apocalypsis

さくら

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date et dabitur vobis

quindecim

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 帰宅の挨拶をすると、母親は優しく微笑んだ。
「すぐにご飯にする?」
 振り返り斎の姿を確認してから玄関の中へと入り込んだ天弥に、母親が声をかけた。
「食べてきた……」
 ドアが閉まる音を聞きながら、答える。
「そう」
 母親は、天弥へと背を向けるとリビングへ向かった。いつもと変わらないその態度に少し戸惑いながらも、靴を脱ぎ母親の後に続いた。
 リビングには、ソファーに座りながらテレビを見ている父親と妹の姿があり、思わずその二人を見つめる。いつもならこの時間、父親はまだ仕事で家には居ない。妹の花乃も自分の部屋に居ることが多いので、あまり見られない光景だ。
 リビングの入り口に立ち尽くす天弥の存在に気が付いたのか、二人は揃って視線を向けた。父親は特に変わった様子は無かったが、花乃は驚きと戸惑いがその表情に表れている。
「遅かったな」
 父親が天弥に向かって声をかけた。
「ごめんなさい」
 謝罪を口にしながら、リビングへと足を踏み入れた。父親の様子や言葉は普段と変わらず、天弥が居なかった事に気が付いている感じはなかった。
 いつもと変わらない家の様子に、かえって違和感を覚えながら、キッチンで後片付けをしている母親へと視線を向けた。
「天弥? どうかしたのか?」
 いつまでも立ち尽くす様子を変に思い、父親がソファーから立ち上がり近付いてきた。
「え? あ、疲れたから、もう休もうかなって……」
 目の前で立ち止まった父親から逃れるようにそう告げ、リビングから廊下へと足を踏み出した。
「そうか……」
 少し寂しそうに父親が呟いた。
「おやすみなさい」
 父親の様子に少し胸を痛めながらもそう言い残し、自分の部屋へと向かう。途中、背後から父親のおやすみという声が聞こえてきた。
 父親は、天弥を溺愛している。忙しくてあまり接することは出来ないが、それはとてもよく天弥に伝わってきていた。会えない時間を埋めるかのように、幼い頃から変わらず父親は天弥を愛おしみ、暇さえあれば抱きしめたりその頭を撫でていた。天弥自身、父親のその行動は嫌いではなかったが、今は斎に抱かれた身体に触れられるのは罪悪感がある。
 自分の部屋へたどり着くと、机の上に置いてある携帯を手にしベッドへと腰掛けた。もう斎は家に着いただろうかと考えながら、天弥は番号を表示した携帯を見つめる。
 怒られるはずだったため遅くなると思っていたが、予定が狂いどうしようかと悩む。すぐに、少しでも早く斎の声が聞きたくて通話ボタンを押した。
 斎が出るまでの呼び出し音が妙に長く感じ、気持ちが急く。呼び出し音が途切れ、斎の声が天弥の耳をくすぐった。他愛も無い話がとても嬉しいもので、互いに時間を忘れるほどであった。

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