上 下
46 / 81
第二章 冒険者登録編

第45話 ダンジョンを汚していた犯人

しおりを挟む
「とりあえず警察を呼んだ方がいい」
「う、うん。私が電話するね」

 そして秋月がスマフォを取り出した。このダンジョンの管理者は秋月だから通報するのは確かに彼女がいいのだろう。

『はい。いえここは放置ダンジョンなので危険は、それに勝手に入っているのも若者で……はい。わかりましたとにかく急いでください!』

 そこまで話して秋月が通話を終えたが、話を聞いてるとあまり良い結果じゃなさそうだ。

「どうだった?」
「それが、ダンジョン内での問題は警察の管轄外みたいで、冒険者ギルドが対処すべき案件だって。ただ、もうギルドは閉まっているから警察の方から緊急で連絡はしておくんだって。でもすぐ行けるかは対応できる冒険者次第って話で……」

 思わずため息が漏れた。本当こういうところはお役所仕事って感じがする。確かに本来ダンジョンは危険だしジョブストーンを装着していないとモンスターへの対処も難しいのかもしれない。とは言え秋月の言うようにここは放置ダンジョンだし相手は人間だ。

 だけど体制の問題でもあるし電話で対応してくれた相手に文句を言うのも違うか。向こうだって下手にそれで警官を向かわせては責任問題を問われる可能性もある。

「こうなると待っていても仕方ない。それに冒険者という意味なら俺がそうだしな」

「で、でも仮登録だよね?」

 そう言われてしまうとそうなんだが、だからといって、何時くるかわからない冒険者を待ち続けているわけにもいかないだろう。

「ワン――」
「ピキィ~」

 俺たちが話しているとモコがラムを抱えてやってきた。起こしちゃったか。それで異変に気がついて様子を見に来たのだろう。

「ごめんな。ちょっと問題があってね」

 そういいつつも俺はダンジョンの中を覗き込んだ。男が三人で女が一人か。しかしあいつら勝手に俺の物を――

「おいおい、しかもこんなところで畑なんて耕してるぜ」
「ダンジョンで野良仕事とかとんだお笑い草だな」
「ねぇねぇ、何か芽が出てるよ?」
「あん? 生意気だな。こんなものこうしてやるよ!」
「やめろ!」

 畑を荒らそうとしている連中を見て、いよいよ俺も黙っていられなくなった。飛び出して声を張り上げると連中の視線が俺に集まる。

「あん? 何だこのおっさん?」
「お――」

 お、落ちつけ俺。確かにこのぐらいの年齢の奴らからしたら、アラサーの俺なんておっさんとしか思えないだろう。

「もしかしてここで暮らしてたホームレスか?」
「ハハッ、なるほど。どうりで小汚いおっさんだと思ったぜ」
「誰が小汚いだ!」
  
 流石に腹が立った。大体さっき風呂に入ったばかりなんだからな。

「風間さんは小汚くなんてありません! そんなことを言う貴方たちの心の方が汚いです!」
「ワンワン!」
「ピキィ~!」

 秋月が俺に続いてダンジョンに入り言い返してくれた。モコもラムもそうだと言わんばかりに吠えている。

「何だゾロゾロと、うん? へぇ、そっちの子は結構いけてんじゃん」
「可愛いじゃんタイプかも」
「はぁ? 本気で言ってるの? あれ中学生ぐらいでしょ?」
「誰が中学生よ! これでも成人してるんだからね!」

 秋月がムキになって怒った。年下に見られるのはやっぱり嫌なんだな……。

「そんなことより、貴方たち勝手に入り込んで不法侵入よ!」
「ワンワン!」
「ピキィ~!」

 秋月がモコやラムと一緒に強く言い募った。侵入者の男女が顔を見合わせる。

「アハハハッ! 不法侵入だってよ!」
「そんなの関係ねぇだろうが」
「そうよ。ここは見捨てられた放置ダンジョンよ。好きに入り込んで何が悪いのよ」
「それよりあんたも一緒に楽しもうぜ。そんなムサイおっさんは放っておいてよ」

 こいつら散々好き勝手いいやがって。

「お前らなぁ。勝手に入っていいわけないだろうが。そもそもこのダンジョンを含めたこの山を管理しているのが彼女だ。管理者がダメだって言ってんだからダメに決まってるだろ」
「あん? 何だよおっさん、偉そうに」
「邪魔すんじゃねぇよ!」
「そうだそうだ! それにここはアタシらの遊び場なんだぞ。勝手に入ってくんなよ」

 だ、ダメだ。こいつら話が通じてない。

「貴方たちが何を言おうが今行った通りここを管理しているのは私なの。警察だって呼んだからもうすぐやってくるわよ」

 腕を組み秋月が言った。警察はさっきの話だとすぐにはこないわけだが、ハッタリもあるんだろうな。これで少しは大人しくなってくれたらいいが――
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト
ファンタジー
魔獣のスケッチは楽しい。小さい頃から魔獣をスケッチすることが好きだったリッカは、生まれた頃から見守ってくれていた神獣、黄龍から4体の小さな赤ちゃん神獣を任せられることになった。数多くの有能なテイマーを輩出しているリッカの家は8歳で最初の契約を結ぶのだが、そこでまた一波乱。神獣と共に成長したリッカはアカデミーへ入学することになり、その非凡性を発揮していくことになる。そして、小さな仲間たちと共に、さまざまな魔獣との出会いの旅が始まるのだった。 ☆第12回ファンタジー小説大賞に参加してます!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...