40 / 68
第40話 罠
しおりを挟む
「まさか落とし穴に引っかかるなんてな……メリッサ大丈夫かい?」
「は、はい、その、少し恥ずかしいですが……」
「あ、ごめん」
ヒットはメリッサを地面に下ろした。穴に落ちた時、ヒットは咄嗟にメリッサを抱きかかえ、お姫様抱っこをするような状態になったのだ。
そのまま着地したわけだが、やはりこういう行為はあまり好ましく思われないのかもしれないと少し反省するヒットだが。
「そんな、謝らないでください。私を守ろうとしてくれたんだし、それに、普通に嬉しかったので……」
「メリッサ、声を潜めて」
「え?」
最後の言葉が耳に届く前に、ヒットは周囲の異様さに気がついた。そもそもこの落とし穴にしてもそれだけで2人にダメージを与えるようなものではなかった。
そこから推測するなら、落とし穴は下の階層に導く為の罠だったと考えるべきだ。尤も導くと言ってもいい意味ではなく、そして現れた連中からすれば良い餌を得るためのものなのだろう。
その証拠に大量の掛けてくる足音が聞こえてきている。それが近づいてくるのが見えた時にはもう遅かった。みるみるうちに大量のゴブリンが周囲に集まりだす。
「ヤバいな、どうやらモンスターハウス的な場所に導く罠だったようだ」
「え? モンスターハウス?」
モンスターハウスはヒットのいた世界のゲーム用語だがこの世界では通じなかったようだ。
ある特定の場所にモンスターここでは魔物となるがそういった敵が大量に配置されている状況のことだ。
この状況はまさにそれと言えるだろう。
「ゴブリン、ゴブリンシャーマン、それにホブゴブリン……全部で50体はいるな。しかも一際大きいのが奥にも」
「た、大変ヒット! あの大きいのはゴブリンロードだよ! こんなの、普通は大規模な討伐依頼クラスな筈……」
メリッサが鑑定してくれたようだ。ゴブリンロードはいわゆるゴブリンの親玉だ。ゴブリンの最上位で当然ホブゴブリンやシャーマンよりも遥かに手強い。
それはメリッサの様子からもよくわかった。声も震えているし瞳も小刻みに揺れていた。
「「「「「ギャギャッ! ギャッ!」」」」」
ゴブリン共がわめき出した。歓喜の声にも思えるが、非常に耳障りだ。
正直逃げられるものなら逃げ出したいが、数が多く逃げ道も完全に防がれている。ゴブリンには弓持ちもいる。そう簡単に逃げ出せる状態じゃないだろう。
そうなるとここにいるゴブリン共を倒すしかないということになるが多勢に無勢が過ぎる。ヒットにしてもメリッサにしても、大量の敵を相手にするような技や魔法を持ち合わせてはいない。
「ヒット……」
メリッサが不安そうにヒットに寄り添ってきた。思わずした行動なのだろう。多くのゴブリンの視線はメリッサに向けられていた。
おそらくヒットなど眼中にはなく、排除すべき害虫程度にしか思われていないだろう。この状況でもし破れた場合、メリッサがどうなるかなど火を見るより明らかだった。
ヒットはここでやられるわけにはいかない。かといって無策で突っ込んでも死に急ぐようなものだ。
ただ、ヒットには1つだけ考えがあった。というよりも現状を打破するにはこれしか考えられない。
「メリッサ、鑑定の結果を簡単に教えてもらっても?」
「は、はい」
ゴブリンロード
生命力100%体力100%魔力100%精神力100%
攻B++防B++敏D器E魔H護E
武術
斧術(5)
武技
パワーアックス(4)暴乱斧(3)
魔法
スキル
皮膚強化(4)威嚇の雄叫び(4)小鬼の統率(5)
称号
生殖狂い、荒ぶりしもの、子鬼の頭領
メリッサが教えてくれた結果がこれだった。
確かにロードだけあってかなりの強さだ。しかもスキルや称号の効果で周囲のゴブリンも強化されており統率も取れている。
だが、手も足も出ないと言える程ではないと考える。敏捷値に関して言えばヒットに分がある。ヒットの作戦を考えればこれは重要だ。
そしてこの手を狙うには1つだけ問題がある。それを思うと非常に難しい状況だが、四の五の言っている場合でもない。
「メリッサ。この戦いで勝利する方法が一つだけある。確実とは言えないが、しかしおそらくこれしか手がない。だが、そのためにはここで一旦メリッサから俺が離れないといけないし、メリッサには少しの間耐え抜いてもらう必要がある……」
