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date et dabitur vobis
sex
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そして人の姿を模した神は、自分を天弥の眷属だと言った。眷属という言葉の意味を思い浮かべる。血の繋がりはないので、親族などこれに連なる意味は違う。次に従者や家来という意味を思い浮かべ、これは在り得ると思う。そして最後に、仏や菩薩に従うものという意味を思い浮かべる。この定義の中には神も含まれると思われた。そして神という定義の中には、もちろん邪神も含まれる。
眷属という言葉が、ただの従者や家来という意味で使われたのだとしたら、さして問題はない。だが、神に従うものという意味で使われたのだとしたらと、そこまで考え思考を止めた。あまりにも在り得ない結論が、脳裏に浮かんできたせいだ。
軽く頭を振る。天弥の事を知りたいとは思うが、今はそれよりも重要な事がある。天弥を取り戻すことが、今の斎にとっては最優先事項なのだ。天弥を取り戻せるのなら、それ以外の事は瑣末な問題でしかない。
天弥を自分の前に引きずり出せるとしたら、一緒に居た存在を利用するしかない。天弥と違い、彼の神は自分に関心を寄せていた。自分の何が関心を惹いたのか、考える。面白いものを作ったという言葉から、何らかの変化を為したと思われる身体の事で、まず間違いはない。
だが、たかが人の身に多少の変化が起こった程度で、神の関心を惹けるとは思えない。混乱や狂気を望む者が、それを元に自分にさせたい役割は何なのかを考える。
まず、自分の身体の変化について、正確に把握をしていない。今までの状況から分かることは二つある。異常なまでの治癒の速さと、身体能力の向上である。但し、身体能力については、反射速度が多少上がっている以外は不確かだ。サイラスの攻撃を軽く受けられたことから、筋力も多少は上がっていると予想は出来る。
この変化が、彼の神の望む混乱と狂気にどう繋がるのか、思考を巡らせる。まず、あの存在をナイアルラトホテップだと仮定する。そして、天弥の祖父にネクロノミコンを授けたのは、ナイアルラトホテップだとする。この神が望むのは人の狂気であり、そのためならアイテムを授けたりなどの手間を厭わない。
自宅にたどり着き、鍵を取り出すと玄関前へと進む。ドアを開け中へ入ると靴を脱ぎ、自分の部屋へと向かった。
歩きながら手の中にある本を見る。天弥の祖父とナイアルラトホテップ、双方共に思惑があり、それがこの本で一致したと思われる。
自室のドアを開けると流れ作業のようにスイッチへと手が伸び、部屋に明かりが灯る。積み上げられた本の間を器用に抜け、机へと向かう。椅子に腰を下ろすと手にした本を机の上に置き、代わりに煙草の箱を手に取る。中から一本取り出し口に銜えると、愛用のジッポーを手に取り火を点ける。
天弥の祖父である、羽角恭一郎の望みが何なのかを考える。ネクロノミコンを欲したということは、やはり召喚したい神がいたと思って間違いはないはずだ。だが、その神が胡桃沢の予想したアザトースかどうかは、分からない。
眷属という言葉が、ただの従者や家来という意味で使われたのだとしたら、さして問題はない。だが、神に従うものという意味で使われたのだとしたらと、そこまで考え思考を止めた。あまりにも在り得ない結論が、脳裏に浮かんできたせいだ。
軽く頭を振る。天弥の事を知りたいとは思うが、今はそれよりも重要な事がある。天弥を取り戻すことが、今の斎にとっては最優先事項なのだ。天弥を取り戻せるのなら、それ以外の事は瑣末な問題でしかない。
天弥を自分の前に引きずり出せるとしたら、一緒に居た存在を利用するしかない。天弥と違い、彼の神は自分に関心を寄せていた。自分の何が関心を惹いたのか、考える。面白いものを作ったという言葉から、何らかの変化を為したと思われる身体の事で、まず間違いはない。
だが、たかが人の身に多少の変化が起こった程度で、神の関心を惹けるとは思えない。混乱や狂気を望む者が、それを元に自分にさせたい役割は何なのかを考える。
まず、自分の身体の変化について、正確に把握をしていない。今までの状況から分かることは二つある。異常なまでの治癒の速さと、身体能力の向上である。但し、身体能力については、反射速度が多少上がっている以外は不確かだ。サイラスの攻撃を軽く受けられたことから、筋力も多少は上がっていると予想は出来る。
この変化が、彼の神の望む混乱と狂気にどう繋がるのか、思考を巡らせる。まず、あの存在をナイアルラトホテップだと仮定する。そして、天弥の祖父にネクロノミコンを授けたのは、ナイアルラトホテップだとする。この神が望むのは人の狂気であり、そのためならアイテムを授けたりなどの手間を厭わない。
自宅にたどり着き、鍵を取り出すと玄関前へと進む。ドアを開け中へ入ると靴を脱ぎ、自分の部屋へと向かった。
歩きながら手の中にある本を見る。天弥の祖父とナイアルラトホテップ、双方共に思惑があり、それがこの本で一致したと思われる。
自室のドアを開けると流れ作業のようにスイッチへと手が伸び、部屋に明かりが灯る。積み上げられた本の間を器用に抜け、机へと向かう。椅子に腰を下ろすと手にした本を机の上に置き、代わりに煙草の箱を手に取る。中から一本取り出し口に銜えると、愛用のジッポーを手に取り火を点ける。
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