上 下
59 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第58話 サムジャ、犯人をパピィと倒す

しおりを挟む
「やったわねシノ! それにパピィも!」
「はい! あ、怪我はありませんか?」
「これでパピィの仇も討てたのね」
「ワンワンッ!」

 俺がジャックを倒した後、離れた場所で待機していた三人がやってきて俺とパピィを労ってくれた。

 当初は俺とパピィだけでやると言っておいたし実際そのとおりで進んだのだが、せめて何かあったときのために近くで見守りたいと三人が言ってくれた。

 セイラに関しては教会のこともあったので大丈夫か? と確認したが、そもそも今日は教会に戻らないつもりだったらしい。

 色々とセイラも鬱憤がたまることも多かったようだ。かといって危険な目にあわせるわけにはいかないと思っていたが、ルンやシエロも一緒にいてくれるということになり、そして女子の連携パワーに俺もそれ以上何も言えず、とにかく相手に見つからない場所に留まるなら仕方がないって話になった。

 ま、セイラに関しては囮の為とは言え、あんな格好を見せてもらったというのもある。あの民族衣装、結構露出が激しいからな……

 しかも見せるだけじゃなく、その後俺がその姿に変化して夜の街を歩くのだから、うん、何だこのプレイ。
 
 いい作戦だと思っていたからかついつい深く考えずやってしまったが、急に申し訳なく思えてきた。

「セイラ、正直済まなかった」
「えぇええ! ど、どうしたのですか急に!」
「いや、よく考えたらとんでもない格好をさせたというかさせてもらったと言うか、そんな気がしてな」
「き、気にしてませんよそんなこと!」

 そういいつつもセイラの顔がかなり赤い。やっぱり恥ずかしくなったかもしれない。

「ふぅ、これがもしセイラじゃなくてルンだったら、親父さんに殺されたかもな」

 俺はなんとなくオルサの顔を思い出した。ルンを溺愛しているからな。

「そ、それは流石にないわよ」

 ルンはそれを否定したが、若干不安そうだ。ありえるという思いもあるのかもな。

「そうね。それにルンだと胸が強調されないからそこまでのことにはならないと思うわよ」
「ちょっとシエロ! どういう意味よそれ!」
「はは、ご、ごめんねつい思ったことを」
「余計わるい~!」

 ルンが腕を振り回して怒った。まぁじゃれてるっぽくもあるけど。

 とは言え比べるのも悪いが確かセイラとはかなりの違いがある。自分で変化してその重量感に圧倒されたものだ。あの状態じゃ戦闘になったら確実に影響出るな。刀振れないかも。

「パピィ、それにしても顔が血で、ほら拭いてあげる」
「ワフッ、クゥ~ン」

 シエロがハンカチを取り出してパピィの顔を拭いてくれた。確かに血だらけだったからな。流石受付嬢だけあって気が利く。

 しかしあいつを倒した技、天地落としからの旋風爪牙か。よく考えたら中々えげつない攻撃かも知れない。

「パピィ、仇が取れてよかったわね」
「ワンッ!」

 シエロのおかげで綺麗になったパピィが一鳴きした。仇が取れたことは嬉しそうでもあるな。

「ところでセイラ、その大丈夫なの?」
「え? あ、はい。その、仕事柄死体を見ることもあったので」

 ルンが聞いたのは目の前に転がっている死体だろう。結構ひどい状態ではあるからな。特に同情なんてしないが。

 しかしそれを見ても平気というのもよく考えたセイラは中々の胆力だな。

「この死体どうする? 衛兵を呼んだ方がいいかい?」
「いえ。依頼はまだ期間が残っている以上ギルドの範疇よ。このまま死体はギルドで一旦回収するわ」
「なら俺がしまっていったほうがいいか?」
「いいの? お願い出来たら助かるけど……」

 だったら問題ないな。俺は影風呂敷で死体を回収した。

「それじゃあ明日まで預かっておけばいいか?」
「流石にそれはもうしわけないし、これからギルドにこれる?」
「大丈夫だけど、開いているのか?」
「大丈夫。一部の受付嬢は何かあったときのために合鍵を預かっているから」

 なるほど。シエロはギルドの受付嬢じゃ立場は結構上の方っぽいし、それで鍵を預かっているのだろう。

「皆はどうする?」
「勿論行くわ!」
「私もいいですか? 冒険者ギルド、私、気になります!」

 セイラはどことなくわくわくしてそうだな。教会は規律が厳しそうだし、普段はあまり自由が効かないのかもしれない。

 さて皆の目的も重なったし、俺達はギルドに向かった。シエロが鍵を取り出しドアを開けた。

「どうぞ」
「悪いな」
「何か時間外のギルドに入るのってちょっとドキドキするわね」
「私は実は冒険者ギルドは初めてで」
「アンッ!」

 それぞれの感想を懐きながらギルドに入った。まぁといっても時間外だからといって内部の構造が変わるわけでもない。

 時間が時間だけに暗いぐらいか――と思ったが薄っすらと明かりが灯っていた。

 ギルドには明かり用の魔導具が設置されているから、明かりがあるのはおかしくないが、時間外だからな。

「まさか、泥棒!?」
「う、うそ!」
「注意したほうが良さそうか。パピィ周囲の状況がわかるか?」
「ワン!」
「た、大変なことになってきましたね!」
「えっと、セイラ楽しんでる?」

 確かにセイラの声は若干弾んでいる気がする。

「ワン!」

 そしてパピィが階段を駆け上がっていく。どうやらこっちに何者かがいるようだ。

「クゥ~ン」

 そしてパピィがチョコンっと扉の前に座って鳴いて教えてくれた。ふむ、しかしこの鳴き方。

「ここギルド長の部屋じゃない」
「パパの部屋を狙うなんて泥棒もいい度胸してるわね!」
「あ、いやこれは」
「覚悟しなさい! 泥棒! はぁああぁああ!」

 ルンが自らに刻印を施し、扉を開けて中も確認せず火球をぶっ放してしまった。いや、そのなんだ中には多分。

「な、なんだなんだ! 敵襲か!?」
「へ? あ。あれ? パパ?」
「は? る、ルン! なんでお前がここに? てかいきなり火の玉ぶっ放すって反抗期か? 反抗期なのか!」

 あぁ、うん。やっぱりか。パピィの鳴き方がおとなしいから危険がないって意味だと思ったんだが、ルンも中々早とちりだな――
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

異世界営生物語

田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。 ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。 目覚めた先の森から始まる異世界生活。 戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。 出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃
ファンタジー
※3巻の発売が決まりました詳細は近況ボードを見ていただけると幸いです。 かつて最強の名を恣にしていた忍者は気がついた時、魔法が当たり前に存在する異世界に転生していた。しかし転生した直後彼は魔力0とされ失格者の烙印を押されてしまう。だが彼は気がついていた。この世界でも日ノ本で鍛え上げた忍法が使えることに。そしてこの世界の魔法は忍法と比べ明らかに弱々しい代物であることに。そう転生した異世界で彼の忍法はあまりに強すぎたのだった。魔法が当然の異世界で魔力なしの落ちこぼれとされた彼の忍法が炸裂!忍術が冴え渡り馬鹿にしてくる連中を一網打尽!魔法?関係ないね、そんなことより忍法だ!今天才忍者と称された彼の第二の人生の幕が異世界で開かれるのだった―― ※アルファポリス様にて書籍化が決定いたしました!春頃に刊行予定です。応援いただいてくれた皆様本当にありがとうございます! ※書籍化にともないタイトルを変更いたしました。 旧題:最強の忍者が転生したのは魔法が全ての異世界だった~俺の忍法が強すぎて魔法じゃ全く相手にならないわけだが~

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

ワンダラーズ 無銘放浪伝

旗戦士
ファンタジー
剣と魔法、機械が共存する世界"プロメセティア"。 創国歴という和平が保証されたこの時代に、一人の侍が銀髪の少女と共に旅を続けていた。 彼は少女と共に世界を周り、やがて世界の命運を懸けた戦いに身を投じていく。 これは、全てを捨てた男がすべてを取り戻す物語。 -小説家になろう様でも掲載させて頂きます。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...