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序章番外個体
七話、壊れた心の触れ方は
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◆
突然だがアラカには会話機能がとても限定的なものになっていた。
以下の二つ、そのどちらかを達成しなければ会話は不可能である。
〝一定以上の信頼を稼いだ相手しかいない環境でなければ、声を発することすら難しい〟
〝魔力の込められた特殊な薬を投与する〟
ゆえに彼女の世話をする点においてはまず【会話ができない】という段階から始まるのだ。
「アラカくんは何故か私が育てたというのに根っこは優しい子だ。
心は酷く壊れているが理性はその限りではない。
一ヶ月ほど接すれば何か変化があるだろう」
彼女、アリヤが屋敷に配属された日に言われた言葉だ。
他にも大きめの辞書みたいなものを支給されており、そちらにも目を通していた。
街の一角に聳える屋敷。そこは何処かの貴族のお屋敷を想像させる綺麗な場所だった。
そしてこれから仕えるであろうお嬢様への挨拶にアリヤは向かい……天使を見た。
「(わ……きれい……)」
部屋にある家具はシックなベットに、透明性のある丸テーブルと椅子だけだ。
そのシンプルな部屋で、アラカは椅子に座って窓から外を眺めていた。
木々が生い茂り、夏風が入り込む中に。彼女はいた。
「……ぁ」
一瞬、見惚れてから
「本日よりお嬢様のお世話をさせていただきます、アリヤです。
よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。アリヤはその綺麗な主人に対して、とても強く惹かれたことを今でも覚えている。
「…………」
「っ……」
そして頭を上げたアリヤは、アラカと瞳を合わせーー絶句した。
「(なんて……)」
そこにいるだけで、見つめられるだけでわかる。
ーーこれは壊れた人間だ。
人として大事な箇所が抜け落ちているとしか思えないほどに、壊れたものを瞳の奥に見た。
「…………」(こくり)
アラカは会釈をする。それは了解した、という意味であり、それだけでアリヤは救われた気がした。
「(うん、大丈夫…大丈夫。
心が壊れてる、と聞いていたけど……しっかりと、声は聞こえてるみたい)」
そしてその後、アリヤは部屋の掃除を始めた。
「(権謀術数の本……? 珍しい本を読んでるんだなあ……)」
突然だがアラカには会話機能がとても限定的なものになっていた。
以下の二つ、そのどちらかを達成しなければ会話は不可能である。
〝一定以上の信頼を稼いだ相手しかいない環境でなければ、声を発することすら難しい〟
〝魔力の込められた特殊な薬を投与する〟
ゆえに彼女の世話をする点においてはまず【会話ができない】という段階から始まるのだ。
「アラカくんは何故か私が育てたというのに根っこは優しい子だ。
心は酷く壊れているが理性はその限りではない。
一ヶ月ほど接すれば何か変化があるだろう」
彼女、アリヤが屋敷に配属された日に言われた言葉だ。
他にも大きめの辞書みたいなものを支給されており、そちらにも目を通していた。
街の一角に聳える屋敷。そこは何処かの貴族のお屋敷を想像させる綺麗な場所だった。
そしてこれから仕えるであろうお嬢様への挨拶にアリヤは向かい……天使を見た。
「(わ……きれい……)」
部屋にある家具はシックなベットに、透明性のある丸テーブルと椅子だけだ。
そのシンプルな部屋で、アラカは椅子に座って窓から外を眺めていた。
木々が生い茂り、夏風が入り込む中に。彼女はいた。
「……ぁ」
一瞬、見惚れてから
「本日よりお嬢様のお世話をさせていただきます、アリヤです。
よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。アリヤはその綺麗な主人に対して、とても強く惹かれたことを今でも覚えている。
「…………」
「っ……」
そして頭を上げたアリヤは、アラカと瞳を合わせーー絶句した。
「(なんて……)」
そこにいるだけで、見つめられるだけでわかる。
ーーこれは壊れた人間だ。
人として大事な箇所が抜け落ちているとしか思えないほどに、壊れたものを瞳の奥に見た。
「…………」(こくり)
アラカは会釈をする。それは了解した、という意味であり、それだけでアリヤは救われた気がした。
「(うん、大丈夫…大丈夫。
心が壊れてる、と聞いていたけど……しっかりと、声は聞こえてるみたい)」
そしてその後、アリヤは部屋の掃除を始めた。
「(権謀術数の本……? 珍しい本を読んでるんだなあ……)」
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