そう、この作戦はヒットが単独で動かなければ成立しない。だが、それは逆に言えばメリッサがゴブリンの群れの真っ只中に1人取り残されるということでもある。
これは普通ならありえないとも言える。だが、レリックの店でヒットたちは色々薬も買っておいた。防御力を上げる薬があればメリッサでもそう簡単にやられることはないし、ミラージュドレスの効果で矢では狙われにくい。
尤もそれでも30秒持たすのが限度と言ったところかもしれない。ヒットは何が何でもそれまでに決着を付ける必要がある。あとはメリッサの意思だ。
「……やります、私耐えきってみせます!」
ヒットから体を離し、決意の篭った表情で頷いた。正直、この状況でメリッサに単独行動させるのはヒットとしても不安が残る。
だが、それしか方法がないのだ。ヒットはメリッサに向かって頷き。
「すぐに、決めてやる!」
そう言い残して地面を蹴った。メリッサはすぐさま防御力を強化する薬を服用する。
ゴブリンの荒振る声が聞こえた。邪魔者がいなくなったとメリッサに迫るのがわかる。
メリッサはマージクロスボウを連射してゴブリンに抗おうとしている。ウィンドカッターを装填し連射と組み合わせて手数を増やし弾幕で寄せ付けないようにしているようだ。
そしてヒットはというと、その目はゴブリンロードのみに向けられていた。
そうヒットの作戦は単純明快であった。真っ先に頭を倒すことである。何故ならこのゴブリンはすべてロードのスキルによって統率が取れている状態だ。
だが、逆に言えばロードが倒されればスキルの効果が切れて恐慌状態に陥るということでもある。
だからこそヒットはロードのみに集中する。そして確実に倒すために必要なことがある。ヒットは出ると同時にクリティカクテルを飲んでいた。
これによりヒットはもう他のゴブリンに攻撃はできない。元々ゴブリンを構う気はない。ゴブリンからヒットに向けられた攻撃は避けるか盾で受け止め、動線を塞ぎそうな相手はキャンセルする。
意識を集中し、少しのミスも許されない。ゴブリンの攻撃を掻い潜り、淀みなく疾駆した結果、目の前に迫るゴブリンロードの巨体。
『グォオオ――』
「キャンセル!」
「オ?」
ゴブリンロードが使おうとしたのは威嚇の雄叫びだ。熟練度4な上、実力差のある状態でこれを行使されては間違いなくヒットの意識が飛ぶ。
だから潰す。ヒットにとって僥倖だったのは、キャンセルしたことで相手が完全に無防備になったこと。
精神安定薬を一気飲みし、精神力を回復しつつヒットは闘気剣で攻撃力を上げ、そこから挟双剣を行使。様々な武技を覚えているが、一撃の威力が高いのは間違いなくこれだ。熟練度も3と最も高い。
ヒットの一撃は見事にゴブリンロードのガラ空きになった脇腹を挟み込んだ。相手の動きがヒットより鈍重だったのも幸いした。薬の効果でこの一撃はクリティカルが確定している。
「グォォオオォオオォオオォオ!」
敵のスキルではない。痛みからくる悲鳴だ。クリティカルヒットは相手の防御力も無視した上で更に大きなダメージを与える。
だが、これだけでは終わらない。
「キャンセル――からの挟双剣!」
「――ッ!?」
ゴブリンロードは何が起きたから理解出来てないだろう。おそらく二度目の強烈な痛みを覚えたはずである。あまりのことに声も出ないようだ。
「これで終わりじゃない、キャンセル!」
そう、しかしこの繰り返しはなおも続く。これはヒットがゲーム内で知った裏技、カウンターキャンセルをクリティカルに置き換えたものだ。
つまりクリティカルヒットが発動した直後にキャンセルすることで、クリティカルが発生したという事実はキャンセルされることになり、同時に次の攻撃がクリティカルになるという事実だけ残されているのである。
これを繰り返すことで、ゴブリンロードは連続でクリティカルヒットの挟双剣を喰らい続けることとなり――
「キャンセル挟双剣キャンセル挟双剣キャンセル挟双剣キャンセル――挟双剣!」
後はゴブリンロードにどれだけのクリティカルを決めたら倒れるかだったが――その効果は予想以上に大きかったようである。
とは言え、精神力的にはギリギリだったが――とにかくゴブリンロードは繰り返されるクリティカルヒットの乗ったキャンセル挟双剣に耐えきれず倒れ重苦しい音を耳に残した。
「よしメリッサ!」
ヒットが振り返る。メリッサはかなりギリギリに思えたが、なんとか近づいてきていたゴブリンを迎え撃っていた。
