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errare humanum est
quattuor
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生徒たちから、動画を観ていることを肯定する言葉が次々と飛び出す。逃げ遅れた人たちが映し出されているのに興味を持つ野次馬根性は理解できなくもないと少し納得しながら、生徒たちの間を通り過ぎた。
教科室へ戻るとすぐに斎は携帯を確認した。授業中はサイレントモードにしているため、メールや着信が分からなく、気が気ではなかった。着信があったことを知らせるメッセージを見つけ、慌てて確認をした。だが、望んでいた相手では無く激しい落ち込みを覚える。だがすぐに、情報を持っていそうな相手だということもあり、流行る気持ちを抑えながら履歴が知らせる人物に電話をかけた。二回目の呼び出し音の途中に相手が電話に出る。すぐに、遅いとの叱りを受けた。
「すみません。授業中だったもので……それで、要件は?」
謝罪を口にしながらも、連絡をしてきた内容が気になり思わず催促をしてしまった。すぐに、確認したいことがあると告げられ、夜に約束を入れた。
通話を終え、携帯を机の上に置くと煙草を取り出す。次の授業までの短い時間で出来ることは少なく、吸い終わった煙草を灰皿に押し付け火を消すと教科書と資料を再び手にし、教科室を後にした。
夜、指定の場所に訪れた斎は、目の前の扉をノックする。少し待つが返事がなく、ドアノブを回して扉を開けた。そこには、大きなディスプレイを見つめる胡桃沢の姿が視界に飛び込んできた。その背中に向かって声をかけるが、聞こえていないのか返事がなかった。仕方がなく足を踏み出し、その背中に近づくと今度はその肩に手を置いた。突然のことに、ビクリと反応した胡桃沢の身体が振り返り、相手を確認すると落ち着く。
「なんじゃ、来たなら声をかけんか」
「かけたんですが……」
そう答えた後、二人の間にしばしの沈黙が漂う。
「まぁ、それはどうでもよいから、これを観てくれんか?」
なにか気まずさを誤魔化すようにディスプレイを指差す胡桃沢に促され、画面へと視線を向けた。
「火災……ですか?」
画面を観ながら、生徒たちが騒いでいたことを思い出す。
「そうじゃ」
辺り一面むき出しの大地に燃える激しい炎が映っており、そこがどこなのか場所を把握することが出来ずにいた。
「もしかして……南極の火災……ですか?」
確認するように訪ねた言葉を肯定するように胡桃沢が頷く。すぐに手にしているリモコンを操作し、再び促すように画面の一点を指差す。そこには炎の間に人影のようなものが確認でき、生徒たちが騒いでいたものはこれなのかと納得した。だがすぐに、周囲から確認できる炎の大きさに違和感を抱く。比較できるような物は何もないが、それでも明らかに巨大な火柱とも呼べるものから考えると、この人影はかなり巨大なものである。しかも、頭部にあたる部分には巨大な触手のようなものが見られた。その人影に纏わりつくように、炎が不自然な動きを見せる。
「ナイアルラトホテップ……?」
画面に映る形状から思い起こされる存在を斎が口にした。だとするとこの炎は……思い浮かんだ答えを否定するかのように軽く首を横に振った。だが、もし想像の通りだったとしたらと不安が過る。
「この映像は……?」
教科室へ戻るとすぐに斎は携帯を確認した。授業中はサイレントモードにしているため、メールや着信が分からなく、気が気ではなかった。着信があったことを知らせるメッセージを見つけ、慌てて確認をした。だが、望んでいた相手では無く激しい落ち込みを覚える。だがすぐに、情報を持っていそうな相手だということもあり、流行る気持ちを抑えながら履歴が知らせる人物に電話をかけた。二回目の呼び出し音の途中に相手が電話に出る。すぐに、遅いとの叱りを受けた。
「すみません。授業中だったもので……それで、要件は?」
謝罪を口にしながらも、連絡をしてきた内容が気になり思わず催促をしてしまった。すぐに、確認したいことがあると告げられ、夜に約束を入れた。
通話を終え、携帯を机の上に置くと煙草を取り出す。次の授業までの短い時間で出来ることは少なく、吸い終わった煙草を灰皿に押し付け火を消すと教科書と資料を再び手にし、教科室を後にした。
夜、指定の場所に訪れた斎は、目の前の扉をノックする。少し待つが返事がなく、ドアノブを回して扉を開けた。そこには、大きなディスプレイを見つめる胡桃沢の姿が視界に飛び込んできた。その背中に向かって声をかけるが、聞こえていないのか返事がなかった。仕方がなく足を踏み出し、その背中に近づくと今度はその肩に手を置いた。突然のことに、ビクリと反応した胡桃沢の身体が振り返り、相手を確認すると落ち着く。
「なんじゃ、来たなら声をかけんか」
「かけたんですが……」
そう答えた後、二人の間にしばしの沈黙が漂う。
「まぁ、それはどうでもよいから、これを観てくれんか?」
なにか気まずさを誤魔化すようにディスプレイを指差す胡桃沢に促され、画面へと視線を向けた。
「火災……ですか?」
画面を観ながら、生徒たちが騒いでいたことを思い出す。
「そうじゃ」
辺り一面むき出しの大地に燃える激しい炎が映っており、そこがどこなのか場所を把握することが出来ずにいた。
「もしかして……南極の火災……ですか?」
確認するように訪ねた言葉を肯定するように胡桃沢が頷く。すぐに手にしているリモコンを操作し、再び促すように画面の一点を指差す。そこには炎の間に人影のようなものが確認でき、生徒たちが騒いでいたものはこれなのかと納得した。だがすぐに、周囲から確認できる炎の大きさに違和感を抱く。比較できるような物は何もないが、それでも明らかに巨大な火柱とも呼べるものから考えると、この人影はかなり巨大なものである。しかも、頭部にあたる部分には巨大な触手のようなものが見られた。その人影に纏わりつくように、炎が不自然な動きを見せる。
「ナイアルラトホテップ……?」
画面に映る形状から思い起こされる存在を斎が口にした。だとするとこの炎は……思い浮かんだ答えを否定するかのように軽く首を横に振った。だが、もし想像の通りだったとしたらと不安が過る。
「この映像は……?」
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