親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
上 下
57 / 126
第二章 冒険者登録編

第56話 父と母

しおりを挟む
 ダンジョンに戻った後、俺たちは動画を見ながら過ごした。とは言えもういい時間だしな。モコとラムも動画を見ながら寝てしまった。
 
 モコとラムを横にして俺もそろそろ寝ようかなと思っていたわけだが――そのタイミングでスマフォに着信があった。

 表示には風間かざま じんとある。このタイミングで来たか。俺は一旦外に出て対応する。

「はい、もしもし」
『おお出たか息子よ! どうだ? そっちでは無事やってるか?』
 
 ビデオ通話で来ていたから画面には親父の顔が映っていた。頭にウェスタンハット顔には眼鏡を掛けていて顎髭を蓄えている。髭は前から生えてはいたが久しぶりに見ると更に伸びている気がするな。

『ヤッホー~晴彦元気してる~?』
 
 割り込むように画面に割り込んできて陽気に声を掛けてきたのは俺の母である風間かざま 蕾花らいかだ。長く艷やかな黒髪からは衰えを全く感じさせない。しかし息子の俺が言うのも何だかとてもアラフィフとは思えないな。

 俺がまだ小学生だった時をピークに全く見た目が変わってない気がするぞ。そんな母は青いローブを纏っていて手には杖が握られていた。

「全く相変わらず仲がいいな」
『当然だ。俺たちはいつだってラブラブだからな』

 そう言って母の肩を抱き寄せる親父。何だか見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいには仲睦まじい。

『晴彦も元気そうで何よりだな。今も会社勤めを続けているのか?』
「え? あ、あぁ、まぁそんなところだな」
 
 思わずそう答えた。ついつい嘘を言ってしまったか。

『――晴彦。何かあったでしょう?』
「え!」

 母に言われドキッとした。嘘を見透かされたような気がしたからだ。

『ハハッ、母さんに嘘はつけないぞ晴彦~?』
「全く敵わないな。実は会社を辞めたんだ。でもこっちはこっちで上手くやってるから心配しないでいいよ」
『辞めたのか? そうかまぁ人生色々あるからな。俺も元々は会社員だったが今はこうやって愛しの蕾花と冒険者をやっているからな』
「はいはい、お熱いですね」

 思わず苦笑いしてしまう。でも、確かに親父も母も俺が小学生までは会社勤めだた。それが突然脱サラして冒険者をやるなんていい出したからな。

 まぁ俺も当時は冒険者という響きに憧れを抱いていたから、その決断を歓迎したんだけどな。

『なにか困ったことがあるなら言うのよ晴彦』

 そう言って画面の向こうの母が優しく笑った。困ったことか――あ、そういえば。

「一つ聞きたいんだけどさ。テイムってあるじゃん。あれってテイムした方はどうやって確認しているんだい?」
『何? お前もついに冒険者に興味を持ったのか!』
『やったわ! これで親子冒険者として活動出来るわね仁!』
「いやいや違う違う! ちょっとした話の中でそんな話題があったから気になっただけだよ!」

 勝手に盛り上がる親父と母にツッコんだ。もっとも実際は冒険者になってしまったんだがこの二人に言うと何をやるかわからないからな。まだ黙っておこう。

『何だそうなのか? ふむ。まぁどんな形であれテイムに成功すれば表示されたステータスにアイコンみたいのが出てきて次のページに移れる筈だぞ』

 親父がそう教えてくれた。アイコンか――後で確認してみよう。

「ところで二人は今どこにいるんだ?」
『おう! 今はエジプトに来ていてな。そこのダンジョンに挑んでいるんだが、時を止める吸血鬼が最下層にいるらしくてな』
『力も凄いらしくてね。重機ぐらいなら軽く持ち上げて突撃してくるぐらいの事はするらしいわ』

 またとんでもないの相手してるもんだなこの二人は――

 それから暫く雑談まじりに近況を報告しあい通話を終えることにした。

『じゃあな晴彦。こっちが落ち着いたらそっちに戻るからそしたら嫁の一人でも見せてくれよ』
「いやいや嫁どころか彼女もいないから!」
『え~そうなの? 仁に似て色男なのに勿体ない。私からいい人紹介しようか?』
「いやいいって」

 母にまで心配されてしまった。全くそんなことより自分たちのことを心配しろって。

 そして最後におやすみと伝えて通話を終えた。それにしても落ち着いたらか。冒険者になってから家を空けることが多かった二人だからな。それも何時になるかって話だ――
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...