その上、ゴブリンロードが死んだことで、スキルの効果がなくなり、その反動でヒットが予想したとおりゴブリン共が恐慌状態に陥った。
多くのゴブリンが蜘蛛の子を散らすように逃げていき、ホブゴブリンやシャーマンなど一部残っていたのもいたが、動揺は隠しきれず、メリッサと協力し全員打ち倒す。
こうしてこの危機を乗り越えた2人。メリッサが安堵し、そしてどこか驚きに満ちた表情で口を開いた。
「し、信じられません……本当にゴブリンロードを倒したんですね」
「あぁ、これもレリックの薬のおかげだけどな――」
そう、これはクリティカクテルの効果によるところが大きい。この魔法薬がなければカウンターキャンセルに頼らざるを得なかったが、それだと与えるダメージが足りなかった可能性が高いのである。
とは言え、これはあくまで自分たちの生き残りを優先させた方法だ。全体としてみれば逃走したゴブリンの方が多い。
今後のことを考えたならギルドにもどって残存したゴブリンを討伐するよう求めるべきだろう。ヒットたちだけでは流石に今すぐそこまで乗り出す気にはなれない。
「……さて、問題はこれからだが――」
ヒットがそうつぶやく。問題、モンスターハウスは乗り切った。ゴブリンに関しては一旦は安心していいだろう。
では何が問題かと言えば、当然彼らを嵌めたあの連中のことであり。
「……驚いたな。ゴブリンがやたら落ち着かない様子で逃げ回っていたからよもやと思ったが、まさかまだ生きているなんてな」
そして、その大きな問題は、ヒットたちが考えるまでもなく、向こうから姿を見せてきたのだった――
「は、はい、その、少し恥ずかしいですが……」
「あ、ごめん」
ヒットはメリッサを地面に下ろした。穴に落ちた時、ヒットは咄嗟にメリッサを抱きかかえ、お姫様抱っこをするような状態になったのだ。
そのまま着地したわけだが、やはりこういう行為はあまり好ましく思われないのかもしれないと少し反省するヒットだが。
「そんな、謝らないでください。私を守ろうとしてくれたんだし、それに、普通に嬉しかったので……」
「メリッサ、声を潜めて」
「え?」
最後の言葉が耳に届く前に、ヒットは周囲の異様さに気がついた。そもそもこの落とし穴にしてもそれだけで2人にダメージを与えるようなものではなかった。
そこから推測するなら、落とし穴は下の階層に導く為の罠だったと考えるべきだ。尤も導くと言ってもいい意味ではなく、そして現れた連中からすれば良い餌を得るためのものなのだろう。
その証拠に大量の掛けてくる足音が聞こえてきている。それが近づいてくるのが見えた時にはもう遅かった。みるみるうちに大量のゴブリンが周囲に集まりだす。
「ヤバいな、どうやらモンスターハウス的な場所に導く罠だったようだ」
「え? モンスターハウス?」
モンスターハウスはヒットのいた世界のゲーム用語だがこの世界では通じなかったようだ。
ある特定の場所にモンスターここでは魔物となるがそういった敵が大量に配置されている状況のことだ。
この状況はまさにそれと言えるだろう。
「ゴブリン、ゴブリンシャーマン、それにホブゴブリン……全部で50体はいるな。しかも一際大きいのが奥にも」
「た、大変ヒット! あの大きいのはゴブリンロードだよ! こんなの、普通は大規模な討伐依頼クラスな筈……」
メリッサが鑑定してくれたようだ。ゴブリンロードはいわゆるゴブリンの親玉だ。ゴブリンの最上位で当然ホブゴブリンやシャーマンよりも遥かに手強い。
それはメリッサの様子からもよくわかった。声も震えているし瞳も小刻みに揺れていた。
「「「「「ギャギャッ! ギャッ!」」」」」
ゴブリン共がわめき出した。歓喜の声にも思えるが、非常に耳障りだ。
正直逃げられるものなら逃げ出したいが、数が多く逃げ道も完全に防がれている。ゴブリンには弓持ちもいる。そう簡単に逃げ出せる状態じゃないだろう。
そうなるとここにいるゴブリン共を倒すしかないということになるが多勢に無勢が過ぎる。ヒットにしてもメリッサにしても、大量の敵を相手にするような技や魔法を持ち合わせてはいない。
「ヒット……」
メリッサが不安そうにヒットに寄り添ってきた。思わずした行動なのだろう。多くのゴブリンの視線はメリッサに向けられていた。
おそらくヒットなど眼中にはなく、排除すべき害虫程度にしか思われていないだろう。この状況でもし破れた場合、メリッサがどうなるかなど火を見るより明らかだった。
