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しおりを挟む「椿!見てこのお洋服、可愛いでしょ♡」
「んー...」
興味無さげに空返事をする黒田は、お茶を飲みながら新聞を読んでいる。
あれから5日が経過したが、妹はまだ黒田家に居座っていた。
名前は黒田 菫
兄妹共々、容姿にピッタリな麗しい名前。
妹の性格はブラコン、おてんば、高飛車、お嬢様タイプ。
落ち着いた黒田とは正反対なご様子。
「今日、このお洋服着てデートしたいな♡茶器でも見に行きましょ?」
「そろそろ出てってくれる?」
きなことあずきにブラッシングをかけながら、兄妹の噛み合わない会話を聞くことにも慣れてしまった。
今日も今日とて、焼け付くような太陽がギラギラと輝いている。
外に出たくはないが、3人前の食事を拵えていることもあって冷蔵庫の中身は底を尽きそうだ。
買い出し行かないとな...。
「私がダメで鏡夜さんがいいなんて、意味わかんない!」
「鏡夜はオレの恋人なんだから居て当然だろ」
恋人
う~ん、何度聞いても擽ったい...!
熱が下がった翌日、彼は優しい瞳で「今日から恋人、ね?」とキスを施した。
恋人に物凄く浮かれてしまった俺は家でも学校でも上の空状態で、普段なら有り得ないようなミスを連発する始末。
それでも幸せな気持ちでいっぱいだったから、表情にも出ていたのだろう。
吉野やお馴染みの男子生徒から物凄く詮索された。
「やだじゃない」
チラ、と黒田に視線を送る。
「やだやだ!椿と結婚するのは私だもん...っ!」
ああ...あんなにカッコイイ人が俺の恋人...!
顔も綺麗で、身体もえっちで、性格も優しいし俺の言うことやお願いも何だって聞いてくれるし、細かな気配り出来るし...スパダリだし...。
は~、生きるって楽しい...!!!
「大体、なんでこの家に女性ショーツが沢山あるのよ!」
ギクッ
「しかも全部際どいし...。もしかして、椿はそう言う下着を穿いてる女性が好みなの?元カノの?今すぐ捨てて」
「無理」
吉野に指摘されてからは、専らボクサーパンツを穿いているが、黒田妹が家にいる以上軽率にそう言う下着も穿けなくなった。
ボクサーパンツに慣れつつある身体が、何だか悲しい。
「先生、今日の夜ご飯は何がいい?午前中に買い出しへ行こうと思うんだが...」
「んー、そうだね...今日も暑いからさっぱりした物がいいな」
「わかった」
この暑さでは流石に肉を食べる気にもなれないのか、ここ数日は和食をメインとしていた。
今日なんかは特に暑いし、麺類でもいいかもな...。
「一緒に行けなくてごめんね、1人で食材持って帰れる?あんまり重いものとか持たせたくないんだけど...」
「平気だ、俺にだって筋肉はある」
どうやら午前中のうちに黒田宛の荷物が届くらしい。
一緒に行けない...と肩を落とした黒田に萌える。
ささっと行って、すぐ帰って来てやろう。
「じゃあ私が一緒に行く」
そう思ったのも束の間、彼女の発言にギョッとした。
「......菫さんが?俺と?なんで?」
「ダメだよ、菫。鏡夜に迷惑かけるんだから」
「迷惑かける前提で話を進めないでよ!行くったら行くの!鏡夜さん、車出して」
彼女は、むっ、としたかと思えば綺麗な黒髪を靡かせ、見せびらかしていたワンピースのまま外へ出てしまった。
「.......嫌なことされないうちに1人で帰っておいでね」
「う、うん...」
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