apocalypsis

さくら

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tu fui, ego eris

septem

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「今の先生やと、本気でいかんとな……。まぁ、多少の怪我はしゃあないか……」
 サイラスの姿が視界から消えるすぐに、左横から裏拳が飛んできた。かろうじてそれを受け止める。手合わせをしたことは多くはなかったし、格闘技の種類も違う。だが、絶頂期のときでも本気で戦って勝てたかどうか分からない相手ではあった。ここまで差があるとは思いもしなかった。よほど、手加減されていたのだと少し情けなさを覚えた。
 身体を回し横にいるサイラスに向かい蹴りを出すが、かすりもしない。身体に変化が起きているのは確かだが、だからといって技術が上がるわけでも無かった。ただ、スタミナについては確実にサイラスの上をいっている。持久戦に持ち込めば勝てる可能性はあった。だが、それも読まれていることは間違いないと考えておくべきだろう。
「せんせー! 俺、今日は観たい番組があるんや」
 よく分からないが、アニメ番組なのだろうと予想をつける。
「せやから、マジで本気でいかせてもらうわ」
「俺も早く帰りたいしな」
 サイラスは斎の足元を狙うように姿勢を落とすと足技を繰り出す。くるぶし辺りに、サイラスの足が当たる。
「くっ」
 斎は痛みに耐え、距離を取ろうと後退る。
「そういや先生はカラテやから、寝技がダメなんやっけ?」
 本気で行くと言いながら余裕のある口ぶりで語りかけてくる。確かに、寝技に持ち込まれたら終わりだ。
「そういえば、天やたちは用済みになったんじゃなかったのか?」
「んー俺には、ハズミが考えとることは、正直よく分からん」
 分かる者は胡桃沢ぐらいだろうと斎が心の中で答えた。
「一応、保険はかけとるみたいやけど、それは最終手段みたいやしな……」
 互いに攻防を繰り返しながらやり取りをする。
「保険ってなんだ?」
「あ、知らんほうがええで! マジで胸糞悪うなるしな」
 今の言い方だと、そのようなことをしているのかは知っているということだ。
「天弥の母親が、素直にハズミの望みを叶えてくれるんが一番なんやけどな……」
 真面目に斎を捉える気はあるのかというぐらい、話しまくる。それだけ、余裕があるということなのか。確かに力量の差はある。
「それに、天弥も先生に執着を見せているみたいやし、案外、望みを叶えてくれるかもしれんしな」
「執着?」
 徐々に防戦一方になってくる斎と違う。いくら、怪我をしても治りが早いとか、体力や気力がすぐに回復するとしても、拘束されてしまえば終わりだ。捉えるということは、それを狙っているのだろう。
「え? 先生、気づいとらんの?」
 気づくもなにも、そんな素振りは見たことが無かった。いつも、軽くあしらわれて居るとしか思えない態度や言動だった。
「ま、試してみるのもええやん。先生を捕まえたら、分かるやろ?」
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