秘めやかな色欲

おもち

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夕食後、シャワーを済ませた俺は早々に寝室のベッドに連れ込まれた。

沢山のランジェリーが散らばったシーツの上にちょこんと座る俺に、彼は冷ややかな視線を向ける。

「...黒田せんせ?」

知らぬ間に怒らせるようなことをしてしまったのだろうか...?
正直、全く身に覚えがない。

「なんか、怒ってる?」

「...いや、怒ってないよ。それより、鏡夜に聞かなきゃいけないことがあったのを思い出して」

「?」

薄いレースのカーテンを透かして、柔らかな月明かりが差し込む空間には、少しばかりピリッとした空気が流れている。

何を言われるのかと身構えていると、彼がゆっくり口を開いた。

「木曜日はどこに泊まったの?」

「...」

ギシッ、とベッドを軋ませながら、俺のバスローブに手をかける。

「ホテル?それとも友だちの家?」

「...ホテルだ」

ここで馬鹿正直に「響の家」と言う奴がいるだろうか。
嘘を吐いた方がいいことは猿でもわかる。
だが、そんな嘘も彼にはお見通しだったらしい。

「若王子先生のお兄さんのところでしょ」

なぜ知っている!!

「違う...ホテルに泊まった」

他の友達の家なら100歩譲って良かったが、の家だぞ。
この男は、俺の初恋相手が響だと言うことも知っているのだ。

そいつのためなら死んでもいいと思えるような、相手、だと。

や、殺られる...。

「昨日の夜、響さんに電話しようとしてたよね?前日も響さんの家に泊まってたんじゃないの?何かあったら連絡して、迎えに行くって...言われてたんでしょ?」

俺のせいじゃねぇか。

酔っ払って記憶を無くし、軽々しく響の名前を出した自分をぶん殴りたい。

肩からずり落ちるバスローブを剥ぎ取り、散乱するランジェリーに手を伸ばした彼は俺の目の前に下着をぶら下げて見せた。

「これ、穿いて」

伸縮性があり、薄い布地。
珍しくシンプルな女性用ランジェリーにゴクリと喉を鳴らす。

こんな小さいの...絶対はみ出る...。

静かに怒りを露にする彼に怯み渋々下着を受け取れば、それにゆっくり脚を通した。

見られてると、緊張する...。

自分の心臓の音が、どんな音よりも大きく聞こえて、眉尻を下げたまま目を伏せた。

「いじらしいな...」

「あっ...!ちょっと...!」

腰まで下着を引き上げた姿を確認した後、脹脛ふくらはぎを掴み、あろうことか足の甲にキスを落とされる。

ゾクゾクとした感覚、目眩がする程甘美な光景に震えが生じた。

こんな大柄で男らしい人間が、足の甲にキスなんて...まるで俺に服従を示しているようではないか。

今までの人間だって、沢山俺に媚びへつらってきたし、従順なワンコのような男は沢山いたのに。

「嘘を吐くってことは、なにかやましいことがあるんだよね...?」

彼は犬なんて可愛らしい動物ではない。

野獣だ。

そんな男が俺に服従することを想像すれば、興奮せずにはいられない。

押し込んだ布の中で、自分自身が少しずつ硬くなっていくことが分かれば、彼は爪先に口付けを落とした。

「んっ、...ぁ♡」

「オレ以外に触らせたの...?」
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