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しおりを挟む夕方頃から身体もいつもの状態に戻り始めた。
筋肉痛にも関わらず、嬉しそうにはしゃぐ32歳児2人を横目に、ソファーに座りながら柚子茶を飲んでいると
「はっ...そうだ、清めないと...」
突然我に返った黒田は再度俺を浴室に連れて行き、しつこいぐらいに身体を洗った。
身念入りにボディースクラブで清められた身体はしっとりと光り輝いている。
「はい、まずは腕からね」
「ん...」
テーブル下の収納から可愛らしいボトルに入ったボディークリームを取り出した黒田は、適量を手に取り俺の腕に滑らせた。
燃えて炭と化した、愛用の高級ボディークリームとはデパートの店頭で奇跡的に巡り会った。
人気商品で欠品が続き、ネットでは高値で売買されることも多い品を定価で買えたのだ。
あまりにも感極まって「ひゃっ!」と高い声が出てしまう程嬉しかったことを思い出す。
「で...、毎日そうやってお前が塗ってあげてんの?」
「そうだよ」
ソファーに寝そべる俺と、その身体をマッサージしながらボディークリームを擦り込む黒田を、冷めた目で見つめる光悦。
部屋の中に広がるバニラとホワイトムスクの香りは、心までもリラックスさせてくれる。
はー、極楽...。
「...きもちい...。黒田先生、首のとこもう少し念入りに...」
「僕は、鏡夜のことをお姫様かなんかだと思っていたけど...お姫様って言うか、女王様だね」
小さく呟いた光悦の声が耳に届けば、声を漏らして笑う。
「はは...光悦も俺の下僕になりたいのか?」
「んー...男の下僕に成り下がった気分はどうだい、椿」
「幸せだよ、一生お仕えする」
なんて従順な。
でも黒田のことは下僕だと思っていない。
どちらかと言えば王子様みたいだし、実際のところ他の男とは比べ物にならないくらいいい男なのだ。
そんな男を下僕にしておくはずがないだろう。
「.........、先生は...特別...。...下僕じゃない...」
「っ...うれしい...」
赤く染まる頬を精一杯隠していると、突然黒田が抱き着いてくる
そのまま黒田を肘で押しやれば唇を尖らせながら吐き捨てた。
「わ、すぐに引っ付くな...!つーか何にそんな喜んでんだよ...!」
「特別ってところ」
喜ぶ黒田を無視して、ゆっくりと身体を起こせば、マッサージしてくれた彼にお礼を伝える。
ただただ笑顔を浮かべて頭を撫でてくれる黒田がスパダリ過ぎて辛い。
息出来ないくらいかっこいいじゃん、こいつ。
「...、ところで光悦、お前いつまでここにいるつもり?早く帰れよ」
ソファーから退く黒田がキッチンへ立ち、冷蔵庫から2人分の豚肉を取り出す。
お前に食わせるものはないぞ、と言わんばかりの態度とる黒田は、カーペットの上でダラける光悦に視線を寄越した。
「明日の朝、椿と鏡夜が家出る時に一緒に出るから、僕の分のご飯も作って」
「はぁ...?嘘だろ...帰れよ...」
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