apocalypsis

さくら

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errare humanum est

quindecim

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「どうぞ」
 無難に返事をすると、ゆっくりとドアが開いた。ゆっくりと天弥の姿が現れる。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
 天弥が室内に入るのを見つめる。
「朝は、ここに来れば良いのですよね?」
 疑問の形であったが、当然のことと言わんばかりの様子でソファに座る。朝から傍に居てくれるというおなら、斎にとっても願ってもいないことであった。
「あぁ」
 もし、二人が入れ替わることがあれば、すぐにでも対応出来るようにしたかったのだ。
「なにか飲むか?」
 ドアを閉め、戸棚へ向かう。
「では、先生と同じものをお願いすます」
「コーヒーだが良いのか?」
 手にしたココアを戸棚に戻す。
「はい」
 インスタントコーヒーを作り、天弥の前に置く。
「ありがとうございます」
 ゆっくりとコーヒーを飲み始める。
「お昼と放課後もここい来れば良いのですよね?」
「そうだ」
「分かりました」
 飲みかけのカップをテーブルの上に置くと立ち上がる。
「では、お昼休みにはキスしてください」
 そう言い残し、天弥は廊下へ出ていってしまう。斎も、用意した教科書と教材を手にし、部屋を後にした。

 昼休み、隣に座る天弥を見た。揃ってソファに座り弁当を広げている。こうしていると、普通の日常を過ごしている錯覚を覚えた。
「はい、どうぞ」
 意識を集中すると、箸で掴んだおかずを差し出している天弥の姿があった。
「違いましたか? なるべく、今までと同じようにしているつもりなのですが?」
 確かに、授業中や周囲に他の生徒がいるときなどは、今までと変わらない様子だった。誰も、この天弥が別人だとは思いもしなかっただろう。斎も、今の天弥を見ていると今までと変わらないように思えた。
「先生?」
 少し、小首を傾げながら尋ねる様子に、実はいつもの天弥に戻っているのではと思えてきた。ゆっくりと手を伸ばし、その頬に触れる。
「天弥……」
 名を呼ぶと、ゆっくりと天弥の瞳が閉じられる。斎は静かに唇を重ねた。すぐに倦怠感が襲い、いつもの天弥では無かったことを思い出した。
「ごちそうさまです」
 差し出していたおかずを、斎の口元に移動させた。
「食べないのですか? 体力をつけて貰わないと困るのですが……」
 仕方がなく、斎は気だるい身体を動かし差し出されたおかずを口にする。差し出されているおかずで気がつけば良かったのだと後悔をする。いつも、天弥は自分が大好きだという玉子焼きを差し出していた。先ほどは、別のものだったのだ。
「面倒くさいですね……」
 ため息を吐いて斎を見つめる。
「こんな調子では、いつ元に戻るのか……」
 間違いなく、手加減をされているのだろうと思いながら天弥を見つめる。
「でもまぁ、仕方がないですね……」
 感情のこもらない表情と視線を斎へ向ける。
「元にもどるというのは?」
 表面的には、特に損傷は見受けられない。なにが元に戻らないのかが分からなかった。
「身体は、かなり元に戻っているので生活とか言うのを行うには困りません」
 変な言い方をすると思った。
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