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第52話 猿の穴
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ヒット達は猿を追いかけ、そして塒と思われる洞窟を見つけた。
「この中に猿酒があるのだろうな」
「そして、美味しい果実の数々も(じゅるり)」
「クララ、よだれよだれ」
おっと、と袖で液体を拭うクララであるが、そんなことをずっと繰り返していた為か、袖も大分ベトベトになっていた。
「とにかく油断はしないように。中には戦猿が多く潜んでるかもしれないしな」
ヒットの言葉に2人がうなずき、そしていよいよ洞窟内に侵入する。猿が潜んでる洞窟にしては中はわりと広かった。
高さもあり、幅も3人で横並びになっても余裕があるほどだ。薄暗いが、それは徐々に目を慣らしていくことにする。
「キキィ!」
「むっ――」
暫く進むと天井から戦猿が落ちてきてヒットに攻撃を仕掛けてきた。天井に上手いことぶら下がって見張っていたようだ。猿だけに流石身軽である。
「キキィ! キキィ! キキィ!」
「キキィ! キキィ!」
「キャッキャ!」
戦猿は暗闇でもヒットの位置をしっかり見極め何匹かがその爪を使った連続攻撃を仕掛けてきた。中々に小癪な攻撃だが。
「キャンセル」
「キキッ!?」
盾で上手く受け止めつつ、途中でキャンセルを挟み、1匹の動きを止めた。残り2匹いたが、1匹は喉をメリッサの放った魔法の矢で射抜かれていた。
もう1匹の爪は最初から受けつつもりだった。軌道から防具に当たると踏んだからだ。そして実際戦猿の攻撃は銀狼の革鎧に当たるも爪を通すことはなかった。
「良い性能だ!」
「ギィ!」
改めて防具の性能に感嘆しつつ、鋼の剣で切りつけた。猿は地面に倒れ動かなくなり、そのままキャンセルを受けて戸惑っていた猿も切りつけ片付けた。
「やったねヒット」
「あぁ、この調子で進もう」
「もし怪我したら任してくださいね!」
ぐっと目に力を込めてクララが言った。ヒットが戦猿の攻撃を受けていたのを見て心配したのだろう。防具の性能を信じはしたが、防具のない箇所を狙われる可能性もある。
ただ戦いにおいてずっと無傷でいられることのほうが少ない。クララは今のところ直接戦闘には関わらないが、いざというときのために控えておいてもらった方が得策であり、それはそれで大事な役目なのである。
ヒット達は更に進む。途中何度も戦猿と遭遇したが、全て対処して奥へ奥へと進んでいった。その内にヒットはアルコール特有の匂いが漂ってきていることに気がつく。
「酒の匂いがする。目的地は近そうだ」
「うぅ、お酒より食べ物がいいのですが……」
「お酒の匂いが強いからクララの目的の物があるかはわからないが、恐らく収穫したものは一箇所に集めている可能性が高いだろうし、木の実なんかがあるならお酒の近くじゃないか?」
「急ぎましょうヒット!」
「凄く張り切りだしたね」
やはり食い意地がはっているなと思いつつ足をすすめる3人。すると妙に開けた空間に出た。そこで3人は予想打にしていなかった物を見つける。
「な、なんだあのデカい猿?」
そう、その空間には他の猿と比べて圧倒的に大きな猿が鎮座していた。そして巨大猿の背後には大きな樽が一つ置かれていた。巨大な猿が脇で抱えられる程度のサイズである。
「気づかれてはいないか……」
距離があり、隠れられそうな岩があったのでその陰に一旦身を潜めた。改めて岩陰から様子を窺う。巨大な猿は顔が赤かった。酔っ払っているように見える。かなり巨大な猿だ。ヒットがいた地球のゴリラよりも更に数倍はデカいと思われる。
そして巨大な猿の周りには多くの戦猿が控えていた。感覚的に巨大な猿からボス猿のような雰囲気を感じる。
「メリッサ、あれ鑑定できるか?」
「やってみます」
メリッサが鑑定を試みる。すると、出来ました、と猿のステータスを教えてくれた。
将軍猿
生命力150%体力150%魔力100%精神力100%
攻A++防B敏A++器A魔G護E
武術
酔猿拳術(5)
武技
見猿拳(5)聞か猿拳(5)言わ猿拳(5)酔猿連舞(5)猿回尾(5)
スキル
