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大学生編
82. 1週間前
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12月1日まであと1週間となった今日。
6人は事務所で打ち合わせをしていた。明日から、ライブのリハーサルが始まるためだ。
実際に使用するホールで、歌やダンスはもちろん、舞台照明や演出についての細かい段取りと、衣装合わせも行っていく。
その日が近づくにつれ、6人の緊張も増していった。
「おーい、みんなーできたぞー」
そう言って、元木を始めとするマネージャーたちが会議室に持ち込んだのは、出来上がったばかりの写真集だった。
「うわぁ、写真集だー」
「なんか、思ったより分厚い.....」
「ちょっと感動だな.....」
写真を撮られているときは、慣れないことをさせられて、ストレスばっかりだった6人だが、いざ出来上がりを見ると感慨深いものがあるようだ。
写真集の予約が開始されると、あれよあれよと部数を伸ばし、11月に入る頃には予約だけで10万部を記録していた。
GEMSTONEとアースミュージックレコードが仕掛けたプロモーションが上手くいっている証拠だった。
6人は配られた写真集を、早速パラパラとめくっていく。
まず表紙は沖縄の海で撮影された、波打ち際で6人並んで撮った写真だった。しかも、バックショットではなく、きちんと正面からの写真だ。
白を基調とした衣装が、白い砂浜と青い海と空と見事に合わさっていて、爽やかさを感じる、6人のイメージにぴったりの写真だった。
その中身も、レッスン室で真剣な顔でレッスンし、汗を流している写真や、レコーディング中マイクに向かっている写真、沖縄の海で水を掛け合って遊んでいる写真、ソーキそばを食べている写真、サトウキビ畑に囲まれた道で6人で手をつないで歩いている写真、ハンモックで昼寝をしている写真など、とにかくいろんな表情の6人が載っている写真集に仕上がっていた。
そして、1人ずつの1ショットの写真には、名前、生年月日、趣味や休日の過ごし方などのプロフィールが掲載されていた。
「なんか....恥ずかしいね」
明日香は、今まで見せていなかった自分たちを見せるとあって、恥ずかしさが込み上げてくる。
「恥ずかしがることないぞ明日香。みんな良く撮れているし、お前たちの魅力がたくさん詰まっていると思うよ」
元木は手ごたえを感じているらしく、自信満々に言い切った。
「元木さーん、これって人にあげてもいいのー?」
1人3冊ずつ配られた写真集を手に、深尋が元木に聞く。
「ああ、いいぞ。家族とか、木南くんにあげたいんだろ?」
「えへへー」
深尋も木南との交際は順調に続いていた。
元木はそれが嬉しい半面、なぜか寂しくも感じた。それは以前、僚と明日香が交際しているとわかった時の寂しさとは、また違った寂しさで、ずっと自分のことが好きだったのに離れてしまったという、嫉妬に似た感情だった。
でも、深尋を受け入れなかったのは自分なので、その感情を深尋に出すことはしなかった。
「それとライブ当日なんだが、みんなチケットを家族とか友達に渡したと思うけど、関係者席専用の受付を準備しているから、間違えないよう伝えておくようにな」
元木からそんな注意事項を言われると、本当にいよいよなんだという気分になる。
ライブ当日は、客席の約半分がファンクラブの席で、残りをメディア関係やマスコミ関係、GEMSTONEの練習生、そして6人が招待した家族や友人関係となる予定だ。テレビカメラも入る予定なので、ライブが終わった後も、その話題になるだろうと予想された。
そして翌日から、本番に向けてリハーサルが始まった。
舞台上にはbuddyの6人の他に、振り付けを担当してくれたダン先生、プロデューサーのEvanをはじめとする先生たちや、舞台監督、照明、音響、美術、マニピュレーターなど裏方のスタッフが勢ぞろいし、円陣を組んでライブ成功のための掛け声をかける。
「それでは、1日限りのライブですが、必ず成功させて、次につなげていきましょう‼よろしくお願いいたします‼」
「「よろしくお願いします‼」」
6人も、自分たちのためにたくさんの人が動いていることがわかっているので、1人1人がみんなに丁寧に挨拶する。
