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第五章 転生忍者吸血鬼出現編
幕間 弟子入りしたいロイス 其の九
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私の目の前には倒れた冒険者とギルドマスターがいた。メラはアーマドボアの件で子どものアーマードボアを殺したという冒険者一行に制裁を加えた後、なぜかギルドマスターも爆破した。
ふっ飛ばされ天井に叩きつけられた後、床に頭から落っこちたギルドマスターは涙を流しながら立ち上がった。
眼帯した強面のギルドマスターが女の前で涙を流しているとか、初めて目にした者なら何が起きてるのか先ず理解できない状態だろうな。
「うぅ、何故私まで」
「だまりな! 元はと言えばあんたがしっかりルールを伝えてなかったのが原因だろうよ!」
「そ、それを言われると……ですがルールブックはしっかり渡しているしそれにも記載はあるんですよ~」
「冒険者がそんなルールブックにいちいち目を通すわけないだろう! ギルドマスターを長年やっててそんなこともわからないのかいこのすっとこどっこい!」
「ひぃ~……」
み、身も蓋もないな。ただ、何故か周囲の冒険者がカウンターに大慌てて並びだしてルールブックの貸し出しを求め始めた辺り、実際そのとおりなんだろうな。
「ふん。まぁでもね。ダンジョンが発見されて急に冒険者が増えて忙しくなりそのへんのことがおざなりになった気持ちもわかる――」
「そ、そうなんですよ! 本当ダンジョンが出来てからはてんてこ舞いで! だからついつい説明も省きがちになってしまい」
「と、いうと思ったら大間違いなんだよこの馬鹿!」
「ぐべぇえぇえ!」
メラがグーでギルドマスターを殴った。上から殴りつけた。鉄槌で殴られたようなとんでもない音が聞こえたぞ……しかも殴ると同時に爆発したし。
「いいかいあんたらもよく聞きな! この世界は人間だけが暮らしているわけじゃないんだ! 生きとし生けるもの全てが互いを尊重し敬意を払う、そういったことの積み重ねがあるからこそ今の世界があるんだよ! そこを勘違いした連中がいるようだからはっきり言っておくよ! 金輪際このあたりで無駄に命を奪うような真似は許さないよ! 子殺しなんて以ての外だ! 狩るなとはいわないさ。生物が生きるために命を奪うことは当然あるんだからね。だけどねこの連中みたいに力を誇示するためだけの殺生なんざ最低なことだ! 良く覚えておきな!」
フンッとメラが鼻息を荒くさせた。周囲の冒険者が押し黙る。
「……わかったなら返事ぐらいしな!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
そしてメラの全身から炎が吹き上がると、一斉に受付嬢やギルドマスターも含めて返事した。
そして――
「ゆ、許してくださーーーーい!」
「ごめんなさいぃぃいい! もうしませんからぁあぁあ!」
「おがぁあちゃぁああぁああん!」
今目の前でメラに制裁された冒険者連中が泣きわめいて助けを求めている。
首から下は地面に埋もれていて、目の前にはあのアーマードボアがいた。気絶した連中を連れてアーマードボアが暮らす場所まで戻ってきたのだ。
「約束だからね。この連中があんたの子を殺した犯人だよ。後はあんたの好きにしな」
「ブフゥウゥウゥゥウゥウウウ」
「ひいぃいぃいいぃいいいいい!」
アーマードボアの鼻息が荒い。ま、まさか本当に好きにさせるのか?
「ひ、ひいぃいこっちこないでぇええ!」
「謝るから! 二度としないからぁぁあ!」
「ママぁああぁあああぁあああ!」
しかし、あの中で一番偉そうだった奴が。何か一番情けないな。お母ちゃんとかママぁとか……
そしてゆっくりと近づいてきたアーマードボアだったが。
――シャァアアァ、ブリブリブリッ。
「へ? く、臭!」
「ひいぃい、鼻が曲がるぅうううう!」
「おばあちゃぁああぁああん!」
アーマードボアが連中に向けてその、小便やらうんちやらをぶっかけていた。そしてメラを見て鼻息を吹く。
「これでいいのかい?」
「ブモォ~」
「そうかい。お前ら良かったね。あんたらみたいな汚らしいのは食べる気もしないってさ」
そしてアーマードボアは森へと帰っていった。
その後は埋まった連中はそのままにして帰る。あいつらを助ける義理までないそうだ。埋めたのメラだけどな。
「し、いやメラ姉さんはきっとこうなることをわかっていたっす。アーマードボアはそもそも人は食わない生物っすからね」
チェストが道々そんなことを言っていた。つまり食べないから殺さないってことか……
動物でも出来ていることが人に出来ないなんて皮肉な話だ。そして、それは私もか……
「メラ、何故あんたが怒っていたかわかったよ」
「……何?」
「あんたは、私が食べもしないのに魔法の腕を見せるためだけに鳥を狩ったのが許せなかったんだな。だから私には弟子になる、いやそもそも魔法士を名乗る資格がないと言ったんだ。そんなことにも気づけないなんて、私はなんて馬鹿だったのか」
sるとチェストが私を振り向いて、微妙そうな面持ちで口を開いた。
「あんた……まだ気づいてなかったっすか?」
「――は?」
「いや、流石にそれにはもうとっくに気づいてると思ったっす」
「な、なな!」
こ、こいつ、私が殊勝になっているというのに、そんなあっさりと! やめろ! 可愛そうな物を見るような目を向けるな!
「フン。ま、それでも猿から人ぐらいにはなれたようだね」
そしてメラがそんなことをつぶやき前を進んだ。
全く手厳しいな。
そして小屋が見えてきた。最初はメラがてっきり私の才能に嫉妬していると勘違いしていたが違ったようだ。
きっと未熟な私に命の大切さを気付かさせる為、敢えて厳しいことを言ったのだろう。姉弟子として!
ならばその期待には答えないといけない。あの線が見えた。自分の過ちに気がついた今の私だからこそここを越える資格があるのだろう。そして今日から私の魔法士としての新たな人生がスタートし――
「その線を超えるなと言っただろうがぁああぁああぁあ!」
「えええぇええ! ぐぼらぁあぁあああぁあぁああ!」
私の顔面に衝撃が走った。爆破されたのだ。て、ちょっと待て! 何でだよ!
「待て待て! おかしいだろう! この流れなら、過ちに気がついた私を本格的に弟子として迎え入れる、明らかにそういう場面だろう!」
ガバっと上半身を起こしメラに抗議した。全く意味がわからないぞ!
「は? 何ふざけたこと言ってるんだい! 何で猿からようやくギリギリのギリ! で原始人になれてウホウホ浮かれてるような馬鹿を迎え入れなきゃいけないんだい! 調子に乗ってるんじゃないよ!」
え、えぇええぇええ……
作者より
本作の2巻がいよいよ本日発売されました!書籍ページでは表紙とキャラ紹介が見れますよ。そこにあのキャラの姿も!
挿絵にもしっかり登場してますので書籍版をどうぞよろしくお願い致します!
ふっ飛ばされ天井に叩きつけられた後、床に頭から落っこちたギルドマスターは涙を流しながら立ち上がった。
眼帯した強面のギルドマスターが女の前で涙を流しているとか、初めて目にした者なら何が起きてるのか先ず理解できない状態だろうな。
「うぅ、何故私まで」
「だまりな! 元はと言えばあんたがしっかりルールを伝えてなかったのが原因だろうよ!」
「そ、それを言われると……ですがルールブックはしっかり渡しているしそれにも記載はあるんですよ~」
「冒険者がそんなルールブックにいちいち目を通すわけないだろう! ギルドマスターを長年やっててそんなこともわからないのかいこのすっとこどっこい!」
「ひぃ~……」
み、身も蓋もないな。ただ、何故か周囲の冒険者がカウンターに大慌てて並びだしてルールブックの貸し出しを求め始めた辺り、実際そのとおりなんだろうな。
「ふん。まぁでもね。ダンジョンが発見されて急に冒険者が増えて忙しくなりそのへんのことがおざなりになった気持ちもわかる――」
「そ、そうなんですよ! 本当ダンジョンが出来てからはてんてこ舞いで! だからついつい説明も省きがちになってしまい」
「と、いうと思ったら大間違いなんだよこの馬鹿!」
「ぐべぇえぇえ!」
メラがグーでギルドマスターを殴った。上から殴りつけた。鉄槌で殴られたようなとんでもない音が聞こえたぞ……しかも殴ると同時に爆発したし。
「いいかいあんたらもよく聞きな! この世界は人間だけが暮らしているわけじゃないんだ! 生きとし生けるもの全てが互いを尊重し敬意を払う、そういったことの積み重ねがあるからこそ今の世界があるんだよ! そこを勘違いした連中がいるようだからはっきり言っておくよ! 金輪際このあたりで無駄に命を奪うような真似は許さないよ! 子殺しなんて以ての外だ! 狩るなとはいわないさ。生物が生きるために命を奪うことは当然あるんだからね。だけどねこの連中みたいに力を誇示するためだけの殺生なんざ最低なことだ! 良く覚えておきな!」
フンッとメラが鼻息を荒くさせた。周囲の冒険者が押し黙る。
「……わかったなら返事ぐらいしな!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
そしてメラの全身から炎が吹き上がると、一斉に受付嬢やギルドマスターも含めて返事した。
そして――
「ゆ、許してくださーーーーい!」
「ごめんなさいぃぃいい! もうしませんからぁあぁあ!」
「おがぁあちゃぁああぁああん!」
今目の前でメラに制裁された冒険者連中が泣きわめいて助けを求めている。
首から下は地面に埋もれていて、目の前にはあのアーマードボアがいた。気絶した連中を連れてアーマードボアが暮らす場所まで戻ってきたのだ。
「約束だからね。この連中があんたの子を殺した犯人だよ。後はあんたの好きにしな」
「ブフゥウゥウゥゥウゥウウウ」
「ひいぃいぃいいぃいいいいい!」
アーマードボアの鼻息が荒い。ま、まさか本当に好きにさせるのか?
