134 / 236
date et dabitur vobis
tres
しおりを挟む
確かに、そこまでは利害が一致していると考えながら、挑戦的な視線を向けてくるサイラスに、同じように視線を向けた。
「天弥を取り戻した後は、先生が俺から守ってやればええやん」
言葉とは裏腹な表情と視線で、サイラスが言葉を続けた。天弥を取り戻した後、自分が相手なら問題はないと判断をされたのだと斎は思う。確かに、自分の身体は何らかの変化をしていると考えられるが、元々の実力差がかなりある状態は変わらない。多少、身体能力が上がっていたとしても、サイラスにとっては然したる問題ではないのだと予想できる。
サイラスは、考え込む斎を見つめた。天弥の身柄を取り戻しさえすれば、後はどうとでもなると判断をした。神を相手にするよりは、斎を相手にする方が遥かにましである。
「一つ聞きたい」
「なんや?」
斎の質問が厄介なことでないことを、サイラス望む。羽角と連絡が取れない以上、どこまで勝手に判断をして行動をして良いのかが悩みどころである。羽角を見つけるためには、教団に居るのが最善の策である以上、うかつなことは出来ない。
「天弥は人格が二つあるのか? それとも、二人は別の存在なのか?」
先程の天弥は、自分だけが天弥という存在であり、もう一人は別の存在だと言った。別の人格ではなく、別の存在とはどういう事なのか、皆目見当がつかない。
サイラスが考え込む表情をする。
「先生、胡桃沢斉明にどこまで聞いとる?」
総てを知っていたら、今のような質問をするはずはない。なので、斎は天弥の正体をまだ知らないと判断してもよい、そう考える。だが、斎は優秀過ぎる。下手なことを話せば、そこから真実にたどり着いてしまう可能性が大きい。
「どこまでとは?」
奇妙な質問だと斎は思う。事の真相について、どこまで知っているのか把握していれば、もっと的確に質問も判断も出来るはずだ。
「そやな、胡桃沢斉明は何を話したかと聞く方が正しい質問やな」
斎の問いに、サイラスは答える。どこまでと尋ねても、斎には判断のしようがないことだった。
「何を……」
斎は、考え込む。ここで出来る限りの情報を手に入れたいと望むが、それはかなりの困難であることも理解している。サイラスは、見かけ通りの人物とは異なる。言動や見た目に惑わされて判り難いが、かなり高度な教育を受け、専門的な知識もあり、油断のならない人物だと判断している。
「十七年前の予想と、十三年前に教授が実際に見たことを聞いた」
下手な小細工はせずに、素直に答えた。今の状況を考えれば、サイラスと手を組むのは得策である。下手な事をして、それを棒に振るのは避けるべきだと判断をした。
サイラスは教団を雇い主と言っていた。教団がどれほどの規模なのかは分からないが、以前の電話の内容から察するにサイラスは、そこと対等以上の関係にあるように思えた。個人で仕事を請けているのだとすれば、それだけの裁量があると思われる。何も知らない自分の小細工など、すぐにでも見破られてしまう可能性が高い。
「十七年前の予想?」
サイラスが聞き返す。
「十七年前、天弥の祖父が呼び出そうとしたものについての予想だ」
斎の答えに、サイラスは興味深げな表情をする。
「天弥を取り戻した後は、先生が俺から守ってやればええやん」
言葉とは裏腹な表情と視線で、サイラスが言葉を続けた。天弥を取り戻した後、自分が相手なら問題はないと判断をされたのだと斎は思う。確かに、自分の身体は何らかの変化をしていると考えられるが、元々の実力差がかなりある状態は変わらない。多少、身体能力が上がっていたとしても、サイラスにとっては然したる問題ではないのだと予想できる。
サイラスは、考え込む斎を見つめた。天弥の身柄を取り戻しさえすれば、後はどうとでもなると判断をした。神を相手にするよりは、斎を相手にする方が遥かにましである。
「一つ聞きたい」
「なんや?」
斎の質問が厄介なことでないことを、サイラス望む。羽角と連絡が取れない以上、どこまで勝手に判断をして行動をして良いのかが悩みどころである。羽角を見つけるためには、教団に居るのが最善の策である以上、うかつなことは出来ない。
「天弥は人格が二つあるのか? それとも、二人は別の存在なのか?」
先程の天弥は、自分だけが天弥という存在であり、もう一人は別の存在だと言った。別の人格ではなく、別の存在とはどういう事なのか、皆目見当がつかない。
サイラスが考え込む表情をする。
「先生、胡桃沢斉明にどこまで聞いとる?」
