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五章、遠足っ

五話、予兆

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 冒険活動教室。それはセンターに辿り着いたらまずすることがある。
 そう、それは。 

「山登りなんて、なんであんだよ……はあ…はあ…」

 ——山登り。
 冒険活動教室、一日目に山登りをさせられていた。
 バスに到着→行こうぜ! やま。という流れは最早拷問である。

 毎回思うがこれは本当に必要なのだろうか。

 もしかして学校は登山型ブラック企業に入るための下準備を生徒にさせたいのかもしれない。

「アラカちゃん、ウェルテルが、アルベルト、に、論破され、たんだけど……」←身体能力、怪異。
「まあ……そういうお話、だからね」←身体能力、怪異並+5年以上過酷な戦闘の日々

 山登りしながら〝若きウェルテルの悩み〟を読んでるウェルと、平然とした顔で歩くアラカ。
 周囲の生徒が息を荒くしているのに対して優雅な足取りで進む二人は正しく対比であった。

「…?」

 その時、ウェルはある異変に勘づいた。
 アラカもウェルの見た方へと目を向ける。


「……トンネル?」

 短い、短いトンネルが遠くに見えた。
 長さは十メートルほどしかないのだろう、遠くからでもトンネルの先にある綺麗な景色が見える。

 しかしそこじゃない。二人が異質に思ったのはそこではなく。

「コート、の女の、人いる」
「うん、近づいて来てるね」

 山の中腹ほどとは思えないような格好だった。
 コートに、マスクを付けた女性。

 山登りというには異質すぎる格好の女性は二人に近づく。
 生徒らはその様子を異質に思うも、反応が取れない。

「こんにちは、だよ」
「こん、にち、は」

 女性へと挨拶する二人に、生徒はビクついて様子を見ている。

「———— 私 キレイ?」


「「————」」


 その言葉。
 そのコート。
 そのマスクに、誰もが共通の概念を脳裏へと浮かばせた。

「? 綺麗だと、思います」
「ウェルも」

 そう答える二人を除いて。
 危険だ、と周囲の生徒は思うものの、何故だか声を出すことすらできない。

「こ、れ、これ……」

 声を震わせて、震わせて……女性はマスクを取った。

「こ、れ……でも…?」

 ——ピリ


 女性の口角が妙な音を立てる。


 ——ピリピリピリピリ……、

 口角が、頬へと亀裂を走らせる。



 にちゃぁぁぁ…と粘性を持つ液体が、裂けた上頬と下頬が〝分離していること〟を虚実に表した。

「————綺麗」
「……!?…」

 アラカは無動のまま、そう返した。

 何も変わらず、綺麗だと告げた。
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