猿命処置(5)威圧(4)猿軍強化(5)
称号
戦猿の将、ボス猿
メリッサの説明に寄ると猿命処置の効果で生命力と体力が50%増加してるらしい。それだけでもかなり厄介ではある。
他にも酔えば酔うほど強くなるという酔拳のような武術も使ってくる。見ざる聞かざる言わざるの拳についてはそのまま、攻撃を喰らうとそれぞれの名前に関連したことが出来なくなる。
クララなどは言わ猿拳を受けると魔法が使えなくなるし、見猿で視力が効かなくなるとヒットやメリッサは面倒なことになる。聞か猿で聴覚を奪われると敵の接近に気づきにくくなる、当然どれか1つでも受けるのは芳しくない。
しかも将軍猿の猿軍強化によって戦猿も見猿、言わ猿、聞か猿のどれを覚えているようだ。熟練度は将軍猿ほどではないため、確実に効果が出るわけではないようだがやはり厄介だろう。
「とは言え、勝てない相手ではないと思う。マジックボムはまだあるしな」
「はい」
「ちゃんと持ってます」
マジックボムはそれぞれ1つずつ残していた。これでまずは先制攻撃を喰らわせ数を減らし後は一気にボス猿を攻略。単純ではあるがそれが一番効果的と判断。
2人がクララにライトプロテクトを掛けてもらい準備は整った。3人は岩陰から飛び出し直進。猿達が気づくが、その時にはヒット達が一斉にマジックボムを投げていた。
「よし、これで先ず――」
「「「キキキィ!」」」
だがその時、群れの中から3匹の猿が飛び出し、なんとヒット達が投げたマジックボムを空中でキャッチ。そのまま3人に投げ返してこようとする。
「キャッ!」
「わ、わわ、爆弾が!」
「キャンセル! キャンセル! キャンセル!」
メリッサとクララが慌てるが、ヒットは咄嗟に投げ返されたマジックボムをキャンセル。3つの爆弾はなにかに阻まれたようにそのまま真下に落下し――激しく爆発した。
「やったのかな?」
「いや、戻されるのは防いだが、手前すぎる。あれじゃあ効果は少ない」
「あ、本当、多少はやっつけたみたいだけど……」
「あまり有利な状況でもないか……」
そう、確かにマジックボムで倒した猿もいたが、予想より遥かに少なく、その上で完全に猿たちには気づかれてしまった。
中々厳しい戦いを連想させるが、ヒット達は覚悟を決め、将軍猿率いる猿軍団との戦いに挑む。
「この中に猿酒があるのだろうな」
「そして、美味しい果実の数々も(じゅるり)」
「クララ、よだれよだれ」
おっと、と袖で液体を拭うクララであるが、そんなことをずっと繰り返していた為か、袖も大分ベトベトになっていた。
「とにかく油断はしないように。中には戦猿が多く潜んでるかもしれないしな」
ヒットの言葉に2人がうなずき、そしていよいよ洞窟内に侵入する。猿が潜んでる洞窟にしては中はわりと広かった。
高さもあり、幅も3人で横並びになっても余裕があるほどだ。薄暗いが、それは徐々に目を慣らしていくことにする。
「キキィ!」
「むっ――」
暫く進むと天井から戦猿が落ちてきてヒットに攻撃を仕掛けてきた。天井に上手いことぶら下がって見張っていたようだ。猿だけに流石身軽である。
「キキィ! キキィ! キキィ!」
「キキィ! キキィ!」
「キャッキャ!」
戦猿は暗闇でもヒットの位置をしっかり見極め何匹かがその爪を使った連続攻撃を仕掛けてきた。中々に小癪な攻撃だが。
「キャンセル」
「キキッ!?」
盾で上手く受け止めつつ、途中でキャンセルを挟み、1匹の動きを止めた。残り2匹いたが、1匹は喉をメリッサの放った魔法の矢で射抜かれていた。
もう1匹の爪は最初から受けつつもりだった。軌道から防具に当たると踏んだからだ。そして実際戦猿の攻撃は銀狼の革鎧に当たるも爪を通すことはなかった。
「良い性能だ!」
「ギィ!」
改めて防具の性能に感嘆しつつ、鋼の剣で切りつけた。猿は地面に倒れ動かなくなり、そのままキャンセルを受けて戸惑っていた猿も切りつけ片付けた。
「やったねヒット」
「あぁ、この調子で進もう」
「もし怪我したら任してくださいね!」
ぐっと目に力を込めてクララが言った。ヒットが戦猿の攻撃を受けていたのを見て心配したのだろう。防具の性能を信じはしたが、防具のない箇所を狙われる可能性もある。