ヒットはここでやられるわけにはいかない。かといって無策で突っ込んでも死に急ぐようなものだ。
ただ、ヒットには1つだけ考えがあった。というよりも現状を打破するにはこれしか考えられない。
「メリッサ、鑑定の結果を簡単に教えてもらっても?」
「は、はい」
ゴブリンロード
生命力100%体力100%魔力100%精神力100%
攻B++防B++敏D器E魔H護E
武術
斧術(5)
武技
パワーアックス(4)暴乱斧(3)
魔法
スキル
皮膚強化(4)威嚇の雄叫び(4)小鬼の統率(5)
称号
生殖狂い、荒ぶりしもの、子鬼の頭領
メリッサが教えてくれた結果がこれだった。
確かにロードだけあってかなりの強さだ。しかもスキルや称号の効果で周囲のゴブリンも強化されており統率も取れている。
だが、手も足も出ないと言える程ではないと考える。敏捷値に関して言えばヒットに分がある。ヒットの作戦を考えればこれは重要だ。
そしてこの手を狙うには1つだけ問題がある。それを思うと非常に難しい状況だが、四の五の言っている場合でもない。
「メリッサ。この戦いで勝利する方法が一つだけある。確実とは言えないが、しかしおそらくこれしか手がない。だが、そのためにはここで一旦メリッサから俺が離れないといけないし、メリッサには少しの間耐え抜いてもらう必要がある……」
そう、この作戦はヒットが単独で動かなければ成立しない。だが、それは逆に言えばメリッサがゴブリンの群れの真っ只中に1人取り残されるということでもある。
これは普通ならありえないとも言える。だが、レリックの店でヒットたちは色々薬も買っておいた。防御力を上げる薬があればメリッサでもそう簡単にやられることはないし、ミラージュドレスの効果で矢では狙われにくい。
尤もそれでも30秒持たすのが限度と言ったところかもしれない。ヒットは何が何でもそれまでに決着を付ける必要がある。あとはメリッサの意思だ。
「……やります、私耐えきってみせます!」
ヒットから体を離し、決意の篭った表情で頷いた。正直、この状況でメリッサに単独行動させるのはヒットとしても不安が残る。
だが、それしか方法がないのだ。ヒットはメリッサに向かって頷き。
「すぐに、決めてやる!」
そう言い残して地面を蹴った。メリッサはすぐさま防御力を強化する薬を服用する。
ゴブリンの荒振る声が聞こえた。邪魔者がいなくなったとメリッサに迫るのがわかる。
メリッサはマージクロスボウを連射してゴブリンに抗おうとしている。ウィンドカッターを装填し連射と組み合わせて手数を増やし弾幕で寄せ付けないようにしているようだ。
そしてヒットはというと、その目はゴブリンロードのみに向けられていた。
そうヒットの作戦は単純明快であった。真っ先に頭を倒すことである。何故ならこのゴブリンはすべてロードのスキルによって統率が取れている状態だ。
だが、逆に言えばロードが倒されればスキルの効果が切れて恐慌状態に陥るということでもある。
だからこそヒットはロードのみに集中する。そして確実に倒すために必要なことがある。ヒットは出ると同時にクリティカクテルを飲んでいた。
これによりヒットはもう他のゴブリンに攻撃はできない。元々ゴブリンを構う気はない。ゴブリンからヒットに向けられた攻撃は避けるか盾で受け止め、動線を塞ぎそうな相手はキャンセルする。
意識を集中し、少しのミスも許されない。ゴブリンの攻撃を掻い潜り、淀みなく疾駆した結果、目の前に迫るゴブリンロードの巨体。
『グォオオ――』
「キャンセル!」
「オ?」
ゴブリンロードが使おうとしたのは威嚇の雄叫びだ。熟練度4な上、実力差のある状態でこれを行使されては間違いなくヒットの意識が飛ぶ。
だから潰す。ヒットにとって僥倖だったのは、キャンセルしたことで相手が完全に無防備になったこと。
精神安定薬を一気飲みし、精神力を回復しつつヒットは闘気剣で攻撃力を上げ、そこから挟双剣を行使。様々な武技を覚えているが、一撃の威力が高いのは間違いなくこれだ。熟練度も3と最も高い。
ヒットの一撃は見事にゴブリンロードのガラ空きになった脇腹を挟み込んだ。相手の動きがヒットより鈍重だったのも幸いした。薬の効果でこの一撃はクリティカルが確定している。
「グォォオオォオオォオオォオ!」
敵のスキルではない。痛みからくる悲鳴だ。クリティカルヒットは相手の防御力も無視した上で更に大きなダメージを与える。
だが、これだけでは終わらない。
「キャンセル――からの挟双剣!」
「――ッ!?」
ゴブリンロードは何が起きたから理解出来てないだろう。おそらく二度目の強烈な痛みを覚えたはずである。あまりのことに声も出ないようだ。
「これで終わりじゃない、キャンセル!」
そう、しかしこの繰り返しはなおも続く。これはヒットがゲーム内で知った裏技、カウンターキャンセルをクリティカルに置き換えたものだ。
つまりクリティカルヒットが発動した直後にキャンセルすることで、クリティカルが発生したという事実はキャンセルされることになり、同時に次の攻撃がクリティカルになるという事実だけ残されているのである。
これを繰り返すことで、ゴブリンロードは連続でクリティカルヒットの挟双剣を喰らい続けることとなり――
「キャンセル挟双剣キャンセル挟双剣キャンセル挟双剣キャンセル――挟双剣!」
後はゴブリンロードにどれだけのクリティカルを決めたら倒れるかだったが――その効果は予想以上に大きかったようである。
とは言え、精神力的にはギリギリだったが――とにかくゴブリンロードは繰り返されるクリティカルヒットの乗ったキャンセル挟双剣に耐えきれず倒れ重苦しい音を耳に残した。
「よしメリッサ!」
ヒットが振り返る。メリッサはかなりギリギリに思えたが、なんとか近づいてきていたゴブリンを迎え撃っていた。
その上、ゴブリンロードが死んだことで、スキルの効果がなくなり、その反動でヒットが予想したとおりゴブリン共が恐慌状態に陥った。
多くのゴブリンが蜘蛛の子を散らすように逃げていき、ホブゴブリンやシャーマンなど一部残っていたのもいたが、動揺は隠しきれず、メリッサと協力し全員打ち倒す。
こうしてこの危機を乗り越えた2人。メリッサが安堵し、そしてどこか驚きに満ちた表情で口を開いた。
「し、信じられません……本当にゴブリンロードを倒したんですね」
「あぁ、これもレリックの薬のおかげだけどな――」
そう、これはクリティカクテルの効果によるところが大きい。この魔法薬がなければカウンターキャンセルに頼らざるを得なかったが、それだと与えるダメージが足りなかった可能性が高いのである。
とは言え、これはあくまで自分たちの生き残りを優先させた方法だ。全体としてみれば逃走したゴブリンの方が多い。
今後のことを考えたならギルドにもどって残存したゴブリンを討伐するよう求めるべきだろう。ヒットたちだけでは流石に今すぐそこまで乗り出す気にはなれない。
「……さて、問題はこれからだが――」
ヒットがそうつぶやく。問題、モンスターハウスは乗り切った。ゴブリンに関しては一旦は安心していいだろう。
では何が問題かと言えば、当然彼らを嵌めたあの連中のことであり。
「……驚いたな。ゴブリンがやたら落ち着かない様子で逃げ回っていたからよもやと思ったが、まさかまだ生きているなんてな」
そして、その大きな問題は、ヒットたちが考えるまでもなく、向こうから姿を見せてきたのだった――
0
お気に入りに追加
1,007
あなたにおすすめの小説
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました
うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。
そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。
魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。
その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。
魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。
手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。
いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。
孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる