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38. 情報共有
しおりを挟むユークリッドから聞いた話は、大筋では俺が持っている情報とほぼ同じだった。
が、裏側が分かる情報と言った方がいいのだろうか。
俺が持っている情報というのは、当時あった出来事や関係がありそうな事件、それらの事柄から推測される物だ。
そして、裏で糸を引いている人物は、俺もユークリッドも分かっている。
尤も、俺の方は推測から導き出した答えだったので、確証は無かったのだが…。
だからユークリッドは怒っているのだ。俺の婚約者でいた方が、フランにとって安全だと思っていたから…。
「何度も忠告したのに…。」
泣きながら言われた言葉に胸が痛い。
「…済まない。」
今の俺に言えるのはそれだけだった。
そして、フランを護る為に、力を貸して欲しいと頼み込んだ。
主に情報の共有を…。
ユークリッドは王族であるが為に、個として動く事が出来ない。
現に今も身動きが取れず、フランの身が危ないと分かっていながら、如何する事も出来ず、嘆くしか出来ない事に苦しんでいる。
だが、優秀な影を持っている。
その事(情報)で、フランを護る為に動けるからと…。
その上で、もう一人の友人、エヴァに渡り(連絡、仲介)をつけてもらう。
だが、問題はその先だった。
上手く事を運ばなければ内乱に発展する。そして、そうなれば隣国が内乱に乗じて攻めて来るだろう。
故に、短期間で解決しなければならない。
その為に、エヴァの婚約者であるリンツ辺境伯と同門の貴族の力が必要不可欠なのだ。
俺とユークリッドが立ち向かわねばならない相手、それは…この国の国王と王太子だった。
ユークリッドの話から分かったのだが、国王は王太子の“やらかし”を知っていながら、黙認していた。
裏で糸を引いていた黒幕は王太子。そして国王は黙認していた。
最悪、この国の最高権力者二人を相手に、短期間で解決しなければならない。
4年前の真相を知りたかっただけだった。なのに、こんな事になるとは…。
だが、このまま手を拱いていたら、フランの身が危ない。下手をすれば命も…。
俺は彼女を失いたくない。
その為に全力を尽くすと誓った。
~~~~~
あの夜会以来、徐々に社交界から遠ざかっていった。
そして、考えていた通りにフェードアウト。
今まで来ていた手紙やプレゼントだけど、手紙は封を切らずに引き出しにいれていたら、あっという間に満杯になってしまった。
でも、プレゼントはそういう訳にもいかないから、送り返していた。
どれ程の時間が経ったか、はっきり分からないけど、そろそろ頃合いかと思って、予め書いておいた手紙を、フォイエルバッハ家に届けさせる。
そして数日後、婚約解消が承認されたと連絡があった。
「これで良かったのよ。」独り言ちた。
最後に見たアルベルトを思い出す。
クラウディアと優雅に踊る彼。お似合いだった。
ただ、夜会への出席回数を減らす度に、サンドラが怪気炎を上げ、夜会に突撃して行く様を見るにつけ、彼には申し訳ない思いでいっぱいになった。
けど、いいよね。婚約解消するから…。
あのまま、領地に籠っていられたら良かったのに…。
でも、伯爵家に生まれたのだから仕方ない。政略結婚は避けて通れない。
相手が彼…アルベルトだとは思わなかったけど。
“氷撃の撃墜王”なんて言われていたけど、私の前ではそこまでじゃなかった。
何となく、彼との距離が近いように感じて、このまま結婚するのも“有り”かな?って思っていた。
でも、距離が近いように感じていたのは私だけだったみたい。
彼の元婚約者の妹であるクラウディアが出て来たら、要無しに…。
やっぱり、愛していた人だから、8年以上経っても忘れられない。というより、まだ愛しているのね。
ユークリッド様からは、彼の婚約者でいる限り安全だと言われていたけど…。
隣国から戻って来たフリッツの話を聞いた後は、彼の婚約者でいる事が辛くて。
だって、彼に愛してもらえない上、仇として憎まれるのが分かっている状態って、正直辛い。
そして、婚約が解消されたら、やっぱり動いた。
ずっと私を追い立てていた、大嫌いな奴。
裏で手を回して、色々とご活躍だった奴。それを私にバレていないと思っている奴。
もう、いい加減うんざりしていた。昔の事をいつまでも、ねちねちと…。未だに恨みに思っているあの男。この国の王太子クラウス。
私がアルベルトと初めて出会った時、何処からか見ていたらしい。
その後、顔を合わせる度にしつこい!
「大きくなったら、結婚して欲しい。」と言われたのが10才の時。
クラウス王太子は、アルベルトと同い年で8才年上である。だから、プロポーズ(と彼は言っていた)された時、彼は18才だった。
しかも、ユークリッドの付き添いで、お茶会に来ていた時、隅っこでこっそり、耳元で囁いただけ。
おまけに、使者を立てた訳でもなく、お父様に結婚の打診も申し入れをした訳でもない。
「正気ですか?本気で言ってます?」って言ったら、アハハハと笑って「冗談だよ。」って言ったクセに。
そんなの本気だとは誰も思わないと思う。
思えば、それから後、ずっと嫌な事があった。ほんの些細な事から、思いもよらない事まで、それこそ、有りとあらゆる事の裏であの男は、ほくそ笑んでいたのだ。
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♡注意事項~この話を読む前に~♡
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※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
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