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幕間

第三百話 転生忍者、兄貴との決闘に決着

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 力を封印したおかげか、兄貴が俺を押しているような状況になった。

 ただ、俺はまだちょっと様子を見ただけでもある。今の俺の力と兄貴の差を確かめるつもりもあった。

「――ブラストランス!」

 兄貴の放った暴風の槍が俺に向けて突き進む。直線的な槍だが、周囲に突風を叩きつけながら進むため見た目以上に範囲は広そうだ。

 だけど、ま、問題ない。

「な、高い!」

 槍を避け、空高く跳躍する。兄貴が驚いている。
 勿論今の俺の力ではここまで高くはジャンプ出来ない。だが、磁力を操る魔法を取り入れれば可能だ。既に地面に陰と陽の磁力を振りまいている。

「だが空中なら逃げ場はないぞ! 繰焔弾リモートブレイジング!」
 
 兄貴があの火球を発生させた。同時に四つ俺に向けて放ち、操作する。

 だが、空中で俺はそれを避けていった。

「な、どうして空中を?」

 悪いが磁場を多く作っているから、陰と陽を切り替えることで空中を飛び回ることができる。

 そして兄貴のその魔法には欠点がある。自分の意思で操作するが故に杖を動かして火球を操っているわけで、その動きで大体の軌道は読めてしまうんだ。

「あ、当たらんだと?」
「悪いな、|忍法・雷光波《ライトニングショッ
ト》!」

 指に集中した電撃を直線状に放つ忍法だ。雷は速度が優れている。
 
「くっ、くそ!」

 兄貴は事前に用意した炎の幕を上手く利用して隠れながら避けていた。なるほど、炎のカーテンで狙いをつけにくくしたか。中々考えている、が――

「あ、あがぁああぁあああ!」
「あ、あたった!」
「そ、そんなロイス様!」

 先読み能力なら俺のほうが得意だ。確かに俺は力を封印して制限したがそれでも変えられない物、忍者として生きた経験がある。

 着地すると兄貴がまだ立ち上がってきた。制限しているとは言え、中々頑張るな。

「はぁ、まだ負けん! 狼牙風ウルファング々裂波ゲイルロード!」
「それは止めたほうがいい」
「え? があぁあぁあぁあぁあああ!」

 兄貴が魔法を放つ前に、俺の放った雷が兄貴を貫いた。

 風の狼を大量に放出する魔法。兄貴のオリジナルだったようで、自信も持っていたのだろう。だけど、その魔法は強力な分集中が必要であり、放つ時必ず兄貴の動きは止まる。

 それさえわかっていれば、後は魔法が来るタイミングに合わせてより速い、今使ったような雷などでカウンターを決めればいい。

 だから兄貴はどうしても当てたいなら、相手の視線を躱すなり、相手の意識が完全に自分から外れているときなどに狙うのが一番だ。

 もっとも俺がそれを許すことはないが。

「エアロハンマー!」
 
 それも上からくるとわかっていれば、動き回っていればまず当たらない。

「ファイヤーボール!」

 論外だ。単発で当てられるような魔法じゃない。

「はぁ、はぁ――」

 兄貴の息が切れていた。俺は兄貴の魔法に関して、もう大体読めている。俺にはもう通じない。

「……あいつ、まだ立ってる」
「あぁ、何か見直したぜ。あそこまで根性あるなんてな」
「うむ、ほんの少しだけ評価を上げてやってもいいぞ」
「ろ、ロイス様! 骨は私が拾いますよ!」
「いや、あの、命を奪うような真似は流石にジンさんもしないかと……」
「あんしんせい! 腕の一本や二本失っても治してやる!」
「ピィピィ♪」
「何か凄い会話を聞いた気がするんだが」
「ガウガウ」
「キキィ」
『ふむ、主殿の魔法をあれだけ喰らってもまだ諦めませんか。意外とやりますなぁ』
「ケーンケーン!」

 戦いの外側では結構盛り上がってるな。それにしても姫様、ちょっと回復するのに遠慮なさすぎですよ。父上も戸惑っているし。

「私は……」
「うん?」

 兄貴が杖を俺に向けてきた。そうだ、戦いはどちらかが動けなくなるまでだったな。

「私はまだ負けないぞジン! 狼牙風ウルファング々裂波ゲイルロード!」

 また、それか。残念だが兄貴、それはもう今の俺にだって通用しないんだ。

忍法・雷光波ライトニングショット!」
「な、がはぁあぁあぁああ!」

 兄貴の魔法が行使される前に、俺の雷がヒットした。兄貴がごろごろと転がり、そして痙攣してしまった。

「ろ、ロイス!」
 
 父上も駆け寄ろうとする。勿論死んではいないだろうが、治すなら早いほうがいいか。

 あんなこといっておいて、俺も身内には甘いか……姫様に声をかける。

「カグヤ、頼む兄貴を」
「私はまだ負けていないぞジン! フレイムトルネード!」

 な、兄貴まだ、しまった。今のは俺が油断、刹那、炎の竜巻が足元から発生し俺は飲み込まれた。

「な、ジン、ジーーーーン!」
「そんな、まさかジンが!?」
「……倒れた振りだった」
「そ、そんな。卑怯じゃ」
「違うぞデトラ。この戦いは動けなくなるまでがルールだ。それ以外は何があっても文句は言えない。卑怯ではないあいつは勝つために必死だったんだ」
「そ、そうですよ! プライドの高いロイス様が、やられた振りをしてまで掴んだ勝利です!」
「この一撃のために、温存しておいたということかこの魔法を……」
「何を呑気なことを言うておる! 流石にこれではジンもただでは済まんぞ!」
「ガ、ガウ!」
「キキィ!」
『ま、まさか主殿が!』
「ケーンケーン!」
「……勝ったのか私がジンに――」
忍法・疾風迅雷の術マッハライトニング!』

 悪いな兄貴。皆も俺が負けたかもと思ったかもだけど、やっぱり本気なら俺だって負けてやるわけにはいかないんだ。

「あ――」

 雷と化した俺は唖然となる兄貴の脇を駆け抜け、同時に発生した衝撃波で兄貴が空高く舞い上がった。

 錐揉み回転しながら地面に落下した兄貴は白目を向いていて、もう戦える状態でないのは明らかだ。

「はぁ~とは言え最後のはちょっとは効いたぜ兄貴。だが、俺の――勝ちだ!」
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