自分たちの最高のパフォーマンスを届けるためには、スタッフさんの協力なしには到底不可能だから。それは練習生になった頃から、元木やダン先生、透子先生にずっと言われていたことでもあった。
だから「ありがとうございます」の気持ちを込めて、丁寧に挨拶するのを心がけていた。
リハーサルが終わり、帰りの車に乗ったのは、午後9時をまわっていた。
車の中では、全員ぐったりしていた。
「本番迎える前に倒れそう......」
「ホントだよな。しかも覚えることがいっぱいで、脳みそがとける...」
今回のライブは、ファンクラブの方への顔見せと、メディアやマスコミへの顔見せの二つの目的があるため、ステージ上だけでなく、客席内の通路でのパフォーマンスもあるため、曲ごとに立ち位置などを覚えていかなくてはならない。それを全10曲分なので、今日一日だけでヘロヘロになっていた。
マンションに着き、車を降りる。
マネージャーの中川が、
「それでは皆さん、明日は10時に迎えに来ますね。お疲れさまでした」
と言って帰ると、6人はほぼ無言でエレベーターに乗り、5階で降りる。
先に誠が「じゃあな」と言って帰ると、深尋、竣亮と次々と部屋に入っていく。僚は自分の部屋の前に来ると、「明日香、隼斗おやすみ」と言いながら、明日香が部屋に入るのを見届ける。
そして、明日香が「僚も、隼斗もおやすみ」と言って入るのを見て、最後に隼斗も部屋に帰っていった。
このローテーションが数日続き、いよいよ明日本番を迎える。
初日こそ覚えるのが大変で苦労していた6人も、本番前日ともなると、すっかり覚えてしまい、逆に楽しむ余裕が出てきていた。
午後に備え、楽屋でみんなでお弁当を食べて休憩する。
大部屋の楽屋には、6人だけでなくスタッフさんも一緒にいて、最初は距離を置いていたものの、今ではすっかり仲良くなり、気さくに話しかけてくれる。
「この、イヤモニにも慣れてきたし、緊張半分、楽しみ半分になってきたな」
「そう言って、大外ししたらどうしよう⁉」
誠は相変わらずマイペースだが、深尋が不安を口にすると、
「俺なんか昨日夢で、盛大にズッコケる夢見て焦ったよ.....」
と、隼斗が不安を煽るようなことを言う。
「お前、縁起でもないこと言うな」
「やめてよ隼斗、みんなを不安にさせないで」
それを聞いた僚と明日香が隼斗を窘める。
「転ぶならお前ひとりで転べよ。俺を巻き込むな」
「隼斗くん、そんなこと言っちゃうと正夢になっちゃうよ?」
最後に竣亮がかわいい顔をしてそんなことを言うので、隼斗は自分で言いだしたくせに、急に不安になってうんうん、と頷く。
そんなくだらない、いつも通りのやり取りを見ていた周りのスタッフたちが、はははっと笑い声をあげている。
buddyの6人は、スタッフからの人気も高かった。
ずっと正体を隠していたbuddyというグループが、どんな人たちかわからなかった時は、buddyに対して警戒するスタッフも多かったが、実際に会って仕事をしてみると、本人たちはなにも着飾ることなく、鼻にかけるようなこともなく、今時の21歳の大学生、という印象だった。
しかし、ひとたび歌とダンスが始まると、6人から目が離せなくなり、仕事を忘れてしまいそうになるほどだった。
それほど引き込まれてしまう魅力があるのだと気づかされた。
そして、休憩中でも、どこでも一緒に行動している6人を見て、仲の良さが十分に伝わってきたし、もっと応援したいと思わせていた。
スタッフの間でも、早くお客さんにこの6人を見てもらいたい、そんな気持ちが芽生えていた。
その日の午後は本番と同じように通しでリハーサルを行う、ゲネプロの日だ。
お客さんを入れていないだけで、最初から最後までぶっ通しで行うため、buddyの6人だけでなく、スタッフ全員が緊張していた。
オープニングの映像から始まり、照明の演出、ステージパフォーマンス、そして客席でのパフォーマンスなど、念入りに準備してきたことを本番と思って全力でやる。
ゲネプロが終わると、スタッフから大きな拍手が沸いた。
その反応を見て、6人とも確かな手ごたえを感じることが出来た。
明日はいよいよ本番だ。それと同時に、自分たちの姿が公表される。
どんな反応が返ってくるか不安でしょうがないが、あとはやるしかない。
buddyの6人は、覚悟を決めてその日を迎えた。
6人は事務所で打ち合わせをしていた。明日から、ライブのリハーサルが始まるためだ。
実際に使用するホールで、歌やダンスはもちろん、舞台照明や演出についての細かい段取りと、衣装合わせも行っていく。
その日が近づくにつれ、6人の緊張も増していった。
「おーい、みんなーできたぞー」
そう言って、元木を始めとするマネージャーたちが会議室に持ち込んだのは、出来上がったばかりの写真集だった。
「うわぁ、写真集だー」
「なんか、思ったより分厚い.....」
「ちょっと感動だな.....」
写真を撮られているときは、慣れないことをさせられて、ストレスばっかりだった6人だが、いざ出来上がりを見ると感慨深いものがあるようだ。
写真集の予約が開始されると、あれよあれよと部数を伸ばし、11月に入る頃には予約だけで10万部を記録していた。
GEMSTONEとアースミュージックレコードが仕掛けたプロモーションが上手くいっている証拠だった。
6人は配られた写真集を、早速パラパラとめくっていく。
まず表紙は沖縄の海で撮影された、波打ち際で6人並んで撮った写真だった。しかも、バックショットではなく、きちんと正面からの写真だ。
白を基調とした衣装が、白い砂浜と青い海と空と見事に合わさっていて、爽やかさを感じる、6人のイメージにぴったりの写真だった。
その中身も、レッスン室で真剣な顔でレッスンし、汗を流している写真や、レコーディング中マイクに向かっている写真、沖縄の海で水を掛け合って遊んでいる写真、ソーキそばを食べている写真、サトウキビ畑に囲まれた道で6人で手をつないで歩いている写真、ハンモックで昼寝をしている写真など、とにかくいろんな表情の6人が載っている写真集に仕上がっていた。
そして、1人ずつの1ショットの写真には、名前、生年月日、趣味や休日の過ごし方などのプロフィールが掲載されていた。
「なんか....恥ずかしいね」
明日香は、今まで見せていなかった自分たちを見せるとあって、恥ずかしさが込み上げてくる。
「恥ずかしがることないぞ明日香。みんな良く撮れているし、お前たちの魅力がたくさん詰まっていると思うよ」
元木は手ごたえを感じているらしく、自信満々に言い切った。
「元木さーん、これって人にあげてもいいのー?」
1人3冊ずつ配られた写真集を手に、深尋が元木に聞く。
「ああ、いいぞ。家族とか、木南くんにあげたいんだろ?」
「えへへー」
深尋も木南との交際は順調に続いていた。
元木はそれが嬉しい半面、なぜか寂しくも感じた。それは以前、僚と明日香が交際しているとわかった時の寂しさとは、また違った寂しさで、ずっと自分のことが好きだったのに離れてしまったという、嫉妬に似た感情だった。
でも、深尋を受け入れなかったのは自分なので、その感情を深尋に出すことはしなかった。
「それとライブ当日なんだが、みんなチケットを家族とか友達に渡したと思うけど、関係者席専用の受付を準備しているから、間違えないよう伝えておくようにな」
元木からそんな注意事項を言われると、本当にいよいよなんだという気分になる。
ライブ当日は、客席の約半分がファンクラブの席で、残りをメディア関係やマスコミ関係、GEMSTONEの練習生、そして6人が招待した家族や友人関係となる予定だ。テレビカメラも入る予定なので、ライブが終わった後も、その話題になるだろうと予想された。
そして翌日から、本番に向けてリハーサルが始まった。
舞台上にはbuddyの6人の他に、振り付けを担当してくれたダン先生、プロデューサーのEvanをはじめとする先生たちや、舞台監督、照明、音響、美術、マニピュレーターなど裏方のスタッフが勢ぞろいし、円陣を組んでライブ成功のための掛け声をかける。
「それでは、1日限りのライブですが、必ず成功させて、次につなげていきましょう‼よろしくお願いいたします‼」
「「よろしくお願いします‼」」
6人も、自分たちのためにたくさんの人が動いていることがわかっているので、1人1人がみんなに丁寧に挨拶する。
自分たちの最高のパフォーマンスを届けるためには、スタッフさんの協力なしには到底不可能だから。それは練習生になった頃から、元木やダン先生、透子先生にずっと言われていたことでもあった。
だから「ありがとうございます」の気持ちを込めて、丁寧に挨拶するのを心がけていた。
