apocalypsis

さくら

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alea jacta est

viginti tres

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「まさか……」
 人の輪の中に見知った顔を見つけ、斎は驚きと嫌悪の表情を浮かべた。それは絢子の両親に思え、飛び散った血しぶきにまみれた姿で、恍惚とした表情を浮かべている。確認をしようと足を踏み出すと、障害があることに気が付く。この光景を見せないようにと抱きしめている天弥だった。
「天弥、俺の後ろへ」
 移動をするために、天弥を背後に隠すようにする。天弥は特に気にすることでも無かったが指示に従った。気遣ってくれているのがよく分かったからだ。ゆっくりと斎があるき出し、天弥もそれに続く。ハッキリと人の輪に参加する人々を確認できる位置に来た。改めて絢子の両親と思える人物を確認する。血に塗れ喜びを顕にしている人物たちは間違いなく絢子の両親だった。教団の信者だったのかとやるせなさが募る。
 次に、輪の中心で無残な姿になっているおそらくは人と思われるものへ視線を向けた。女性と思われるおそらくは死体であろうものを注意深く観察をする。すぐに、斎に衝撃が走った。
「……あや……こ?」
 無意識に後ずさる。だが、背後には天弥が居り、下がることは出来なかった。そして、再び絢子の両親を見る。なぜ、娘がこのような姿になっているのに喜び恍惚としているのか理解できなかった。その纏っている血は絢子のものだろうにと不快になった。
「あれも贄じゃよ……」
 突然、背後から声が聞こえ、斎と天弥は揃って振り返った。そこには、ゆっくりと斎たちに向かってくる胡桃沢の姿がある。
「教授? 今までどこへ?」
 胡桃沢が斎たちの横に並ぶ。
「ちょっと野暮用があってな」
 視線を目前の輪から離さずに答えた。
「これは一体……なにがあったかご存知ですか?」
「ハスターを呼んだのじゃよ」
 斎は胡桃沢から絢子だったものに視線を移した。
「なぜ、こんなことを? 呪文で呼べるのではないのですか?」
「それが出来るのは、そこの二人だけじゃよ」
 胡桃沢の視線が天弥に向けられる。
「絢子は呪文だけでバイアキーを呼んでいました」
「下級奉仕種族なら呼べるじゃろうな」
 天弥は胡桃沢を見つめる。
「コモちゃん……。あれって、お父さん? がやったの?」
「そうじゃ」
 天弥は悲しそうに目を伏せた。
「なぜ?」
 斎の声は落ち着いていた。答えを聞き漏らすことが無いようにと胡桃沢を見る。
「それが契約だからのぉ。そのために、あの贄は与えられたものだしのぉ……」
「なぜ、風の神を?」
「あの教団が、一番都合が良かったからじゃ」
 確かに、サイラスを見ていると、ハスター教団が一番、都合が良いというのも頷けた。
「それで、破壊と混乱を?」
 胡桃沢が頷く。
「だが、所詮はまがい物。道標としてしか使い道がなくてのぉ……」
「まがい物? 道標?」
 おもわず斎の口から疑問が吐いて出た。そして、天弥へ視線を向ける。
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