「ひ、ひいぃいこっちこないでぇええ!」
「謝るから! 二度としないからぁぁあ!」
「ママぁああぁあああぁあああ!」
しかし、あの中で一番偉そうだった奴が。何か一番情けないな。お母ちゃんとかママぁとか……
そしてゆっくりと近づいてきたアーマードボアだったが。
――シャァアアァ、ブリブリブリッ。
「へ? く、臭!」
「ひいぃい、鼻が曲がるぅうううう!」
「おばあちゃぁああぁああん!」
アーマードボアが連中に向けてその、小便やらうんちやらをぶっかけていた。そしてメラを見て鼻息を吹く。
「これでいいのかい?」
「ブモォ~」
「そうかい。お前ら良かったね。あんたらみたいな汚らしいのは食べる気もしないってさ」
そしてアーマードボアは森へと帰っていった。
その後は埋まった連中はそのままにして帰る。あいつらを助ける義理までないそうだ。埋めたのメラだけどな。
「し、いやメラ姉さんはきっとこうなることをわかっていたっす。アーマードボアはそもそも人は食わない生物っすからね」
チェストが道々そんなことを言っていた。つまり食べないから殺さないってことか……
動物でも出来ていることが人に出来ないなんて皮肉な話だ。そして、それは私もか……
「メラ、何故あんたが怒っていたかわかったよ」
「……何?」
「あんたは、私が食べもしないのに魔法の腕を見せるためだけに鳥を狩ったのが許せなかったんだな。だから私には弟子になる、いやそもそも魔法士を名乗る資格がないと言ったんだ。そんなことにも気づけないなんて、私はなんて馬鹿だったのか」
sるとチェストが私を振り向いて、微妙そうな面持ちで口を開いた。
「あんた……まだ気づいてなかったっすか?」
「――は?」
「いや、流石にそれにはもうとっくに気づいてると思ったっす」
「な、なな!」
こ、こいつ、私が殊勝になっているというのに、そんなあっさりと! やめろ! 可愛そうな物を見るような目を向けるな!
「フン。ま、それでも猿から人ぐらいにはなれたようだね」
そしてメラがそんなことをつぶやき前を進んだ。
全く手厳しいな。
そして小屋が見えてきた。最初はメラがてっきり私の才能に嫉妬していると勘違いしていたが違ったようだ。
きっと未熟な私に命の大切さを気付かさせる為、敢えて厳しいことを言ったのだろう。姉弟子として!
ならばその期待には答えないといけない。あの線が見えた。自分の過ちに気がついた今の私だからこそここを越える資格があるのだろう。そして今日から私の魔法士としての新たな人生がスタートし――
「その線を超えるなと言っただろうがぁああぁああぁあ!」
「えええぇええ! ぐぼらぁあぁあああぁあぁああ!」
私の顔面に衝撃が走った。爆破されたのだ。て、ちょっと待て! 何でだよ!
「待て待て! おかしいだろう! この流れなら、過ちに気がついた私を本格的に弟子として迎え入れる、明らかにそういう場面だろう!」
ガバっと上半身を起こしメラに抗議した。全く意味がわからないぞ!
「は? 何ふざけたこと言ってるんだい! 何で猿からようやくギリギリのギリ! で原始人になれてウホウホ浮かれてるような馬鹿を迎え入れなきゃいけないんだい! 調子に乗ってるんじゃないよ!」
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