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12. 思惑
しおりを挟む結局、あの後閣下が正気に戻るまで暫くかかった。
やっぱりそこまで考えていなかったのね。と、呆れると共に以外と人間らしい所もある事に少し安心した。
そして、契約内容は次回会う時に決めるから、契約に入れたい条件等を、考えておくように言われた。
「契約結婚かぁ…。」
自分が結婚するなんて、想像もできなかった。
貴族家の夫人とか…。いや、もっと端的に言って、私には妻とか母親といったものは、一番向いていないと思っている。
けれど、このままだと親以上の年齢の貴族の後妻になるか、某かの訳あり貴族に嫁がされるか、修道院に入るかの三択しか道は無い。
尤も、その時は修道院一択なんだけどね。
私にとっては、閣下との結婚も修道院も似たようなもの。
どちらも奉仕活動が漏れ無く付いてくるって所は変わらない。
(閣下と結婚した場合は、公爵夫人としての公務と名前が変わるだけ。)
跡継ぎに関しては、閣下のあの様子だと、考えていなかったって事はしなくていいって事よね。
と、自分に都合が良いように思っていた。
まぁ、契約結婚上等!目指せスローライフ!
…なんてね。(半ばやけくそ)
で、それはいいんだけど、家に帰ってからが大変だった。
置いて行かれたお義母様とサンドラが、ドレスや宝飾品を爆買いした請求書に真っ青になっているお父様。
置いて行かれた事と、私と閣下の結婚が決まった事に納得いかない、義母娘二人から、ギャンギャン喚き立てられて…。
勘弁してよ…。
と、うんざりして疲れ果てた。
そして翌日も、その余波に被害を被ったのは言うまでもない。
~~~~~
「え、何でそんな面白い事になってんの?」
それが、閣下と私の結婚が決まったと報告した時のエヴァの台詞。
「言わないで!私が一番そう思ってるんだから。」
次回、公爵邸に行くまでに、またまた3人でお茶会。
エヴァとは対照的に、ユークリッド様は顔の下半分の所で、広げた扇を構え、眼を細めながら黙って聞いていた。
…?
何か勘のような物(?)が私に告げる。
そう。まるで“ゴー◯◯が囁くのよ。”と言わんばかりに…。
「ユークリッド様?何か問題でも…?」
溜め息を吐いて、扇を閉じた彼女の表情は何処と無く何時もと違う。
何というか…不安気…?
「…フラン…契約結婚の事以外に、閣下から何か聞かなかった?」
ユークリッド様の、分かり辛い表情を読もうとしていたのに気付かれたのか、そんな質問をされた。
「?…何かあるんですか?」
何か良くない事のようで、恐る恐る聞いた。
エヴァも何時もとは違う雰囲気に、固唾を飲んで様子を窺っている。
私とエヴァの様子に、諦めたみたいに溜め息を吐くと、扇を広げ口元を隠した。
「フラン…あなたこのままだと、厄介事に巻き込まれるかも知れなくてよ。」
「「えっ?!」」
その言葉に私もエヴァも驚いた。けど、急に態度を変えた閣下を見ている私は、妙に納得した部分もあって…。
「ユークリッド様は、何かご存知なのですか?」
遠回しに聞いたり、オブラートに包んだりするのは苦手なので、ストレートに聞いた。
「いい質問ね。私、あなたのそういう所(直球勝負な所)好きよ。」
『えっと…頑張って自分で考えてねって事?』
まぁ、お兄様は王太子の側近だから、そこから攻めてみるか…。
ユークリッド様が、口に出来ないという事は、閣下だけでなく王家も絡んでいるって事…よね?
それって、相当マズいんじゃ…?
その事に血の気が引いた私は、エヴァの方を見た。
同じ顔色をしているのを見て、彼女も同じ見解だと分かった。
ならば、問題はその先。
“自分が何に巻き込まれたのか。”
それを知る必要がある。
が、ユークリッド様の立場を考えるなら、暫くの間、彼女とは距離を置いた方がいいと判断したのだが…。
「あら、フラン。私を除け者にしようとしても無駄ですわよ。」
「な…」
考えを読まれて焦る。
「本当にあなたって、こういった事(腹の探り合い)は苦手なのね。」
うふふ。と笑うと、扇を扇いでみせる。
「じゃあ、宿題(調査)ですね。で、後日、答え合わせ(照らし合わせ)で宜しいでしょうか?」
ニッコリ笑うと、エヴァも扇を広げて扇ぐ。
「では、日時は後日お知らせしますわ。ユークリッド様もそれで宜しいでしょうか?」
私も微笑みながら扇を広げて扇いだ。
何だか、私達だけで分かる会話をしていると、学生時代に戻ったみたいでワクワクした。
~~~~~
*上記会話中の、( )内は彼女達だけに通じる(訳している)物です。
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