法はやっぱりとんでもないにゃ」

 後ろからそんな声が聞こえてきた。僕自身まだまだ手探りなところがあるけど標識召喚は使いようによってはまだまだ可能性がありそうな気がする。

 これからも冒険者として依頼をこなしながら色々探っていこうと、そう思った――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

その科学は魔法をも凌駕する。

神部 大
ファンタジー
科学が進みすぎた日本の荒廃。 そんな中最後の希望として作られた時空転移プログラムを用い歴史を変える為に一人敵陣に乗り込んだフォースハッカーの戦闘要員、真。 だが転移した先は過去ではなく、とても地球上とは思えない魔物や魔法が蔓延る世界だった。 返る術もないまま真が選んだ道は、科学の力を持ちながらその世界でただ生き、死ぬ事。 持ちうる全ての超科学技術を駆使してそんな世界で魔法を凌駕しろ。

処理中です...