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しおりを挟むまず、最初に変えたのは食事の準備。
一緒に食べるだけでなく調理から一緒にすることにした。食材を切るといった下準備はアレクレットがするが、調理の最中の調味料をとる、味見をする、タイマーをセットする、そんな子どもでも出来そうなことを手伝ってもらうことにした。
まずは書斎から出てくる理由が必要だったのだ。
初めのうちは落ち着かない様子でウロウロとしていたが、料理の合間にするアレクレットの雑談を聞くことに慣れてくると、クラウディオも自身の日常のちょっとしたことを話すようになった。
雑談に慣れると、次は自分の興味のあることを話すように薦めるが、クラウディオは妖精王の話題を出さなかった。
どうやら心のストッパーは『自ら話し出す』という行為にあったようなので、努めて妖精王の話をさせた。
自分の話を聞いてもらえることが楽しいことだと分かってもらえるように、だれもクラウディオの言葉を止める者がいないのだと理解させるようにアレクレットからの質問は少なく、大きめの相槌を打つ。
そうしてやっと、おずおずと妖精の豆知識を語りだすという具合だったのが、今や、オタク特有の一息で長文を喋ってしまうようなマシンガントークにまで変化して、妖精王が~、妖精王は~と、食事の最中も話が止まらない。
あまりにマニアックな話をされるので、アレクレットは話の三割も理解できないけど、クラウディオは実に楽しそうである。
アレクレットが後片付けの洗い物をしている最中にドリップコーヒーをクラウディオが作り、一緒に食後のコーヒーを飲みながら話すのは、やっぱり妖精王の話。
「やっぱ、山かぁ」
「ああ、霊界に去ったとされていても全ての妖精じゃなかったと、記録が残ってる。でも、島のほとんどから居なくなっと伝わっているから、入口は複数箇所だったか、もしくは一日二日ではない期間、開いていたと考えられる。だったら、入口は人里よりも妖精が多い山の中に設けたはずなんだ」
「じゃあ、まずは登山のための体力づくりからだね」
「ああ。アレクレットのお陰で食費も浮いたし、塾のバイトをやめてランニングから始めるつもりだ」
「うわー、仕事終わりのランニングか・・・。キツイけどがんばるよ・・・」
元より細い体で筋肉がつきにくい体質。美味しいものを食べるのが趣味でもたくさん食べれるわけでもないので筋力づくりは相当苦労することが予想される。それを思えば顔はつい渋い表情を作ってしまう。
何も言わないクラウディオに『何か励ましの言葉はないのかよ~』と横を見れば、その顔は目がパチクリと不思議そうに瞬きをしていた。
「・・・アレクレットも来るのか?」
信じられないと疑うような、でも本当だったら嬉しいと言いたげな、自信のない声は、まるでスーパーマーケットで『おやつ買って良い?』と親にお伺いをたてている子どものようだ。
「フフっ、もちろん! 邪魔だって言われてもついていくよ。クラウディオが、もし本当に霊界を見つけたら、研究に夢中になって帰るの忘れちゃうかもしれないからね!」
「はははっ、それは確かに。アレクレットに『ご飯、食べるって言ってるだろ!』って言ってもらわないと」
「それ、3回は無視するって言ってるようなもんじゃん!」
「ははははっ、うわっ、やめろって、コーヒーこぼれるだろ!」
コーヒーでソファが汚れないようにするべく、クラウディオはアレクレットの可愛いパンチを背中で受け止め『いでッ』と声を上げた。
*
週に3回のランニングと週末の金曜日にするウエイトトレーニングで土曜日は動けないアレクレットのために週末は、お家で映画を見たり手の込んだ料理をするようになった。たまに、二人して『お昼寝をたくさんする』という、無駄に寝て過ごすこともあるが、それはそれで充足感のある時間でもあった。
さて、今日は久しぶりの週末デートだった。買ったばかりのスポーツウェアを着て、登山の前にハイキングコースを登った。
散策というよりは、それなりの速さでタイムを測定してのハイキングだったので、アレクレットは帰って来る頃にはヘロヘロになっていた。
「やっぱ、アレクレットにはキツかったかな?」
「いやー、うーん、でも、思ったよりは歩けた! ・・・と思うんだけど、どうなのかな」
「歩けてたよ。流石に下りはペース落ちるかな? っておもってたけど、喋る余裕はなかったけどペース維持できてたし」
疲れたアレクレットはソファで寝転び、今日の夕飯の準備はクラウディオがしている。といっても、作り置きしておいた骨付き肉のトマト煮込みを温め、サラダにはゆで卵を4つに切って盛り付けていくだけではあるが、それでもたった2ヶ月ですごい進歩だ。
風呂上がりにお互いにマッサージをすることにした。というか、アレクレットがして欲しいから先行してクラウディオにマッサージをした。
足の裏、ふくらはぎ、脛をマッサージした後は、太ももや股関節のストレッチ。『いででで~』と声を上げるたびにクラウディオがフッと鼻で笑うが、その顔は馬鹿にした笑いではなく、慈愛に満ちた微笑み。
お約束な展開だとは思っていたけど、今日は本当に疲れているし、見逃してもらえないかな、と期待していたのだがアレクレットの太ももには何か硬いものが時折当たる。
振り返って確かめれば、クラウディオは切なげな目で見つめ返してきて、はっきりと股間のものを押し当ててきた。
「ごめん、今日はするつもりなかったんだけど、・・・滾ってしかたがないんだ。なんか、こう、グワーってなって、なんと言うか、・・・めちゃくちゃに抱きたくてたまらない!」
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