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しおりを挟む「...オレ以外のとこ、もう行かないで」
「...!」
心臓が、止まるーーーーー。
「ね?」
「っ、そ...なの、俺の勝手...だろ...」
厚い胸板に包まれると、昨夜同様に彼の心音が聞こえてくる。
Tシャツから香る洗剤の匂いと、彼の体温、身体を抱き締める男らしい腕...
「...行って欲しくないんだよ...誰にも見せたくない...。鏡夜のことを知れば知る程、独り占めしたい気持ちが強くなる...」
甘過ぎる現実に、頭も心臓も追いついてこない。
なんだ、これ。
「は、...ぅ...、っも、早く行けよ...!」
「いたた、君はすぐ手が出るよな...、じゃあ準備出来次第行ってくるよ」
離れていく身体に背を向けて布団を被る。
「行ってきます」と言う言葉にも反応せず、ただただ赤くなった顔と乙女のように高鳴る心臓を隠した。
「...」
あいつが変なことを言うせいで顔も身体も熱い。
なんだよ、独り占めしたいって...。
黒田が独り占め出来る程、俺は安い男じゃない。
大企業の社長や資産家でさえ俺に大金を積んで愛人契約しようとしたんだぞ...、黒田のような、ただ顔と身体がいい男にそんな簡単に靡くわけ...
『 ...オレ以外のとこ、もう行かないで 』
起こした身体でまたしてもベッドに倒れ込む。
黒田の香りがするベッドに、ドキドキした。
「ニャー」
「ニャー」
「!?」
カリカリと扉を爪で引っ掻きながら可愛い声で鳴くのは、紛れもなくあの子たちだ。
誘われるようにして扉を開けると、俺の顔を見るなり喉を鳴らしながら擦り寄ってくる。
「わ~...♡きなこ、あずき...おはよ」
「「ニャー」」
天使...!!!!!!
いつまでもベッドの住人と化している訳にもいかず、渋々寝室から抜け出しリビングへと移動する。
猫用のブラシを部屋から探し出しソファーに腰をかけては、膝をぽんぽんと叩いた。
「まずはきなこからブラッシングしようね」
膝の上に乗ったきなこの頭を撫でながら、身体にブラシを滑らせる。
その間あずきは俺の身体にピッタリと身を寄せながら香箱座りで待機。
「...きなこは肉球とお鼻がピンクだね、かわいい」
なんて至福なのだろう。
朝起きてから猫ちゃんにブラッシング出来るなんて、ただひたすらに黒田が羨ましい。
「あずきの靴下は誰が履かせてくれたの?あんよが真っ白だね」
ゴロゴロと喉を鳴らしながら、気持ちよさそうにブラッシングされた彼らはご満悦の表情を浮かべている。
ブラシで抜けた毛を処理し、換気をすべく窓を開けた。
天気は良くないが、そこまで寒くない。
柔らかな風が部屋に入り込み、微かに雨の匂いを運んだ。
嫌な天気。
「掃除機かけて朝ご飯作ったら、ちょうど帰ってきそうだな...。勝手に冷蔵庫を開けるのは気が引けるけど...」
悩みながらも、好きなように過ごせと言われたことを思い出し、意を決して中身を拝見させていただく。
「あ、賞味期限切れそう。この野菜も今日明日中には使った方がいいな...」
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