apocalypsis

さくら

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alea jacta est

quinque

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「……はい」
 覚悟は決めた。拒絶されようとも、斎を救いたかった。
「あぁ、それでか……」
 一つ謎が解けたと納得する。天弥は不思議そうな瞳を向けた。
「illa me amabat……」
 天弥には理解出来ない言葉だった。
「ずっと、彼女って誰なのか考えていたんだが……愛していたというのも……」
 斎がなにかを考えるような表情をして、小さく呟いている。それは普段と変わらない様子で、天弥に嫌悪や拒絶の感情を持っているようには見えなかった。
「先生……?」
 天弥の声で我に返ったようにハッとした。
「あ、すまない。考え事をしていた」
 天弥に視線を向ける。
「どうした?」
「先生……僕のこと嫌じゃないの?」
「なぜだ?」
 神や悪魔の類かと考えていたが、正体は人間の女性だった。なにか嫌悪するようなことがあるのだろうかと考えるが、斎には思いつかなかった。
「だって僕……」
 何を気にしているのかは手に取るように理解できた。だが、このような状態は不義にあたるのか考えてみるが、答えは出なかった。
「お前のせいじゃないだろ」
 どちらの名前で呼べばよいのか、斎はそのことの方が気になった。
「そういえば、名前はどっちで呼べば良いんだ?」
 もしかしてと、天弥は微かな希望が心に浮かぶ。
「ずっと天弥だったから、そっちの方が……」
「分かった」
 今までと変わらない斎に、天弥の瞳から涙が零れ落ちる。だが、まだ正体しか話していないのだ。この先を話せばと考える。それでも、今だけでも天弥の心は喜びで満ちる。
 手を伸ばし、流れ落ちる天弥の涙を拭う。言われてみれば、この天弥は女の子のようだと思ったことが何度もある。本来の天弥の方は、中性的であまり性別を感じさせなかった。
「そういえば、さっきの言葉だが……彼女は僕を愛していたって意味だ」
「それってどういう?」
「お前を、俺に取られて悔しいってことだろう」
 更に理解できないって表情を天弥が浮かべる。天弥が色々と考え落ち込んでいるように思えたため、少し冗談っぽく言ってみた。
「まぁ、あまり悩むな」
「でも、僕まだ言っていないことがたくさん……」
「なんだ?」
 天弥はしっかりと斎の目を見た。
「祖父……じゃなくて父? が神様を降ろそうとしているって……。それを止めないと……」
 斎の表情が驚きに変わる。
「なんの神を?」
「……風の神様」
「ハスターか……」
 斎が少し考え込む。
「何時どこでなのか分かるか?」
 天弥が首を横に振る。
「そうか……」
 再び、斎が何かを考えている表情をする。
「ごめんなさい……。僕が天弥と同じことが出来れば……」
 そういえば、神を降ろすことが出来る以外のことは知らなかった。というよりも、他にも出来ることがあるのかと少し驚き戸惑う。
「同じこと?」
 天弥が頷き応えた。
「それは、どんなことなんだ?」
 好奇心が先に立った。そして、能力を把握していた方が今後の役に立つだろうと自身に言い訳をする。
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