リハーサルが終わり、帰りの車に乗ったのは、午後9時をまわっていた。
車の中では、全員ぐったりしていた。
「本番迎える前に倒れそう......」
「ホントだよな。しかも覚えることがいっぱいで、脳みそがとける...」
今回のライブは、ファンクラブの方への顔見せと、メディアやマスコミへの顔見せの二つの目的があるため、ステージ上だけでなく、客席内の通路でのパフォーマンスもあるため、曲ごとに立ち位置などを覚えていかなくてはならない。それを全10曲分なので、今日一日だけでヘロヘロになっていた。
マンションに着き、車を降りる。
マネージャーの中川が、
「それでは皆さん、明日は10時に迎えに来ますね。お疲れさまでした」
と言って帰ると、6人はほぼ無言でエレベーターに乗り、5階で降りる。
先に誠が「じゃあな」と言って帰ると、深尋、竣亮と次々と部屋に入っていく。僚は自分の部屋の前に来ると、「明日香、隼斗おやすみ」と言いながら、明日香が部屋に入るのを見届ける。
そして、明日香が「僚も、隼斗もおやすみ」と言って入るのを見て、最後に隼斗も部屋に帰っていった。
このローテーションが数日続き、いよいよ明日本番を迎える。
初日こそ覚えるのが大変で苦労していた6人も、本番前日ともなると、すっかり覚えてしまい、逆に楽しむ余裕が出てきていた。
午後に備え、楽屋でみんなでお弁当を食べて休憩する。
大部屋の楽屋には、6人だけでなくスタッフさんも一緒にいて、最初は距離を置いていたものの、今ではすっかり仲良くなり、気さくに話しかけてくれる。
「この、イヤモニにも慣れてきたし、緊張半分、楽しみ半分になってきたな」
「そう言って、大外ししたらどうしよう⁉」
誠は相変わらずマイペースだが、深尋が不安を口にすると、
「俺なんか昨日夢で、盛大にズッコケる夢見て焦ったよ.....」
と、隼斗が不安を煽るようなことを言う。
「お前、縁起でもないこと言うな」
「やめてよ隼斗、みんなを不安にさせないで」
それを聞いた僚と明日香が隼斗を窘める。
「転ぶならお前ひとりで転べよ。俺を巻き込むな」
「隼斗くん、そんなこと言っちゃうと正夢になっちゃうよ?」
最後に竣亮がかわいい顔をしてそんなことを言うので、隼斗は自分で言いだしたくせに、急に不安になってうんうん、と頷く。
そんなくだらない、いつも通りのやり取りを見ていた周りのスタッフたちが、はははっと笑い声をあげている。
buddyの6人は、スタッフからの人気も高かった。
ずっと正体を隠していたbuddyというグループが、どんな人たちかわからなかった時は、buddyに対して警戒するスタッフも多かったが、実際に会って仕事をしてみると、本人たちはなにも着飾ることなく、鼻にかけるようなこともなく、今時の21歳の大学生、という印象だった。
しかし、ひとたび歌とダンスが始まると、6人から目が離せなくなり、仕事を忘れてしまいそうになるほどだった。
それほど引き込まれてしまう魅力があるのだと気づかされた。
そして、休憩中でも、どこでも一緒に行動している6人を見て、仲の良さが十分に伝わってきたし、もっと応援したいと思わせていた。
スタッフの間でも、早くお客さんにこの6人を見てもらいたい、そんな気持ちが芽生えていた。
その日の午後は本番と同じように通しでリハーサルを行う、ゲネプロの日だ。
お客さんを入れていないだけで、最初から最後までぶっ通しで行うため、buddyの6人だけでなく、スタッフ全員が緊張していた。
オープニングの映像から始まり、照明の演出、ステージパフォーマンス、そして客席でのパフォーマンスなど、念入りに準備してきたことを本番と思って全力でやる。
ゲネプロが終わると、スタッフから大きな拍手が沸いた。
その反応を見て、6人とも確かな手ごたえを感じることが出来た。
明日はいよいよ本番だ。それと同時に、自分たちの姿が公表される。
どんな反応が返ってくるか不安でしょうがないが、あとはやるしかない。
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✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
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