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第55話 仮面の男の毒

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 前回は逃げられたが今回は倒し切る必要があるとヒットは考えていた。連戦になるが、クララに回復されたし、彼女も魔力は薬で回復している。

 ヒット達の調子は悪くなかった。連中が何故猿酒などを狙っているか謎ではあるが、邪教と呼ばれる組織から来ているのだから、持っていかれても碌なことにならないのは間違いなさそうだ。

「まずはこれを喰らえ! 毒霧!」
「何?」

 すると毒使いの男が口から霧を吐き出した。仮面といっても口元は開いている。この狭い空間で毒をばらまかれては厄介であり。

「キャンセル」

 当然ヒットは直様霧をキャンセルする。だが直後仲間の2人が左右から迫る。

「テメェのわけのわからねぇスキルはわかってんだよ!」

 毒使いの男が叫んでいた。どうやら最初の毒霧はキャンセルされることが前提であり、本当の目的は仲間の挟撃だったようだ。

「させません!」

 メリッサの声が届く。矢が駆け抜け、迫る2人に一本ずつ命中するが、それはパリンっという音とともに弾かれた。

「支援魔法! ワンガードです!」

 クララが叫んだ。ワンガード、一度だけどんな攻撃でも弾いてしまう障壁を張る魔法だ。どうやらクララのような回復や支援系魔法の使い手がいるようだ。

 邪教なのに笑えない冗談だ、と顔を歪めるヒットだが――ヒットに迫った仮面2人が突如ピタリと動きを止めた。

「悪いなこっちにも切り札はある」

 ヒットは念の為、自分の左右に設置キャンセルを展開しておいた。ヒットのスキルにある程度当たりをつけているにしては毒霧の行使がストレートすぎたからだ。

 もしヒットを厄介な相手と捉えているなら何があっても先ずヒットの排除を考えるはず。そうなると霧とは別に何かある筈と考えていたのである。

「これで2人死んだ」

 ナイフを投擲し1人の首を貫き、鋼の剣で残った1人を切り飛ばした。チッという男の声が聞こえる。

「ブレイズキャノン!」

 だがその時、もう1人の仲間が魔法を行使。この魔法は中級の火魔法だ。威力も高い。しかも洞窟内だ。猿酒が狙いのくせになんてものを使う気だ、と心で毒突きつつ、ヒットはキャンセルを試みるが――発動しなかった。それで気がつく、相手はただ魔法名を叫んだだけだと。

「お前はそれに頼り過ぎなんだよ!」

 仮面の男が迫る。毒使いだ。右手にナイフを構え腕に紫色の蛇を模したオーラが纏わりついていた。

「行くぜ!」
  
 キャンセルは間に合わない。そう判断したヒットは盾を滑り込ませた。相手のナイフは盾で防ぐことが出来た。この男パワーはさほどでもない。

 だが、盾の表面を這うようにして毒蛇が蠢き、ヒットの喉に噛み付いた。

「クッ!」
「ヒット!」

 噛み付いてすぐ毒蛇は消えたが、ヒットの首に毒々しい色の痣が生じる。首がジンジンと傷んだ。全身がダルくなる。毒に掛かったことは間違いなかった。

「動きが鈍ったな。せっかくだ仲間も毒に掛かっておきな――」

 男が何本ものナイフを指に挟めて構えた。以前見た毒の塗布されたナイフを扇状に投げる武技に違いないとヒットは判断しキャンセル狙うが、目端に杖を構えた仲間の姿も見えた。

 さっきのフェイントがちらつくが、今度は本当に魔法を行使するつもりかもしれない。どうしようかと一瞬迷うも何本もの魔法の矢が杖を構えた男に迫った。一発は魔法の障壁で阻まれるも続く矢には対応できず矢を受けた男は崩れ落ちた。

 メリッサの連射だ。これで残った仲間は1人、恐らくはそいつが支援魔法を使っていたのだろう。メリッサをナイスと心のなかで称えつつ、男の武技をキャンセル。

「チッ」
「挟双剣!」
 
 挟み込むような斬撃。だがそれは障壁に阻まれた。

「甘いんだよ!」
「お前がな」

 直様カウンターを仕掛けてきた男だがあっさりとそれを回避。キャンセルは自分にも使える。障壁に阻まれ攻撃は跳ね返されたがその隙はキャンセル出来るのだ。

「昇天剣!」

 ヒットは相手を浮かせる為に武技を放つ。当たれば洞窟の天井にも当たりそこに飛翔剣で追撃すればかなりのダメージが期待できる、筈だったのだが、昇天剣が当たった直後男の体から飛び散った出血がヒットの顔に掛かり、思わず呻き声を上げた。

「ぐぅうぅうう! これは!」
「はは、俺はスキルで体液を毒化出来るのさ馬鹿め!」

 これで2回目の毒だ。より効果は上がるし状態異常はキャンセル出来ない。

 しかもその間に男の傷は回復してしまっている。残った1人は回復魔法も使えたようだ――
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