ただ戦いにおいてずっと無傷でいられることのほうが少ない。クララは今のところ直接戦闘には関わらないが、いざというときのために控えておいてもらった方が得策であり、それはそれで大事な役目なのである。
ヒット達は更に進む。途中何度も戦猿と遭遇したが、全て対処して奥へ奥へと進んでいった。その内にヒットはアルコール特有の匂いが漂ってきていることに気がつく。
「酒の匂いがする。目的地は近そうだ」
「うぅ、お酒より食べ物がいいのですが……」
「お酒の匂いが強いからクララの目的の物があるかはわからないが、恐らく収穫したものは一箇所に集めている可能性が高いだろうし、木の実なんかがあるならお酒の近くじゃないか?」
「急ぎましょうヒット!」
「凄く張り切りだしたね」
やはり食い意地がはっているなと思いつつ足をすすめる3人。すると妙に開けた空間に出た。そこで3人は予想打にしていなかった物を見つける。
「な、なんだあのデカい猿?」
そう、その空間には他の猿と比べて圧倒的に大きな猿が鎮座していた。そして巨大猿の背後には大きな樽が一つ置かれていた。巨大な猿が脇で抱えられる程度のサイズである。
「気づかれてはいないか……」
距離があり、隠れられそうな岩があったのでその陰に一旦身を潜めた。改めて岩陰から様子を窺う。巨大な猿は顔が赤かった。酔っ払っているように見える。かなり巨大な猿だ。ヒットがいた地球のゴリラよりも更に数倍はデカいと思われる。
そして巨大な猿の周りには多くの戦猿が控えていた。感覚的に巨大な猿からボス猿のような雰囲気を感じる。
「メリッサ、あれ鑑定できるか?」
「やってみます」
メリッサが鑑定を試みる。すると、出来ました、と猿のステータスを教えてくれた。
将軍猿
生命力150%体力150%魔力100%精神力100%
攻A++防B敏A++器A魔G護E
武術
酔猿拳術(5)
武技
見猿拳(5)聞か猿拳(5)言わ猿拳(5)酔猿連舞(5)猿回尾(5)
スキル
猿命処置(5)威圧(4)猿軍強化(5)
称号
戦猿の将、ボス猿
メリッサの説明に寄ると猿命処置の効果で生命力と体力が50%増加してるらしい。それだけでもかなり厄介ではある。
他にも酔えば酔うほど強くなるという酔拳のような武術も使ってくる。見ざる聞かざる言わざるの拳についてはそのまま、攻撃を喰らうとそれぞれの名前に関連したことが出来なくなる。
クララなどは言わ猿拳を受けると魔法が使えなくなるし、見猿で視力が効かなくなるとヒットやメリッサは面倒なことになる。聞か猿で聴覚を奪われると敵の接近に気づきにくくなる、当然どれか1つでも受けるのは芳しくない。
しかも将軍猿の猿軍強化によって戦猿も見猿、言わ猿、聞か猿のどれを覚えているようだ。熟練度は将軍猿ほどではないため、確実に効果が出るわけではないようだがやはり厄介だろう。
「とは言え、勝てない相手ではないと思う。マジックボムはまだあるしな」
「はい」
「ちゃんと持ってます」
マジックボムはそれぞれ1つずつ残していた。これでまずは先制攻撃を喰らわせ数を減らし後は一気にボス猿を攻略。単純ではあるがそれが一番効果的と判断。
2人がクララにライトプロテクトを掛けてもらい準備は整った。3人は岩陰から飛び出し直進。猿達が気づくが、その時にはヒット達が一斉にマジックボムを投げていた。
「よし、これで先ず――」
「「「キキキィ!」」」
だがその時、群れの中から3匹の猿が飛び出し、なんとヒット達が投げたマジックボムを空中でキャッチ。そのまま3人に投げ返してこようとする。
「キャッ!」
「わ、わわ、爆弾が!」
「キャンセル! キャンセル! キャンセル!」
メリッサとクララが慌てるが、ヒットは咄嗟に投げ返されたマジックボムをキャンセル。3つの爆弾はなにかに阻まれたようにそのまま真下に落下し――激しく爆発した。
「やったのかな?」
「いや、戻されるのは防いだが、手前すぎる。あれじゃあ効果は少ない」
「あ、本当、多少はやっつけたみたいだけど……」
「あまり有利な状況でもないか……」
そう、確かにマジックボムで倒した猿もいたが、予想より遥かに少なく、その上で完全に猿たちには気づかれてしまった。
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