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第五章 転生忍者吸血鬼出現編

幕間 弟子入りしたいロイス 其の五

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「くそ、酷い目にあった……」

 思わずお腹に手が行く。朝起きてから午前中はずっと腹の痛みに悩まされた。出すものは全て出し尽くした程だ。

 くそ、何がゲリの実だ! 何でそんな物がここに生えてるんだよ全く!

 それにしても、おかしい……てっきりメラは菜食主義者でだからこそ私が鳥を殺してしまったのが気に食わないのだと思ったが一体何が間違っていたんだ?

 木の枝の上で頭を悩ましていた私だが、ふと山道を歩いてくる人に気がついた。チェストではない。

 あれは、女の子! すぐに枝から飛び降りた。

「やぁお嬢さん。ここは一人で歩くには危険だよ」
「キャッ! え? 誰?」

 見たところウェーブの掛かった金髪が特徴的な少女だ。しかし、可憐だ――目もパッチリしているしなんだかいい匂いがする。

 こんな少女がまさかこんな山奥にやってくるとは。とにかく驚いているようだしまずは怪しまれないように自己紹介だな。

「ふっ、私はわけあってこのあたりで修行しているロイスと言ってね。流浪の魔法士だ」
「は、はぁ……」
「しかし、今もいったがここは本当に危険だ。妙なゴリラが出てくるし、そのゴリラを蹴り殺す原始人みたいのまでいる。怪しい連中も最近は多いからね」
「今まさに怪しい人が目の前にいるような……」
「うん? 何か言ったかね?」
「い、いえ……」
 
 ふむ、妙に顔が引きつっている気がする。は、さては、私というイケメン魔法士と出会えたことで緊張しているのかな?

 ふふ、私も罪な男だな。

「えっと、ご忠告ありがとうございます。それでは」
「いやいや、待ちたまえ。今もいったがここは危険だよ。一体こんな危険な山でどこに行くつもりなんだい?」
「は、はい。この先にいるメラク様に会いたくて……」
「なんとメラク様に!」

 驚いた。このような少女もメラク様に会いに来たのか。

「もしかしてメラク様の事を知っているのですか?」
「ふっ、知っているも何も私はメラク様の一番の弟子になろうとしているところだからね」
「え? でも弟子にはチェストくんがいますよね?」

 チェスト、くん、だと?

「えっと、君はあののうき、いや少年を知っているのかい?」
「何度か会ってますので」
「そ、そうなのか……」

 くっ、あんなゴリラを蹴りで追い返すような奴がなぜこんな可愛らしい子と!

「ま、まぁ私が言っているのは一番の弟子だからな。あくまで一番のだから順番は関係ないのだ」
「はぁ……」

 と、とにかくだ!

「ここからは危険だし、私が案内しよう。着いてきたまえ」
「えっと、そうですね。知り合いなら」

 そして私は少女を連れてあの小屋まで向かうことにした。だが――

「ところで君の名は?」
「あ、失礼しました。私はフローラです」

 ふっ、フローラかなんていい名前なのか。可憐だ。

「ところでフローラ」
「え? いきなり呼び捨て?」

 うん? 何かちょっと引き気味なような? あ、そうか私に名前を呼ばれて照れてしまったのか。

「何なら私のことも気兼ねなくロイスと呼んでくれてかまわないからな」
「は、はぁ……」

 ここは最初が肝心だ。お互い気兼ねなく呼び合うことでより親密になれる。

「しかし、メラク様に会いたいと言っていたが、今は留守にしているようだがな」
「え! そうなのですか!?」
「うむ。残念ながら今小屋にはそのチェストと……危険な女しかいない」
「え? 危険な女ですか?」
「うむ。いきなり人や鳥も関係なく燃やし尽くしてしまうという危険な女だ。悪鬼だなあれは」
「な! 大変じゃないですか! チェストくんは大丈夫なんですか!?」
「奴なら爆破されたぞ」
「爆破!? 何呑気にしてるんですか! とんでもないことじゃないですか!」
「ふむ、確かにとんでもないことだが、生きてるからな。全く頑丈な奴だ」
「あ、生きてるんですね良かった……いや良くない?」

 見るとフローラが小首をかしげていた。

 まぁ、頑丈なのがあいつの強みなんだろう。ますます武道家向きだろう。何で魔法士目指してるんだあいつは。

 そうこうしている内に小屋についた。

「あ、チェストくん!」
「フローラさんじゃないっすか」

 小屋の前にはチェストがいて薪割りしていた。なぜ薪割り……

「よかった危ない女の人に爆破されたって聞いて心配したんだよ!」
「危ない……あ、いやそれは」
「何だい、ドルマンの娘かい。一体どうしたんだい」

 チェストとフローラが何故かよくわからないが親しげに話していると、あのメラが出てきた。

 どうやら共通の知り合いらしいな。

「あれ? いるじゃないですかメ」
「ギロッ!」
「ひっ……」

 メラに気がついたフローラが声を上げようとすると、何故かメラが睨みを効かせた。な、何してるんだこいつ!

「フローラさん実は――」

 するとチェストが彼女に何やら耳打ちした。くっ、お前近づきすぎだろ! 

「おい! 何してるんだ! お前、ソーシャルディスタンス! 離れろ! ブボッ!」
「その線から入るなと言っただろうが!」

 チェストを止めようとした私の顔面に衝撃が、あ、あの女、まじで狙いやがった――
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