apocalypsis

さくら

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date et dabitur vobis

unus

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 生活感のしない広いリビングに、アニメ番組の音声が響き渡っていた。サイラスは床に座り込みながら、心ここに在らずという様子でソファーに身を預けている斎を見つめた。コーラ飲料のペットボトルとポテトチップスの袋が手付かずのまま、本と共に斎の目前のテーブルに置かれている。
 斎が本を持ち、家を出たと連絡を受け、すぐにサイラスは外へと飛び出した。天弥の自宅近くの公園にたどり着いた時、そこには斎しか居らず、本を手にしたまま呆然とそこに立ち尽くしていた。
 話しかけても何の反応も示さない斎の腕を掴み、とりあえず自宅まで引きずってきた。ソファーに座ったままの斎をしばらく眺めていたが、何か情報が引き出せる様子ではなかった。どうして良いのか分からずに、とりあえず斎がまともに反応するようになるまで待ってみることにした。
 斎の周囲に漂う悲愴に耐えられず、テレビの電源を入れ深夜放送のアニメを流した。斎に何があったのか気になり、サイラスは放送されているアニメに集中出来ずにいた。
 しばらく、様子を伺いながらアニメを眺めていると何かが動く気配がした。視線を向けると、斎が立ち上がりドアへと向かって歩き出していた。
「先生?」
 サイラスは慌てて立ち上がると斎の腕を掴み、足を止めさせた。
「どこ行くんや?」
 少しの間を置いて、斎はドアから視線を逸らさずに口を開いた。
「天弥を捜しに……」
「天弥がどこにおるのか知っとんのか?」
 サイラスは即座に疑問を口にする。
「いや……、知らない」
 考えるまでもなく、斎は天弥の行動範囲をまったくといって良いほど知らない。いつも平日は校内、休日は車で遠くへと連れ出していたのだ。
「何か手がかりとかあらへんの?」
 斎は力なく視線を落とした。
「いや……。目の前でいきなり消えたんだ。何も分からない……」
 サイラスは、斎が天弥と会っていた事を知る。
「天弥は、誰かと一緒やなかったか?」
 そして目の前で消えたという言葉から、斎と会っていたのがどちらなのかも理解する。
「誰か……?」
 斎の背筋が凍りつく。
「違う……」
 血の気を失った表情で、小さく呟いた。
「あれは人ではなかった……。人の姿を模した別の存在だった」
 サイラスは嫌な考えが浮かぶ。もしかすると、天弥は深きものたちと手を組んだのかも知れない。
「人やないって?」
 自分の考えが徒労に終わるように願いながら、尋ねる。
「……闇」
「闇?」
 少しの間サイラスは考え込む。
「闇……、Darkness……」
 一つの名前が浮かび、一気に血の気が引く。
「The Dweller in Darkness……?」
 次々と、その存在を表す表現が浮かんでくる。
「The Crawling Chaos……、The Faceless God」
 無意識に、それらが口を吐いて出てきた。
「天弥は、ナイアールと呼んでいた」
 斎の口から出た名前に、サイラスの心臓が激しい音を立てた。
「Nyarlathotep……何で、そんなラスボスクラスが顕現しとるんや?」
 最悪だと、サイラスは思う。まだ、深きものたちと手を組んでくれていた方が、遥かにましだった。
「間違いないんか? ほんまにNyarlathotepやったんか?」
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