悲劇にしないでよね!

雫喰 B

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41. クラウディア・ブロスフェルト

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*今話、不愉快になるような、不適切な言葉が出てきます。
苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いいたします。

*本日、もう一話21時に投稿しますのでよろしくお願いいたします。


~~~~~


    取り敢えず、今日はここまでにして、休憩を挟んで今後の事を話し合う事にした。

    お茶を飲みながら、俺はエーリッヒと、ユークリッドはエヴァとの雑談に花を咲かせていた。

    すると部屋の外、廊下の方が騒がしいような…?

    何か言い争っているようだと、俺もエーリッヒもソファーの横に立て掛けていた剣に手を伸ばした。

    エーリッヒが確認の為だろう、

「今日、俺達以外の来客の予定は?」

    と聞いてくる。

「いや、何の約束も無い筈…。」

    そう答えると、二人共扉を睨み付けた。

バタンッ!!

    勢いよく開いた扉の向こうから現れたのは、クラウディアだった。

「チッ!ノックも無しかよ。」

    忌々しげにエーリッヒが言えば、

「ですわね。」「ですよね。」

    ユークリッドとエヴァも言う。
    俺は大きく溜め息を吐くと、

「ノックぐらいしたらどうだい?」

    と、注意した。
    すると、肩を竦めて舌先を少しだけ見せ、やっちゃったとばかりにおどけてみせる。

「あら?(今日はあの女は居ないのね。)」

    訝しげに部屋の中を見遣ってから言う。

『お兄様から婚約解消されたあの女が、別れたくないから、友人を引き連れて抗議しに来たって聞いたけど、違ったみたいね。』
    
    謝りもしない彼女に、エーリッヒが眉間に皺を寄せ、

『「あら?」じゃないだろ!』

    心の中だけで突っ込んだ。

「(マナーが)なってませんわね。」
「ええ。(マナーが)なってないですね。」

    ユークリッドとエヴァが眼を眇て言う。

「ハッ!とんだ深窓の令嬢だな。」

    エーリッヒが鼻で嗤う。

    彼が当て擦ったのに気づいたらしい、クラウディアは顔を赤くして怒った。

「な、何ですって?!」

    ユークリッドが挑発するように

「あらあら。本当にとんでもないお子様ね。」

    と、追い討ちをかけ、扇で口元を隠し、眼をすっと細める。

「くっ…!」 

    悔しいが、相手が王女なので言い返せないクラウディアは、次なる手に出た。

「お兄様ぁ~。」

    アルベルトに泣きつく。

「しょうがないな…。ごめんユークリッド、僕からも謝るから許してやって。」

    アルベルトが“よしよし”と宥めると、彼が着ているシャツの胸元を両手で握りしめ、彼から見えない角度で振り返ったクラウディアの口角は弧を描き、『勝った』とばかりに、ニヤリと嗤っていた。

「ッ!!」

『この小娘がっ!!』

    と、ユークリッドの顔に書いてあるように見えて、アルベルトはたじろぐ。

    そんな中、エヴァがぼそっと呟いた。

「ユークリッド様を本気で怒らせるなんて馬鹿な。」

    けれど、その呟きはクラウディアには届いていなかった。が、アルベルトには届いていたようだ。顔色が悪いし、汗も凄い。

    アルベルトのそんな表情は滅多に見られない。ユークリッドは仕方ないからそれで我慢してやる事にした。

「アルベルト、お子様の躾ぐらいちゃんとしなさい。」

    躾のなっていない、鉄面皮な小娘を庇うような奴は名前呼びで充分といった感じで、ピシャリ!と言った。
 
    それが分かっているだけに、彼は苦笑する。

「で?何か用でもあるのかな?クラウディア。」

    そう質問すると、両手を胸の当たりで落ち着き無く動かしながら、頬を染めてモジモジしている彼女。

    それを見た、ユークリッドとエヴァの視線がギッ!と鋭く変化したのを、彼は肌で感じた。

    彼女達は、顔を寄せ合ってヒソヒソと囁き合っている。

「ユークリッド様、これはもう間違い無いですよね。」
「間違い無いですわね。きっと、フランとアルベルトの婚約が解消されたと聞いて押し掛けて来たのよ。」
「何か、モジモジとあざといですね。見ていてムカムカします。」
「ここにフランが居ないのが悔しいですわ。何て腹立たしい!」
「けど…何でフランは婚約解消を願い出たんでしょうか?私からは公爵閣下に好意があるように見えたんですけど…。」
「アレよアレ、あの子って、肝心なところでニブいじゃない。おまけに、アルベルトの勘違いされても仕方ないあの態度。アルベルトもフランが好きなら、あんな女、放っておけばよろしいのに…。その分、フランを気遣えば良かったのよ。にしても、ムカツクわねあのクソあま。」

    そこでエヴァが、核心を突くかのような疑問を口にする。

「でも公爵閣下って、フランの事が好きって言ってましたよね。なのに何であの女にいい顔するんでしょうね。それまでは、“氷撃の…”なんて言われるぐらい女性に冷たかったのに…?」
「…確かにそうよね。一度調べてみる必要がありそうね。」
「ですね。」

    二人は、顔を見合わせて笑う。

    その間、アルベルトの前で頬を染めて、ずっとモジモジしていたクラウディア。
   『 早くこっち見ないかな。』といった感じで、二人の様子をチラチラ窺っている。

『女優気取りで、ギャラリーでも欲しかったのかしら?』

    心の中でも、毒舌なユークリッドだった。

    けれど、ユークリッドとエヴァが会話を止めたら、即座にアルベルトに公爵家を訪問した理由を語りだした。

   あながち間違いではなかったようだ。
    相変わらず二人の方をチラチラ見ながら、その反応を窺っている。
    そして、アルベルトに媚を含んだ声色で話しかけた。

『フラン、本当にこんな女にアルベルトを譲るつもりなの?後悔しないの?』

    ユークリッドはここに居ない、親友のフランに、心の中で尋ねた。
    
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