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38 運営メールはご神託
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と、同時にメールが来た。おお、澪革ちゃんだ。スマホと連動しているからゲーム内でもリアル友人と連絡が取れる。
澪革ちゃんは夏休み前に目当ての船が手に入ったので、今夜から世界一周釣りの旅にお出かけとのこと。
添付アドレスタップすると、彼女の公開チャンネルに飛んだ。
ディスプレイに鮮やかな風景が広がる。
おー、すごい綺麗な海と空! わわ、大きいクルーザーだ! 一学期中 地味に国内の釣りコンテストに出て賞金を稼いでいたそう。あ、勿論、ゲーム内の話ね。
そこに澪革ちゃんが腕を組み、船の甲板の上でポージング。なんか、"海の男"なポーズだな。せっかくアバターも可愛いし、ウェアもピンクの可愛いウェアなのだから…、とオカンのように残念がってしまった。まあ、クルーザーの船首で水着になれまでは言わんけどもね。
で、彼女のしゅっぱーつ! の声でクルーザーがマリーナから出たのだが、運転誰がするのだ? おお、自動運転か、なるほど。
豪華クルーザーの内装にため息。
「は~」
「ホ~」
「キュ~」
あれ?
確か一人で見ていたはずが。隣に誰かがいるぞ?
「素敵ですわね、おねーさま。わたくしも青い海を見てみたいですわ!」
「キュ!」
(い、いつの間に…)
私は小さい彼らを思わず見やる。
「そ、そうだねぇ、今度ドゥジエムに行く時、海を渡るよ。一緒に見ようね」
「わあ!」
(ドゥジエムに行く時、馬車のムービー飛ばさず行こう)
ペットの彼らはインベントリから好きに出られるので、知らん内に隣で一緒にディスプレイを見ていたりする。
今は宿の中の自室だけど、彼らは外でも自由に出てくる。
ペットは隠せないのだ。
しかも、好感度下がると、勝手に逃げちゃうし。
この辺りの仕様も、狩人が人気ない理由かなぁ。
公式の定期メールには職業のシェア率が出ていて、狩人は一桁でした。一桁職業は正確な人数記載されていないけど、変わらず、不人気なのだよ…。
あとは、転職したての珍しい上級職とかが出始めていて、それらが一桁仲間。
(錬金術師とドールマスターは まだ誰も取得なし、か。他に秘匿ジョブってあるのかな?)
お姉ちゃんが狙っている聖騎士は僧兵から教会の騎士団に入団しないとなれないって言っていたなー。
お姉ちゃんで思い出す。
「あ、そうそう確認しなきゃ。公式イベントのお知らせ…と。お、丁度夏休みに入ってからだな。よしよし」
「ご 神 託ですの?」
メリッサちゃんが不思議そうに聞く。
(神託…? そうか、NPCには彼らの理解する言葉で変換されるんだ~)
「そう。運営があの"プルミエ冥界門"からモンスターがあふれ出てくるからその準備して迎撃してねってお知らせ」
まあ! とメリッサちゃんが驚く。
「神様の予言ですのね。ええ、勿論です。おねーさまのお力になりますわ。ねえ、ジロー様?」
ラジャとジローも小さい手を上げた。
このゲーム、実はNPCもチャットやメールが使える。
私たちが見ているディスプレイも同じように見ていて、これらは魔法の認識で、彼らの世界観で矛盾しないらしいのだ。
で、プレーヤーは神獣の使いなので、こういう不思議な情報を持っていても、結構なんなく受け入れてくれるみたい。
そして私はまたメールに目を通す。
(イベント報酬かあ…。上位はムリでもポイント取りに行きたいなあ…)
さてさて、今日は宿の食堂で朝食を取ろう。目玉焼きが食べたい気分。
テーブルの上にはジローとメリッサちゃんが鎮座して、私が用意したクッキーとお茶と嗜んでいる。
ジローもアライグマみたく、両手使って飲み食いするのだ。さすが、ファンシーな世界。
最初、お茶はどうしようかと思ったが、メリッサちゃんは「マイカップがあるのです」と、いずこから木のコップを取り出した。
ジロー様にもどうぞ、と2つ用意していた。
で、私が自分のカップからスプーンで彼女らのそのカップに1滴、2滴と、ポタリと落としてあげている。
そして、メリッサちゃんはお喋りさんなので、食事中もジロー相手に楽しく話かけている。ジローも理解しているようで、小さい前足をときどきフリフリしながら、互いにキャッキャッと笑っている。
癒される~。
だが、癒されているのは私一人ではない。
周囲のプレーヤーさんらも彼らに注目さ。フフッ。
「あれなに、メチャ可愛い~!」
「テイマーかぁ、いいなー、私も【テイム】取ろうかな~!」
(テイマーちゃうわーーー!)
うう、狩人以外で動物連れているのは大抵テイマーだもんね…。
と、いうか、狩人がペット連れ歩けること知っている人少ないのでは…。
テイマー人気には勝てない…。
しかも、【テイム】は別の職業でも、SPで取得可能だし。テイム率はぐっと下がるらしいけど。
(運営は狩人に何を求めていたのだ…)
まあ、いいや。
さて、サクと5SP使って【工作・手芸全般】を取得。……これで、私のSPは0~。
イベントに向けてジョブLv上げしなきゃ! SPも欲しいし! SPが報酬のクエとかないかなあ。
とと、その前に今日も午後からリオンちゃんと一緒に"ビリーの工房"行かなきゃ。今日は【サイズ調整】取得するためのアルバイトがあると聞いていたのだ。
【工作・手芸全般】を上げれば自動で【サイズ調整】が出来るようになるというので、もう不要かもしれないけど、リオンちゃんから防具作りを伝授してもらうんだもんね。アルバイト代も出るし、頑張るぞ。
ちなみに、職人さんがメリッサちゃんをご指名よ。
裁縫Lv5になっているし、メリッサちゃん、すげー。
「また、レシピが報酬でいただけるようなら、おねだりしてみますわね。ご期待なさって、おねーさま!」
メリッサちゃんガッツポーズ。
おおう、頼もしいわ。
さて、午前中は冒険者ギルドでプルミエまでのお使いクエとか引き受けよう。
プルミエのあのギルド長からの依頼も気になるけど、まだ食糧問題解決していないしね。
お肉の供給は狩人の仕事よ。レベル上げにもなるし。
お肉を納めたら丁度いい時間になるでしょ。お昼になる前に、ファンシーに戻ればいいや。
そう思って冒険者ギルドまで向かう。その道々で、ピコンとメール音が聞こえた。
「あ、またメール」
今度は--。
「あ、クロ、インしているんだ…!」
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