apocalypsis

さくら

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nosce te ipsum

octo

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 当時、斎の生殖細胞を使い、実験が行われた。それは、絢子に対しての情けなのか、それとも自分の子供が化け物になるという嫌悪から、提供者が存在しなかったからなのか、記載がないために分からない。
 この計画が挫折したのは、受精卵が作れなかったからだ。何度か試みたようだが、受精させても細胞分裂を始めることがなかったのだ。変化した細胞は、普通の人間の細胞と混ざり合うことはないのか、生殖能力が無くなってしまったのか、当時の実験では解明されていない。
 そして、今現在の斎、もしくは天弥となら可能かもしれないとある。天弥の事に関しては、先日の花乃の時に話を聞いた。その時、天弥の恋人は斎である事、なので女である花乃では無理だという話をした。それは簡単に受け入れられ、別の手段を考えるということで、すぐに話は終わった。
 ハッキリといって、教団に倫理観というものはない。羽角のような、知の探求を総てとするような学者には、願ってもないところだ。マウスなど使わずに、最初から人間で実験を繰り返す。実験体を手に入れるのは簡単だ。世界には、子供を平気で売る親や、突然消えても何の騒ぎにもならない人間が大勢いる。
 多岐に亘る分野で、潤沢な資金を使って倫理観の欠如した研究や実験が行われているのだから、ずば抜けた科学水準が教団にはある。そして、それらのデータを欲しがる国や企業などが、金に糸目をつけずに買っていく。
 義理とはいえ、妹に兄と関係を持つように強要するぐらい、教団にとってはなんでもないことだ。
 だが、そこまでしても教団は、真の望みを未だに叶えられずにいる。どれだけの科学水準を持とうとも、どれだけの犠牲を払おうとも、神を人の世に召喚することが出来ない。
 サイラスの耳に、空腹を訴える音が届く。部屋には自分一人しかいないため、それは自分自身が発した音だとすぐに気が付く。時計を見ると夕方になっていた。夜更けに電話で起こされてから、十二時間以上ここに居たことになる。
 パソコンのモニターに目を向け、サイラスは斎と天弥の所在を確認する。二人が所持する携帯電話を利用して、二十四時間その所在を監視している。基地局が存在しない場所にでも行かない限り、二人の行動はすべて筒抜けになっている。
 二人の所在を、お互いの自宅からそう遠くない水族館で確認すると、部屋を出た。場所的に、仲良くデートをしているのだと判断をし、食料を調達しに行くことにした。
 昨日は自分の事で手一杯だったが、今になって考えてみればあの時の斎と天弥の様子では、何かひと揉めあってもおかしくはないと思う。しかし、二人揃って水族館へ行っているところを見ると、時に何もなかったのかもしれない。もし何かあったとしても、すでに解決しているということになる。
 外に出ると周囲を見回した。日本は、アメリカと同じようにジャンクフードで溢れている。羽角はこれらを嫌っていたため、アメリカに居るときは思うように食べることが出来ずにいた。今は、思う存分それらを食することが出来、それはアニメ三昧の次に幸せなことだとサイラスは思う。
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