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18 クエストを引き受ける

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「失礼ですが、フェザントさんではありませんか?」
「はい?」

急に後ろから声をかけられビックリです。
カウンターにいた冒険者ギルドの職員さんだ。
彼女はやっぱり、と安堵の声をあげた。

「丁度良かった。実はお願いがあるのですが、少し奥まで来ていただいても宜しいでしょうか?」

そう言って彼女はカウンター奥を指し示す。その先はギルドの個室の扉が見える。

(あ、なんかイベント発生したかも?)

ともあれ彼女についていく。
なんか他のプレーヤーがこちらをチラチラ見ているのがわかる。
イレギュラークエ受注の時を思い出すなあ。なんだろう…。

扉の先は少し豪華な部屋になっていて、そこには中年のロマンスグレーのおじ様がいた。
おお、ハリウッドスターみたいなカッコ良さのある人だ。

「ようこそ、フェザントくん。今日はムリを言ってすまない。どうぞ、楽にしてください」

そう言って私に椅子を勧める。
革張りのソファに座るとさっきのギルドのお姉さんがコーヒーとクッキーを持ってきた。さっき食べたものと今度は違う種類だが、またアンケート出た。もしかして冒険者ギルドのスポンサー? リアルスポンサー? ヘルシー製菓さんか…。知らない会社だけど頑張っているな。今度現実のお店で探してみよう。

「初めまして。私はこのファンシーの冒険者ギルドのギルド長、アルファーレンだ。きみ達がライトの森の人斬りを討伐してくれたおかげでプルミエではまた薬草が安定流通して助かっている」
「いいえ、衛兵さんの手伝いしただけですから…!」
「ご謙遜を」

ギルド長はかすかに笑って机の中から一通の手紙を出した。

「実はこの手紙をプルミエの冒険者ギルド長に渡してほしい」

(おお、お使いクエストね)

「はい」と笑顔で帰すとロマンスグレーのアルファーレンさんは真剣な眼差しになった。

「この手紙の返事によって、信用ある冒険者に頼みたい仕事が入る。その際、きみにも頼むことになるだろう。宜しく頼む」

はあ。

「……はい」

とりあえず頷いたけど、なにかな?


ギルドを出たら、ピコンとフレンド通信が入った。サーシャとホノカさんだ。通信に出ようとしたら、それこそ通りの向こうに二人がいて、こちらに手を振っていた。





「フェザントちゃんもプルミエの手紙クエスト受けたんですね」

にこにことサーシャが言う。

「実は私も」

おお、ホノカさんもか。

プルミエまでの道中、パーティー組まないかとのお誘いだ。クロはログインしておらず、アオハお兄さんはドゥジエム拠点にするので今日は来ない。

「なんか冒険者ギルドの人、最後 意味深な感じでしたよね」
「そうだわね。プルミエが今大変なの知っている?」

およ?
確かプレーヤーが経済仕切っていて、NPCのお店がつぶされたりしていたんだよね。その余波がファンシーにも来ていたんだよね。

「でも、大橋の通行許可さえ手に入れば、おのずとプルミエにいたプレーヤーが流出して、そういった事態も収まるのでは?」

昨日今日ではムリかもしれないけども~。

「そうでもないみたい。友人が商人やっていて、プルミエから仕入れにきたんだけど、向こうは殺伐として ならず者が仕切る西部劇みたいな町になっているそうよ。【暁旅団】が二分したせいで」

【暁旅団】、と聞いてあの赤いドレスアーマーのプレーヤーを思い出す。確か

くれないさんだっけ?」
「違いますよ、フェザントちゃん。紅はるかさんですよね、ホノカさん」
「サーシャ、あなたわざとでしょ…。紅薔薇よ。街頭新聞にも載っていたんだけど、紅薔薇を中心にしたベータ時代からの古参がドゥジエムに向かい、残りがプルミエで今も経済活動をしているのですって。【暁旅団】だけじゃないけど、プレーヤーを取り込んだNPCの大手商家が変わらず町の価格調整を自分達の利益になるよう牛耳っている、ですって」
「西部劇…。酒場でミルク頼んだら笑われるのかな」
「傷のあるイケメンが代わりに笑ったヤロウを叩きのめして、ミルクを注文する流れですね。わかります」

サーシャがわかったことに驚愕。あなたのお父さん、お母さん、結構ご高齢ですね? または若い祖父母か? ちなみにうちはお父さんがファンです。うちの両親、結婚遅かったので。母はアシさんやっていたマンガ家さんのファンで傭兵マンガの薄い本作っていた。青春の遺物で書棚にこっそり隠しているのを知っている。姉と私は知っていても知らない振りができる気配り姉妹。腐っていても、お母さん大好き。

「私、傷のあるイケメンのは原作読んでいないわ。でも宇宙銀河鉄道は名作よねぇ」

ホノカお姉さん…!! 該当世代がいた。あばばば。

「あ、メール入った。ふむふむ」

ホノカお姉さんがディスプレイを広げて頷いている。

「あのさ、さっき話していた商人の友人が仕入れが終わってプルミエに戻るんですって。冒険者ギルドに依頼するから、護衛クエスト受注しないかって」
「? 一緒にパーティー移動だけで良くない?」
「冒険者ギルドに依頼すると商人の信用度が上がるんだって。私たちの冒険者ランクもポイント入るし、どう?」
「WIN-WINですね」
「受けましょう」

冒険者ギルドに戻るとホノカお姉さんのフレンドさんがいた。

あ。

「あれ、もしかしてお守り買ってくれた、初心者ウサギさん?」

フレンドさんが私を見て笑う。
NPCと同じ民族衣装風の街着を着込んだ熊耳の、そのボリューミーなお胸は!!

「熊のおねえさん…!」



「あれ、フェザントとハニーは知り合い?」
「私が初ログインした時、お買い物した露店の店主さんだよ。あの時は色々教えてくださってありがとうございました」
「いやいや、あんな高価なアイテム持っていたから。どう、楽しくやってる?」
「はい」

笑顔で返す。ご心配の通り、あの後サクっとPKされましたがな。
おかげで、紛失アイテムと同等の強化武器手に入りました。

「私始めた時は露店やっていたっけ?」
「丁度ホノカがこのゲーム始めた時に商人のレベル上がって、行商許可証手に入れたのよね。それで露店は閉めたの。場所代かかるのよ、あれ。改めて自己紹介ね。商人のハニーです。スキルに【付与エンチャント】あるので支援職です。プルミエまでよろしくお願いしますね」

こちらこそ、とサーシャと一緒にお辞儀する。
サーシャもそのボディに驚いているようだ。私たち、成長期だから大丈夫だよ! これから、これから!

「いつもはどうしていたの?」
「馴染みのNPCの冒険者に頼んでいたんだけど、結婚して引退しちゃって。NPCの女の子の冒険者って少ないのよね。ヤロウだと不快な思いしそうだから避けているの。始める時全身スキャナー使ったの失敗したわ」

ああ、うちにもある健康器具。うちのはハンディタイプ。あれで全身の体型データ取り込み出来るんだよね。通販でよく服を買うから、うちでは家族全員のデータを定期的に保存しているんだよね。

「このゲーム、キャラデザ時間かかるから作り直し戸惑われますもんね…」
「もう、性別変更できればいいのに!」

お胸の大きい男の娘ですか…。それはそっちの方がヤヴァイのでは。

とりあえずお胸の話はそこそこにして、プルミエへ出発だ。



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