11 / 312
11
しおりを挟む「おはよ」
朝の光に照らされた男は綺麗に笑いながら、目覚めたばかりの俺の髪に触れる。
「...はよ」
そう言えば、昨日こいつと...シたんだっけ...。
重い頭を右手で支えながら起き上がり、大きな欠伸をした。
「よく寝た...」
...あれ?よく眠れたのか、俺は。
神経質で寝付きの悪いこの俺が、他人と朝までぐっすり?
本来なら、少しの振動や音で起きるはずなのに、俺よりも先に黒田が起きていたことに驚いた。
黒田がベッドを抜け出す時に、俺が起きてもおかしくなかったはず...。
よっぽど疲れてたのか、眠たかったのか珍しいこともあるもんだ、とその時は特に深く考えなかった。
「朝ごはん食べる?」
「ん」
「歯ブラシ出しておいたから、歯磨きと洗顔しておいで」
「ん」
言われた通り歯磨きと洗顔を済ませてリビングに戻れば、テーブルの上にはサラダが添えられたホットサンドとスープが用意されていた。
「......モテるだろ」
「困るくらいね」
「うぜ...」
ダイニングチェアに腰掛けた俺の顔を見て、にこりと笑った黒田に目を奪われる。
確かにこれはモテるわ。
両手を合わせ一緒に朝食を摂っている光景があまりにも意味不明すぎて、改めてどうしてこんな状況になっているのかを問いたい。
しかも、普通に美味いのがまたムカつく。
「鏡夜」
「もう名前で呼ぶの禁止」
「碓氷先生の眼鏡は伊達なんだ」
「ああ...視力はいい」
「眼鏡姿もミステリアスだけど、無いのもいいね」
「...?何が」
頬を撫でたり髪を触ったり、ただ単に俺の身体が目当てだと思っていたけど...、そう言うことでも無いのだろうか。
「眼鏡がないと綺麗な顔がより良く見える」
「...見んなよ、ただでさえ顔出すの恥ずかしいんだから。...今だってあんたにマジマジと見られるの、居心地悪いし...」
「じゃあもっと見よう」
「やめろ」
白湯を飲みながら笑う彼に釣られ、多少口角が緩むのを感じれば、慌てて掌で口を抑えた。
「...俺なんかに構ってていいのか。こんな広い家に1人で住んでる訳じゃないだろ?彼女は?」
「確かに一人暮らしではないけど。彼女がいたら君とセックスしないよ、現在募集中」
実家...?な、わけないか。
「あんたならすぐに出来るだろ」
あはは、と軽快に笑う黒田がテーブルの上に置かれた煙草を手に取る。
「誰でもいいならすぐに出来るよ。誰でもよくないから出来ない」
「理想、高そうだもんな」
「あー、そうなのかなぁ...。どちらかと言えば追い掛けたい側だから、向こうからグイグイ来られると恋愛対象から外れちゃうんだよね」
それなら職場の女教員はほぼ全滅であろう。
毎度黒田の隣をキープするのに必死な姿を思い浮かべれば滑稽過ぎて笑えた。
「気高くて綺麗めで、彼氏募集中の子が居たら結婚を前提に付き合って欲しいと思ってるんだけど」
「?...なに、気高いって」
15
お気に入りに追加
849
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる