apocalypsis

さくら

文字の大きさ
上 下
198 / 236
alea jacta est

septendecim

しおりを挟む
「今のは……バイアキーなのかのぉ?」
 サイラスとバイアキーと思われるものが消えた場所を胡桃沢は見つめる。
「おそらくは……」
 確信が持てず、斎も確定はできずに答える。
「そうか……」
 バイアキーについて訪ねたいと思ったが、この様子では胡桃沢も詳細は分からないのだろうと、尋ねることを止めた。
「それよりも、どうやってあそこへ行くかですが……」
 間違いなく、車はしばらくの間は動かない。かと言って、サイラスのように移動手段が他にあるわけでも無い。
「ん? その子がおるじゃろう」
 胡桃沢の視線が天弥に向けられる。天弥は視線に気が付き、小首を傾げながら自分を指差した。それを観て、胡桃沢は頷いた。
「しかし!」
 胡桃沢の言葉と視線の意味を理解し、斎は反対を投じる。
「他に方法はあるのかのぉ?」
「天弥は、場所を知らないから行けないと言っていました」
 海上の異変が起きている場所を、天弥はジッと見つめる。
「行くところって、あそこ?」
 天弥が指差した場所へ、斎と胡桃沢は揃って視線を向けた。
「そうじゃ。行けるかのぉ?」
「たぶん……」
 海上から視線を逸らさずに答える。
「多分ならダメだ」
 即座に斎が反対をした。
「でも、行かないと大変なことになるんでしょう?」
 天弥の視線が斎に向けられる。
「そうだが……」
 斎は考え込む。天弥を危険な目には合わせたくはない。出来ることなら、召喚が行われるという場所へも一人で行きたいぐらいなのだ。だが、天弥が居なければこれから起こるであろうことを止められる者は居ないというのも理解している。
「僕、失敗しても先生と一緒ならいいかなって……」
 目を伏せ、恥ずかしそうに天弥は思っていることを口にした。斎が更に考え込む。どういう理論で展開されているのかわからないものは、市杯したときにどのようなるのかも検討が付かない。どのみち、このままでも結果は同じようなものなのかと考えると、どちらを選んでも変わりは無いように思えた。
「なら、行くか?」
 天弥はいつきを見つめ、静かに頷いた。
「わしもじゃ!」
 胡桃沢の声が二人の間に飛び込んできた。忘れていたというような表情で斎は胡桃沢を見た。失敗すれば三人一緒なのかと少し複雑な表情に変る。だが、このままここに居ても三人遺書なのだと思い直した。
「分かりました……」
 了承しながらも、天弥が出来るという移動に質量は関係するのかどうか、また考え出した。質量のことを天弥に聞いても無駄な気がして、表情は更に困惑に変わる。しかし、このままここに居ても仕方がないことも分かる。
「天弥、行こうか」
「はい」
 答えると天弥は腕を斎に向かって伸ばす。斎の腕をしっかりと手で掴むと天弥の周囲に暗い靄のようなものが徐々に現れた。慌てて、胡桃沢は天弥に駆け寄りその腕を掴む。天弥の周囲の闇は深くなり、一瞬、あたりに広がるとすぐに収束した。闇に包まれた三人の姿は、その場から消えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

【完結】わたしの娘を返してっ!

月白ヤトヒコ
ホラー
妻と離縁した。 学生時代に一目惚れをして、自ら望んだ妻だった。 病弱だった、妹のように可愛がっていたイトコが亡くなったりと不幸なことはあったが、彼女と結婚できた。 しかし、妻は子供が生まれると、段々おかしくなって行った。 妻も娘を可愛がっていた筈なのに―――― 病弱な娘を育てるうち、育児ノイローゼになったのか、段々と娘に当たり散らすようになった。そんな妻に耐え切れず、俺は妻と別れることにした。 それから何年も経ち、妻の残した日記を読むと―――― 俺が悪かったっ!? だから、頼むからっ…… 俺の娘を返してくれっ!?

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

催眠アプリを手に入れたエロガキの末路

夜光虫
ホラー
タイトルそのまんまです 微エロ注意

俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・

白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。 その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。 そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。

これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範
ホラー
 オムニバスホラー短編集です。ゾッとする話、意味怖、人怖などの詰め合わせ。  読みやすいように千文字以下を目指しておりますが、たまに長いのがあるかもしれません。  (*^^*)  タイトルは雰囲気です。誰かから聞いた話ではありません。私の作ったフィクションとなってます。たまにファンタジーものや、中世ものもあります。

処理中です...