apocalypsis

さくら

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date et dabitur vobis

quattuordecim

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 斎はソファーに腰を下ろし、煙草を一本取り出すと口に咥え火を点けた。チャイムが鳴り響き、三時間目の授業が始まる事を告げている。
 チャイムが鳴り終わり、静寂が戻った室内に丁子の爆ぜる音だけが響く。あまりの静けさに落ち着かず、気を紛らわすかのように立ち上がった。だが、特にこれといってすることも無く、すぐにまたソファーへと腰を下ろす。
 煙草の灰を灰皿に落とすと、室内を見回した。一人で過ごすこの部屋が妙に広く感じる。いつのまにか、授業の無い時間を一人で過ごす事が寂しいと感じるようになった。天弥がここへ来るようになる前は、そのような事は思いもしなかった。むしろ、一人で居る事を望み、その時間を邪魔される事を厭い、他人と関わるのを煩わしいと思っていた。
 だが、一緒に居るのは誰でも良いという訳ではない。それは、天弥でなければ駄目なのだ。煙草を灰皿へ押し付けると立ち上がり、机へと向かった。
 机の上に置いてある鞄の中から古い革表紙の本を取り出し、それを見つめる。目の前で天弥が消えてから三日、日常は変わらずに動いていた。
 おそらく、自分が立てた予想は間違っていないと考える。知識を望み、そのために神の召喚を望むものと、狂気や破滅のために神の召喚を望む存在、互いの望みに繋がるのは神を召喚するという事であり、そのためには何らかの形で天弥が必要だということだ。
 そして今現在の天弥は、大人しくその望みを叶える事はないと思われる。神はともかく、天弥の祖父である羽角恭一郎は普通の人間なのだ。天弥の気が変わるまで待つ時間は惜しいと思われる。神の方としても、羽角恭一郎の召喚が叶わなければ、人の世の狂乱を楽しむ事が叶わなくなるはずだ。
 そのために必要なのは、大人しく望みを叶えてくれる方の天弥であると思われる。もし、普段の天弥でも役割が可能であるならば、そちらを引きずり出そうとするはずだ。
 本当に、自分が普段の天弥にとって特別な存在であるならば、そして予想が正しければ、彼の神は天弥が自分の前に現れるように画策をするはずだと、希望を抱く。
「先生」
 突然、背後から聞きなれた声が響き、手にした本を置くと振り返り、声の主を確認する。
「天弥……?」
 どこから現れたのか、そこには制服姿の天弥が立っていた。ドアに鍵をかけてはいなかったが、開閉の音もなく、出入りの気配もなかった。立ち上がり天弥と向かい合う。
 戸惑う斎との距離を縮めるように、天弥はゆっくりと歩き出す。
「こんにちは」
 ソファーを回り込み、互いの距離がほぼ無くなると挨拶をし微笑を浮かべながら、天弥は斎の端正な顔を見上げた。
「挨拶はしていただけないのですか?」
 天弥は手を伸ばし、斎の身体へと触れる。
 予想を立てていたはずだったが、いきなり現れた天弥の姿に見惚れ、斎は声も無く立ち尽くす事しか出来なかった。その様子を、天弥は静かに見つめた。
「先生にお願いがあるのですが、聞いていただけますか?」
 ねだるような視線と共に、天弥は甘く響く声で囁く。
「なんだ?」
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