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しおりを挟むこの際、黒田にお茶することを伝えて「オレ以外の男とお茶しないで」って言って貰えばいいのだ。
彼は心配性。
こんな可愛くて美しい俺を野放しにしておくはずが無い。
恋人が嫉妬するから2人での外出は出来ないと伝えれば、吉野だって今後誘ってこなくなるだろう。
崖から子を突き落とすライオンの様に、ここは鬼になって...。
「吉野くんとお茶?いいね、気をつけて行くんだよ」
予想外だった。
まさか黒田が、心を開いた人間にはとことん甘いなんて...。
そして俺は
「何飲みます?あ、ケーキセットもあるみたいっすよ」
休日に生徒とお茶をする現実から目を逸らせない。
夏休みが終わったとは言え、照りつける太陽の日差しが暑過ぎる。
「アールグレイだけでいい」
誰かに見つかる前に早く帰りたい...。
「俺はケーキセットにしますね」
ああでも、吉野の嬉しそうな顔を見てしまえば...
「今日、一緒に過ごせて嬉しいです...」
「......俺もだよ」
来て良かったとすら思ってしまう...!
オーダーを済ませ、テーブルに視線を落としたままの俺を見た吉野は不思議そうに顔を覗き込んだ。
「どうしたんです?」
「いや...誰かに見られたら困るっつーか...」
「大丈夫ですよ、今日の先生眼鏡掛けてないしバレないって...」
くい、と顎を持ち上げられると身体中に熱が駆け巡る。
「...ほんと、かわいいね」
「っ...、そ...その可愛いって言うのさ...、やっぱり俺のことをそういう目で見てるんじゃねぇの...」
男が男に可愛いって言うなんておかしいだろ。
やっぱりこいつ俺のこと好きなんじゃないのか...?
「うん、そうだよ」
「え!?...おま、それは流石にマズイ...」
「前も言った通り、俺は先生のことを母さんだと思ってる」
......お母さんに可愛い♡可愛い♡って言う息子がいるかよ。
「一緒に寝たい」
「駄目だ」
「抱っこして」
「俺より体重重いだろうが」
「よしよしは?」
「あ゛?わざとあんな点数をとったお前の頭を誰が撫でるか...!」
店員が温かなアールグレイティーと、ケーキセットをテーブルの上に置く。
店員の腕により視界が一瞬遮られたが、再び吉野の方へ視線を送ると彼はあからさまに肩を落としていた。
「だって...先生と一緒に居たかったから...」
しゅん...
「いい点数取れば、いくらでも頭撫でてやんのに...」
「え?」
目を輝かせた吉野は本当?と首を傾げる。
その無邪気な表情が俺の心を鷲掴んで離さない。
いくらでも、は流石に言い過ぎたかな...。
まあでも、頭撫でるだけで喜ぶ且ついい点数を取るなら安いもんか。
「ああ」
「じゃあ2時間よしよしして欲しいです」
「長ぇわ」
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