上 下
106 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第105話 サムジャと試練のダンジョン 其の三

しおりを挟む
 それから別の、いかにもダンジョンといった造りの場所に移動した。洞窟ではなく石材を積んだような壁に囲まれた場所だ。

 進んでいくと今度は盾と剣を持ったスケルトンが襲いかかってきた。得物を持っている分ゾンビよりは強そうだ。その分ゾンビほどの数はいなかったがそれでも同時に十体ぐらいが襲いかかってきた。

 ただ骨だけに普通の攻撃でも破壊することはそこまで難しくなかった。ただ、魂力を込めていない攻撃だと一旦ばらばらになってもしばらくして復活してしまう。
 
 とは言え暫くは動けないようなので無理して倒す必要はないと判断した。

 ただ、このあたりから魔物以外にもやっかいなトラップがあちこちに仕掛けられていた。

 俺は魂の状態だからか矢が刺さっても落ちてきた巨大な髑髏に潰されても痛みこそなかったが、魂力は問答無用で減っていく。

 痛みがないのは寧ろやっかいでもあるな。単発ならなんとなく魂力が減ったとわかるが、他の魔物と戦っている時に矢を受けても気づかないこともある。

 それでもまだ対処は可能か。そのまま進むと変わった空間に出た。次々と床が動き穴が出来るのだ。穴に落ちたらどうなるか、いきなり終わりってことはないだろうが、慎重に行かざるを得ない。

 だが、パターンは何となくわかった。↑↑↓↓←→←→と、更に進む。今度は┛←┗↓┛→┗→と更に┗→┛↓┗←┛だな。

 こうして消える床の空間は抜けた。そこから先に進むと今度は半月状の巨大な刃が左右に振り子のように揺れている通路に来た。
 
 ……魂の身だから痛みはないんだろうが、それでもこんなのをまともに喰らうのはゾッとしないな。

 何より魂力がガッツリと持っていかれそうだ。上手くタイミングを見て潜り抜けていく。だが更に奥では崖のような状態で下が見えないぐらいの穴が広がっていた。動く床があり途中にはまたあの刃が天井から吊り下がっていてブンブンと揺れている。

 更にゴトンっと音がして後ろからゴロゴロと岩が転がってきた。殺る気満々すぎだろう。あれにあたったら穴に落ちてしまう。この穴、落ちたら流石にヤバいんだろうか――

『ウォオォン――ウォォオォオオォオン』

 ヤバい声が聞こえてる。間違いなく大丈夫ではないな。岩が迫る前に動く床に飛び移った。床はそのまま移動していき振り子のように動く刃の前までやってきた。このまま黙っていたら間違いなく当たる。当たらないようにするには正面に見える動く床に上手く飛び移らないと駄目みたいだ。

 まごまごしている場合じゃない。もうすぐそこに迫っている。俺は意を決して床を蹴った。半月状の刃は抜けた。だが、前の床が思ったより早く下がっていた。距離が足りない、がチャクラ操作で空中を蹴って何とか着地できた。

 ふう、チャクラ操作があって良かった。しかしこれで終わりじゃない。床が更に動いていくと今度は左右から火の玉が飛んできた。この床の上で避けろとでも言うつもりかよ。

「居合忍法・土返しの術!」

 狭い床ではあったが、忍法は発動した。めくれた土で火の玉を防ぐ。

 そしてやっと先の通路が見えてきた。あそこまでいければ、と思った矢先に骨が寄り集まって出来たような怪鳥が襲いかかってきた。

「狭い足場でも問答無用か。居合忍法・抜刀雷咆!」

 直進した雷が骨の怪鳥を貫いた。そして俺は反対端の通路に飛び移り移動を続ける。

 その先ではシルクハットを被り杖をもって骨の馬に跨る貴族風な骸骨が駆け回っていた。

「ヒャッハーーーーーー!」
「こいつ、喋るのか……」

 ヒャッハーヒャッハーうるさい骸骨だな。

「ヒャッハー! フレイムウィップ!」

 そして手に炎の鞭を現出させた。骨の癖にこいつ、火が平気なのか?

「ファイヤーバーン!」

 そして鞭を振ると同時に爆発が発生した。これもスキルか。鞭も速いが爆発も厄介だな。

「ファイヤーバーン! ファイヤーバーン!」

 更に鞭と爆発が続く。

「居合忍法・抜刀氷結弾!」

 火を扱うなら氷が効くかも知れないと思い、行使した。氷の弾丸が当たった腕が凍てつく。

 しっかり効いたか? と思ったらこいつあっさりと自分の腕を破壊した。

 そして腕はすぐに他のスケルトンのように戻っていく。時間を置かなくてもいいのかこいつは。

「フレイムボーン!」

 全身が発火し、その状態で突撃してきた。避けるが床に炎が残っていて、火に塗れたスケルトンが生まれて襲いかかってきた。

 面倒が更に面倒を呼んだか。

 そこでふと俺は思ったことを試す。

「居合忍法・抜刀水手裏剣!」

 抜刀と同時に生まれた水の手裏剣が火に塗れたスケルトンに命中し倒れていった。

 水の攻撃はしっかり効いたか。しかし予想通りそもそも魂力が物を言うここなら水場でなくても水の忍法の効果は発揮できる。

 よしこの調子で残ったこいつも。

「ファイヤーフルドーン!」

 だが、その瞬間俺の視界が炎一色に染まった。とんでもない範囲の爆発魔法だった。流石にこれは避けられない――
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

【完】真実をお届け♪※彷徨うインベントリ※~ミラクルマスターは、真実を伝えたい~

桜 鴬
ファンタジー
スキル無限収納は、別名を亜空間収納といわれているわ。このスキルを所持する人間たちは、底無しとも言われる収納空間を利用出来るの。古の人間たちは誰もが大気中から体内へ無限に魔力を吸収巡回していた。それ故に誰もが亜空間を収納スペースとして利用していた。だけどそれが当たり前では無くなってしまった。それは人間の驕りからきたもの。 やがて………… 無限収納は無限では無く己の魔力量による限りのある収納となり、インベントリと呼ばれるようになった。さらには通常のスキルと同じく、誰もが使えるスキルでは無くなってしまった……。 主を亡くしたインベントリの中身は、継承の鍵と遺言により、血族にのみ継承ができる。しかし鍵を作るのは複雑て、なおかつ定期的な更新が必要。 だから…… 亜空間には主を失い、思いを託されたままの無数のインベントリが……あてもなく……永遠に……哀しくさ迷っている………… やがてその思いを引き寄せるスキルが誕生する。それがミラクルマスターである。 なーんちゃってちょっとカッコつけすぎちゃった。私はミラクルマスター。希少なスキル持ちの王子たちをサポートに、各地を巡回しながらお仕事してまーす!苺ケーキが大好物だよん。ちなみに成人してますから!おちびに見えるのは成長が遅れてるからよ。仕方ないの。子は親を選べないからね。あ!あのね。只今自称ヒロインさんとやらが出没中らしいの。私を名指しして、悪役令嬢だとわめいているそう。でも私は旅してるし、ミラクルマスターになるときに、王族の保護に入るから、貴族の身分は捨てるんだよね。どうせ私の親は処刑されるような罪人だったから構わない。でもその悪役令嬢の私は、ボンキュッボンのナイスバディらしい。自称ヒロインさんの言葉が本当なら、私はまだまだ成長する訳ですね!わーい。こら!頭撫でるな!叩くのもダメ!のびなくなっちゃうー!背はまだまだこれから伸びるんだってば! 【公開予定】 (Ⅰ)最後まで優しい人・㊤㊦ (Ⅱ)ごうつくばりじいさん・①~⑤ (Ⅲ)乙女ゲーム・ヒロインが!転生者編①~⑦ 短編(数話毎)読み切り方式。(Ⅰ)~(Ⅲ)以降は、不定期更新となります<(_ _*)>

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

異世界営生物語

田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。 ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。 目覚めた先の森から始まる異世界生活。 戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。 出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。

マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~

ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」  騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。 その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。  この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃
ファンタジー
※3巻の発売が決まりました詳細は近況ボードを見ていただけると幸いです。 かつて最強の名を恣にしていた忍者は気がついた時、魔法が当たり前に存在する異世界に転生していた。しかし転生した直後彼は魔力0とされ失格者の烙印を押されてしまう。だが彼は気がついていた。この世界でも日ノ本で鍛え上げた忍法が使えることに。そしてこの世界の魔法は忍法と比べ明らかに弱々しい代物であることに。そう転生した異世界で彼の忍法はあまりに強すぎたのだった。魔法が当然の異世界で魔力なしの落ちこぼれとされた彼の忍法が炸裂!忍術が冴え渡り馬鹿にしてくる連中を一網打尽!魔法?関係ないね、そんなことより忍法だ!今天才忍者と称された彼の第二の人生の幕が異世界で開かれるのだった―― ※アルファポリス様にて書籍化が決定いたしました!春頃に刊行予定です。応援いただいてくれた皆様本当にありがとうございます! ※書籍化にともないタイトルを変更いたしました。 旧題:最強の忍者が転生したのは魔法が全ての異世界だった~俺の忍法が強すぎて魔法じゃ全く相手にならないわけだが~

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...