総てを知っていたら、今のような質問をするはずはない。なので、斎は天弥の正体をまだ知らないと判断してもよい、そう考える。だが、斎は優秀過ぎる。下手なことを話せば、そこから真実にたどり着いてしまう可能性が大きい。
「どこまでとは?」
奇妙な質問だと斎は思う。事の真相について、どこまで知っているのか把握していれば、もっと的確に質問も判断も出来るはずだ。
「そやな、胡桃沢斉明は何を話したかと聞く方が正しい質問やな」
斎の問いに、サイラスは答える。どこまでと尋ねても、斎には判断のしようがないことだった。
「何を……」
斎は、考え込む。ここで出来る限りの情報を手に入れたいと望むが、それはかなりの困難であることも理解している。サイラスは、見かけ通りの人物とは異なる。言動や見た目に惑わされて判り難いが、かなり高度な教育を受け、専門的な知識もあり、油断のならない人物だと判断している。
「十七年前の予想と、十三年前に教授が実際に見たことを聞いた」
下手な小細工はせずに、素直に答えた。今の状況を考えれば、サイラスと手を組むのは得策である。下手な事をして、それを棒に振るのは避けるべきだと判断をした。
サイラスは教団を雇い主と言っていた。教団がどれほどの規模なのかは分からないが、以前の電話の内容から察するにサイラスは、そこと対等以上の関係にあるように思えた。個人で仕事を請けているのだとすれば、それだけの裁量があると思われる。何も知らない自分の小細工など、すぐにでも見破られてしまう可能性が高い。
「十七年前の予想?」
サイラスが聞き返す。
「十七年前、天弥の祖父が呼び出そうとしたものについての予想だ」
斎の答えに、サイラスは興味深げな表情をする。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
月のない夜 終わらないダンスを
薊野ざわり
ホラー
イタリアはサングエ、治安は下の下。そんな街で17歳の少女・イノリは知人宅に身を寄せ、夜、レストランで働いている。
彼女には、事情があった。カーニバルのとき両親を何者かに殺され、以降、おぞましい姿の怪物に、付けねらわれているのだ。
勤務三日目のイノリの元に、店のなじみ客だというユリアンという男が現れる。見た目はよくても、硝煙のにおいのする、関わり合いたくないタイプ――。逃げるイノリ、追いかけるユリアン。そして、イノリは、自分を付けねらう怪物たちの正体を知ることになる。
ソフトな流血描写含みます。改稿前のものを別タイトルで小説家になろうにも投稿済み。
甘いマスクは、イチゴジャムがお好き
猫宮乾
ホラー
人間の顔面にはり付いて、その者に成り代わる〝マスク〟という存在を、見つけて排除するのが仕事の特殊捜査局の、梓藤冬親の日常です。※サクサク人が死にます。【完結済】
幽霊屋敷で押しつぶす
鳥木木鳥
ホラー
怨霊や異界の神が跋扈し、それら化外が引き起こす祟りが災害として頻発する世界。
霊を祓う「祓い師」の庚游理。彼女はただの地縛霊の除霊を「うっかり」古の邪神討伐にスケールアップさせてしまう「藪蛇体質」の持ち主。
破格の家賃と引き換えに「人を喰う」幽霊屋敷「裏内屋敷」にひとり住む游理は、ある夜布団の中からあらわれた少女「裏内宇羅」に首をねじ切られる。そして学園百合ラブコメ空間に転生した。
怨嗟妄念から生まれる超常の存在「幽霊屋敷」
成り行きでその一部となった游理は、様々な「幽霊屋敷」と遭遇していく。
これは千の死を千の怨嗟で押しつぶす物語。
(「カクヨム」様及び「小説家になろう」様にも投稿させていただいております)
夜通しアンアン
戸影絵麻
ホラー
ある日、僕の前に忽然と姿を現した謎の美少女、アンアン。魔界から家出してきた王女と名乗るその少女は、強引に僕の家に住みついてしまう。アンアンを我が物にせんと、次から次へと現れる悪魔たちに、町は大混乱。僕は、ご先祖様から授かったなけなしの”超能力”で、アンアンとともに魔界の貴族たちからの侵略に立ち向かうのだったが…。
都市伝説ガ ウマレマシタ
鞠目
ホラー
「ねえ、パトロール男って知ってる?」
夜の8時以降、スマホを見ながら歩いていると後ろから「歩きスマホは危ないよ」と声をかけられる。でも、不思議なことに振り向いても誰もいない。
声を無視してスマホを見ていると赤信号の横断歩道で後ろから誰かに突き飛ばされるという都市伝説、『パトロール男』。
どこにでもあるような都市伝説かと思われたが、その話を聞いた人の周りでは不可解な事件が後を絶たない……
これは新たな都市伝説が生まれる過程のお話。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる