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第20話 初めての依頼達成

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「これは一体どういう状況にゃん?」

 4人が町に戻り冒険者ギルドのカウンターに向かうと、そこにはニャムがいてジト目で対応してくれた。

 メリッサを見捨てたはずのパーティーの2人とヒット達が一緒にいるのを怪訝に思ったのだろう。

「実は……」

 なので一行はニャムにここまでの経緯を話して聞かせた。ダロガについてはネエとソウダナが全て話してくれた。
 
 ヒットもアルバトロンに襲われた下りはダロガがどう死んだかも含めて話して聞かせる。

「むぅ~……」

 腕を組んで唸るニャムは難しい顔をしていた。主に、アルバトロンと戦い倒したと聞いた辺りから眉を顰め眉間に皺を寄せていた。

「全く、とんでもないことにゃん」
「とんでもないと言うと、ダロガが死んだことか?」
「そっちはどうでもいいにゃん」

 ダロガのことはどうやら眼中にないようだ。碌でもない男ではあったが、この塩対応を見るにニャムからも大分嫌われていたようだ。

「とんでもないのはアルバトロンを倒したことにゃん。あの魔物は討伐ランクD、しかもD級パーティーが数組集まってなんとかという強さにゃん」
「確かに依頼書にもD級推奨とあったな」
 
 ヒットは以前見た依頼書の内容を思い出しながら言った。

「そうにゃん。でもそれをヒット達はG級とF級の混合、しかもたった4人で倒したにゃん。本来ありえないにゃん」
「もしかしてまずかったのか?」
「逆にゃん。大金星にゃん」

 どうやら快挙だったようだ。

「凄い事にゃん、ギルドマスターから勲章が授与されるレベルにゃん」
「そんな物があるのか?」
「聞いたこと無いにゃん」
「お前、さては結構適当だな?」
 
 どうもこの受付嬢はノリと勢いで生きている気がしてならないヒットでもある。猫だけに自由奔放といった雰囲気が感じられるのだ。

「それはひどいにゃん。でも凄いのは確かにゃん。これならほぼ間違いなくヒット達は昇格にゃん。ただ、ネエとソウダナは今回の件で素行に問題ありと評価される可能性が高いにゃん。降格にはならないと思うけど……」

 チラッと2人を見て、そこで言葉を切るニャムだ。ヒットやメリッサと違って昇格は難しいという意味なのだろう。

「それは、そうだな。本来は降格だって覚悟していたことだ」
「そうだねぇ。アルバトロンを倒したメンバーとして数えられただけでも御の字だもの」
「それは当然だ。前も言ったけどな」
「はい。私とヒットだけでは倒すのは厳しかったと思いますので」
「逆に俺たちだけだと逃げるのも難しかったと思うがな……」
「ねぇ? でもありがとう。2人のおかげで助かったし何かソウダナも良く喋るようになったし」
「にゃ~ニャムもそこに驚きにゃん」
 
 照れくさそうにしているソウダナ。どうやら他の人の前でもそうだな以外はあまり喋らないタイプだったようだ。

「とりあえず査定に入るにゃん。ヒット達は他にも色々持ってきてくれたし薬草採取の件もあるから少し待つにゃん」
「判った」

 そしてニャムが奥に引っ込み4人は空いている席に座って話をして待つことにした。

「ところで、この魔法の袋だけど合成って可能か?」

 ヒットは主にネエとソウダナに向かってその質問をした。実はゲームでは特定の道具を組み合わせて強化したり容量を増やしたりが出来る錬金術というものがあった。

 これはアルケミストというジョブでも可能だが、NPCがやっている店もあった。なのでもしかしたらこの世界でも可能かもしれないと思ったわけだが。

「あぁ、そうだな、錬金術の店にいけば可能だ」
「ねぇ、レリックの店がおすすめだよ。あそこなら合成でより強力な物に変えてくれるもの」

 それはいいと、ヒットはネエから店の詳しい場所を教わった。

「……後は、そうだな。ヒットは防具にも少し気を使った方がいいかもしれない」
「防具か……いい店はあるのかい?」
「装備品関係はここ冒険者ギルドを中心とした区画に店が集中している。その中でも唯一ドワーフが店主をしているのがストーン工房だ。鍛冶と兼用で手作りの武器や防具を売っている。あそこで経営している店主のストーンは気難しいがドワーフだけに腕と品はいい。その分値は張るがな」
 
 物がいいなら多少高くても仕方がない。今回の稼ぎが良ければ行ってみてもいいかもと思うヒットであった。

「査定が終わったにゃん」

 それからしばし歓談を続けているとニャムからお呼びが掛かった。

 カウンターに向かい、報酬額を聞く。先ずはネエとソウダナが受け取ったが、その金額の多さに随分と驚いていた。

「ヒットは更に多いにゃん。数が多いからリストを見るにゃん」

依頼達成分
アルバトロンの討伐報酬 12500ゴルド
薬草採取
セラピム草×80 4000ゴルド
アロセラ草×120 3600ゴルド
ライフ草×50 5000ゴルド
素材買い取り分
グラスホッパーの魔石×3 450ゴルド
ぱっくんラビットの魔石×5 150ゴルド
ホーンラビットの魔石×3 300ゴルド
イジワルモグラの魔石×3 150ゴルド
アルバトロンの魔石 5000ゴルド
ホーンラビットの角×3 210ゴルド
ホーンラビットの毛皮×3 240ゴルド
イジワルモグラの爪×3 90ゴルド
アルバトロンの羽 1500ゴルド
アルバトロンの肉×50kg 10000ゴルド
特別報酬 17310ゴルド
合計50000ゴルド

 これが提示された報酬だったわけだが。

「この特別報酬って何だ?」
「にゃん、アルバトロンの討伐は長期化するとギルドはみていたにゃん。でもヒット達のおかげで予定よりずっと早く片が付いたにゃん。そういった功績には特別報酬がつくことあるにゃん」
「……わりと金額が中途半端だな」
「そこはある程度受付で調整可能にゃん。ぴったりに鳴るよう調整したにゃん」

 だからぴったり50000ゴルドになったのか、とヒットは納得した。

「それにしても初任務ですごい稼ぎにゃん」
「はわわ、私、一度の依頼でこんな大金目にしたの初めてです!」

 メリッサも驚いていた。宿屋の一泊の値段が500ゴルドであることを考えると確かに結構な金額かもしれない。

「あと、昇格に関しては少し待つにゃん。明日までには結果が出ると思うにゃん」
「あぁ判った」
「にゃん、2人には期待しているにゃん。今後も宜しく頼むにゃん」

 どうやら今回の一件でヒット達の評価はかなり上がったようだ。そしてギルドを出た4人だが。

「2人はこれからどうするんだ?」
「そうだな、俺はネエと地道に頑張ろうと思う」
「そうだねぇ。ソウダナもわりと頼りになるとわかったしねぇ」

 ネエが笑いながらそう言うと、ソウダナが照れくさそうに頬を掻いた。

「それじゃあ、2人も頑張りなよ」
「また、何かの依頼で組むようなことがあったら宜しく頼む」

 そして2人と分かれ、見送った。色々トラブルもあったが、話してみれば根は決して悪い相手ではなかったなと思いつつ。

「さて、折角だから錬金術の店や教えてもらった工房に行ってみたいと思うけどどうかな?」
「賛成です! 報酬も手に入りましたしね!」

 確かに、これぐらい予算があれば多少はいい物が買えるかもしれない。

 新しい装備や合成に期待を馳せつつ、2人は町を歩くのだった――
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