apocalypsis

さくら

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tu fui, ego eris

viginti

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「そうですか。貴方にとって僕も母も道具なのですね」
 表情の変わらない天弥と違い、サイラスの表情が変化するのを斎は見逃さなかった。
「分かりました。少しはと思っていたのですが……」
 何かを決意するような天弥へ視線を移す。
「天弥?」
 斎は、なにか不安を覚える。
「大丈夫です。無茶なことはしません」
 そう答えながらも、天弥の決意が見て取れる。やはり何かをする気なのだろう。何をする気なのか。どこかへ飛ばすつもりなら、とっくにそうしているはずだ。なにか出来ない理由がと考えたとき、斎の脳裏に天弥の言葉が浮かんだ。母親を人質に取られていたことを思い出す。連れ出すだけなら容易なのだろうが、生命維持装置とか尋ねてきたとことを思うに、連れ出した後が大変なのだろう。だが、それだけでは無いように思える。
「教授」
 少しでも時間稼ぎをしたいと思い、斎が胡桃沢に話しかける。
「なにかのぉ? 一緒に行く気になったのかのぉ?」
「いえ」
 即座に否定を返す。
「教授はなぜ、幻夢鏡へ行きたいのでしょうか?」
 疑問だったことを投げかける。
「ふむ……」
 胡桃沢は、少し考え込むような表情をした。
「ただ行ってみたい。そう思っただけじゃ。特にセレファイスは、研究の徒にとっては夢のような世界じゃろ」
 やはり目的はそれだったかといつきは納得した。
「だが、君と同じになれるのなら、行く目的は無くなるのだがね」
「俺と同じ……?」
 胡桃沢の言葉に、斎が考え込む。
「それは……どういうことでしょうか?」
 胡桃沢は斎と天弥を見比べる。
「推測じゃがね。君はおそらく天弥くんと同じ時間を過ごせるのだろう」
 更に意味が分からなくなり、斎は小首を傾げる。
「まぁ、五十年後ぐらいには、はっきり分かるじゃろう」
 何がしかの変化はしていると考えていたが、胡桃沢の推測はあまりにも突飛すぎた。
「先生、その話は後でしましょう」
 天弥の言葉から、推測ではなく確信を持っているのだと知る。
「分かった」
 今は、他にするべきことがあり、斎は天弥の申し出に承諾した。
「天弥、取引だ」
 痺れを切らしたように羽角が口を開いた。
「なんでしょうか?」
「由香子は好きにするがいい。その代わりに、我々を幻夢鏡を連れて行くのだ」
 天弥はジッと羽角の顔を見る。
「母だけですか?」
 一瞬、驚いた表情を浮かべた後、羽角は喜びへと変わる。
「その様子だと、成功しているのだな」
 天弥はため息を吐く。
「本当に、貴方にとって母は道具なのですね」
「由香子もその腹の中の子供も好きにするがいい」
 羽角の言葉に、斎は驚き視線を発言主に向けた。
「分かりました」
 斎は、自分ひとりが状況を理解していないことを確信した。
「子供……? 天弥の兄弟……?」
「いえ、違います」
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